セバスチャン・ベッテルが2022年末に引退でF1が偉大な人物を失う理由

ハンガリーのパドックで木曜日(7月28日)、セバスチャン・ベッテル(35歳)が今シーズン限りで引退するというニュースが流れると、多くの人がこのドイツ人の4度のF1ワールドチャンピオンを称賛した。

彼は「謙虚」であり「偉大なロールモデル」であり、「スポーツの大使」であり、若い世代が尊敬するようなキャリアを持つインスピレーションとロールモデルであると評されている。カルロス・サインツは「パドックのみんなは彼のことが大好きだ。わかるかい? セブの悪口を言う人はいないよ。今年は彼の人柄が表れていると思う。彼はドライバーとしてだけでなく、人間として生きている」



アストンマーティンのチームメイト、ランス・ストロールは、ベッテルの何が一番惜しまれるかという質問に、彼は別の小さな洞察を示した。「もちろん長いデブリーフではないね! 彼はそれが得意だと思う。でも、冗談はさておき、彼は素晴らしいチーム・プレイヤーであり、本当に仕事がしやすい人だ。大きな才能の持ち主であり、ものすごくプロフェッショナルだ。彼のマシンに対する技術的理解は素晴らしいと思う。チームの素晴らしい一員であり、一緒に仕事をするのが本当に楽しい相手だ。本当に楽しいよ」

セブの最大の魅力は、間違いなくF1に対するゆるぎない愛情である。自分自身の参戦にこだわりがちな多くのドライバーとは異なり、彼はサー・ジャッキー・スチュワートやフランキッティ兄弟、ケビン・マグヌッセン、カルン・チャンドックと同じように、その歴史を強く意識している。セブは、父ノルベルト・ベッテル(フォルクスワーゲン・ゴルフでヒルクライム参戦経験がある)に連れられて1992年の雨のホッケンハイムに行ったときの感動を忘れていない。

セブはかつてこう語っていた。「チケットをとても安く手に入れたんだ。最初のシケインまでとても長い距離を歩いた。雨が降っていた。アクアプレーニングがあったので、誰もピットから出てこなかった。すると、地面が振動し始めるのを感じて、魚雷のように水を噴射するような音を残しながら通り過ぎていった。あの日のこと、雨、音、振動は決して忘れない。だから僕が昔のF1が好きなんだ。もっと生々しかった」

ベッテルは以前からF1の歴史を愛していた:ゲルハルト・ベルガー‎とセバスチャン・ベッテル
ベッテルは以前からF1の歴史を愛していた:ゲルハルト・ベルガー‎と

古い本を読んで、1930年代にレースの神様と呼ばれたベルント・ローゼマイヤーが昔のニュルブルクリンクに押し寄せた人垣をみたときに経験した鳥肌をすぐに理解した現代のレーサーを好きにならずにはいられないだろう。

セブは「レーシングを始めると、カートで他の子供たちとレースをするようになる。そして子供なりにF1を理解する。自分たちのやっていることの王様たちがいるってことを。その王様たちは別世界にいる。ヒーローたちだ。僕は歴史の大ファンなんだよ」

かつて彼は、スターリング・モスの自宅で彼とランチをし、彼の有名なスクラップブックや昔の写真を見せてもらったとき、できることなら過去に戻りたい、と言ったことがある。彼がシルバーストンでデモ走行したナイジェル・マンセルが乗っていたウィリアムズFW14Bを購入したことは、F1の過去を理解しようとする彼の情熱のさらに証明した。

004
ベッテルはナイジェル・マンセルの1992年ウィリアムズFW14Bを購入し、今年のイギリスGPでデモ走行を行った。
2020年09月03日


また、2017年のバクーでは、セーフティカー先導中にルイス・ハミルトンがブレーキテストをしたと勘違いし、メルセデスの側面に攻撃的に突っ込んだこともあった。




また、2019年のカナダGPでは、ミスを犯してその後ルイスを妨害したため、5秒ペナルティを受け、優勝を逃した。彼はパルクフェルメで、P2マーカー(順位表示板)に故意に当たり、それをP1と入れ替えた。正直なところ、レース中にあのような反応をしない人がどれだけいるだろうか?

彼は、以前から短気が自分の性格の一部であることをためらうことなく認めている。「レース中の僕は必ずしも忍耐強くない、わかってる。でも、とても気にかけているし、情熱があり、僕を駆り立てる感情がある」

2019年F1カナダGPでペナルティを受け勝利を逃したセバスチャン・ベッテルが順位表示板を入れ替える
セバスチャン・ベッテル:天才とジョーカー | 2019年F1カナダGPでペナルティを受け勝利を逃したベッテルが順位表示板を入れ替える。
ベッテル、トップでチェッカーフラッグを受けるが、優勝はハミルトン。


情熱… 彼の正直さ、記者会見で質問されたことに詳しく、洞察に満ちた回答をする姿勢(あるいはスチュワード相手にとことん議論する姿勢)、そして自分の心を率直に吐露する姿、すべてが本物のレーサーとしての魅力である。コックピットで傲慢な態度をとることがあったとしても、F1界は、彼を本質的に謙虚で気取るところのない人物だと、記憶するだろう。

ベッテルは、ささいなことへの嫉妬心や毒のようなライバル意識について、一度私にこう語った。「トラック上で互いに戦っているときは、そういうものじゃない。お互いにスペースを与えるか与えないか、あるいはどうするか。僕はいつもそのように考えている。トラックで戦うときは、明らかに自分のために戦う。単に負けず嫌いなんだ」

「素晴らしいことだ。しかし、だからといってマシンを降りたときにバカである必要はない。誰かが僕よりうまくやればつらいけど、負けた人が僕のところに来て、握手して、僕の目を見てよくやったと言ってくれたら嬉しい。だから逃げだしたり隠れたいと思っても、僕もそのようにやろうとしている。そうするべきだと思うから」

彼は物憂げに「今の時代、あまり宣伝しなくてもいいと思う。僕が言いたいのは、若い人が入ってくると、わぁ、彼は魔法使いだ、彼は人間じゃない、なんて言われる。そして彼のことを持ち上げ、人々は彼を尊敬するようになる。そうすると、彼をこきおろすための何かを待っているようなものだ。そして『ごらん、彼も我々とそれほど違っていない。彼は空を飛べない。超人じゃない』と言う」と続けた。

「しかし、人々が特別だと思っていたこの彼が、そもそも自分から『僕は特別なことをしている。超人なんだ』と、入ってきていない」

セバスチャン・ベッテル(トロ・ロッソ)F1初優勝:2008年F1イタリアGP
セバスチャン・ベッテル、トロ・ロッソでF1初優勝!:2008年F1イタリアGP

セバスチャン・ベッテル、優勝で4年連続F1ワールドチャンピオンを決める! ニコ・ロズベルグとロマン・グロージャン:2013年F1インドGP
セバスチャン・ベッテル、優勝で4年連続F1ワールドチャンピオンを決める! ニコ・ロズベルグとロマン・グロージャン:2013年F1インドGP


彼はこれまで家族生活について非常に秘密主義だったが、あの悪名高い2019年のカナダGPの翌週、長年のパートナーだったハンナと結婚した。スイスのトゥルゴビアにある自宅では、家族が彼の人生の安定に重要な役割を果たす岩のような存在になっている。

2013年12月11日:関連記事多数

2014年01月15日:結婚の5年半前にお子さんが誕生


「そう、それが僕の人生なんだ」と彼はうなずく。「もちろん、レースも僕の人生だが、もし誰かにあなたは誰ですかと聞かれたら、ハンナの夫であり、子供たちの父親だ、というように、僕が僕から聞きたい答えだ。これが僕という人間なんだ」

F1では誰もが何らかの仮面をつけているが、ドライバーはレース中、鎧が必要である。しかし、彼らがレーシングをやめたとき、以前から見たかった人物に出会えることが非常に多い。家庭的な人、傷つきやすい人物。最近、セブがレース会場に子供たちを連れてきたとき、我々の何人かは、これから起こることを予感していた。

彼は注意深く「僕が何者であるかを決めるのは、僕のしていることではない」と言う。「外部から見守っている多くの人々にとっては、そう、もちろんその通りだ。テニスの試合を見るときは、その選手たちを見ているわけで、僕にとってはそこにいる彼らがすべてだからだ。でも、それは本当の姿ではない。自分の経験から、そうではないとわかっている。でも、僕もそういう風に判断されていると思う。だから、先ほど言ったことは、『あなたは誰ですか』と聞かれたときの答えになると思う」

セバスチャン・ベッテルは2022年F1オーストリアGPで「みつばちの危機を救おう」と描かれたヘルメットを着用
ベッテルは今年のオーストリアGPで「みつばちの危機を救おう」と描かれたヘルメットを着用。


また、最近 "Attitude"誌が、彼に自分の子供が同性愛者だと知ったらどうするかという質問をしたところ、彼は完璧な答えを返した。他の子供たちと全く同じように、無条件の愛を与えると言ったのだ。

最近では、気候の問題はもちろん、世界のあらゆる抑圧や不正に対して立ち上がって発言する姿勢が強くなり、多くの新しいファンを獲得している。BBCの番組 "Question Time"に出演した際も、率直な発言によって、大胆な新しい役割を果たそうとしていることを強調した。

まっとうな人間で、興味深い欠点を持つレーサー。彼は、2007年インディアナポリスでロバート・クビサの代役を務めた内気な少年から、レッドブルで4度のワールドチャンピオン、フェラーリで優勝するにふさわしい人物に成長した。率直な性格の彼は、最近では影響力を持ち、興味深く現実問題に直結する意見を持ち、自分の意見の表明を恐れない長老的な存在に進化した。

2007年06月18日


セバスチャン・ベッテル、F1デビュー:2007年F1アメリカGP

これまで、彼が好きなことをするために「コスチューム」と呼ぶものを身に着けていたとき、彼の人生は素晴らしいものだった。そして今、彼は世界を切り替える準備をしている。高潔なプロジェクトの名のもとに、公の場で話すことが増えるのは間違いないだろう。だが、彼がこれからも、自分が愛し、自分を愛してくれたスポーツに積極的な関心を持ち続けると多くの人が信じている。

レーサーとして、彼は惜しまれるだろう。知的で鋭敏、そして明晰な観察者として、彼はまだ多くのことを提供してくれるだろう。

-Source: The Official Formula 1 Website