1990年F1日本GPのセナプロ衝突

1996年のF1ワールドチャンピオンであるデイモン・ヒルは、シーズン最終戦を前にFIAが主導権を握り、過去のF1のように衝突でチャンピオンが決定した場合、どのようなペナルティが発生するかをチームに知らせてほしいと願っている。1990年のチャンピオン決定戦のような事故は避けなければならない。

2019年に放送された "Sky F1" 特番では、マックス・フェルスタッペンを含むドライバーたちが、1990年の日本GPで起きたセナとプロストの物議を醸したインシデントの映像を見せられた。おそらく驚くべきことに、マックスを含む何人かは、セナによるプロストへのあからさまな故意の衝突を実際に支持していた。

これによって、今週末アブダビで開催されるグランプリに向かう若いオランダ人の考え方を知ることができるかもしれない。アブダビGPに向けて、彼とルイス・ハミルトンは同点だが、優勝回数ではマックスが上回っている。ふたりがリタイヤすれば、マックスはワールドチャンピオンになる。確かに、彼はこれまでのところ、このようなシナリオになった場合、トラック上の五分五分の作戦で引き下がらないことを示している。

下の動画でマックスは、セナと同じことをするだろうと言ったガスリーに「そうだね、誰だってするよ」と同意している。

「1990年F1日本GPのセナプロ衝突動画」を見て感想を述べるマックス・フェルスタッペンとピエール・ガスリー
「1990年F1日本GPのセナプロ衝突動画」を見て感想を述べるマックス・フェルスタッペンとピエール・ガスリー<動画はこの記事のソース元で見られる>
【動画】1990年F1日本GP セナプロ衝突(日本語)


1990年、アイルトン・セナは日本GP予選でポール・ポジションを獲得したが、ポール・ポジションがトラックのダーティ・サイドにあることに不満を持ち、PPは常にレーシングライン上にあるべきだと主張した。そこでセナとゲルハルト・ベルガーは日本人スチュワードにポール・ポジションの位置をトラック左側のクリーン・サイドに変更するよう要請した。

スチュワードは当初同意したが、同日夜に、FISAのジャン・マリー・バレストル会長が出した差し止め命令により、決定が却下され、トラック右側のダーティ・サイドにあるポール・ポジション位置は変らなかった。

スタートでプロストが首位に立ったが、セナは最初のコーナーでインサイド・ラインをとろうとした。ふたりのドライバーは接触し、ふたりともコースアウトし、そのままリタイヤした。このクラッシュによりセナは、1戦を残して2度目のドライバーズ・チャンピオンシップを手にした。プロストが合計ポイントでセナを抜くことができなくなったからである。

デイモン・ヒルとミハエル・シューマッハ:1994年F1オーストリアGP

"Sky Sports F1" のサウジアラビアGP後の番組で、元チャンピオンで ""Sky" のF1解説者デイモン・ヒルは、かつてミハエル・シューマッハとの間で起きた、物議を醸した同様の状況、特に1994年最終戦オーストラリアGPを振り返った。

ヒルは、アデレードで大きな批判を浴びたシューマッハの行為の犠牲者だった。そのレースでは、シューマッハがベネトンのコントロールを失い、トラックに戻ろうとしたときに、ヒルがコーナーに進入するところだった。シューマッハはヒルに向かってハンドルを切り、ヒルは接触を避けることができなかった。

当時チャンピオンシップ首位に立っていたヒルは、ダメージを受けたマシンで走り続けたが、最終的にピットに戻ると、サスペンション・アームの破損のためリタイヤせざるを得なかった。このレースが終わると、ミハエル・シューマッハが1994年のワールドチャンピオンになった。

ミハエル・シューマッハとジャック・ヴィルヌーヴ:1997年F1ヨーロッパGP

もうひとつの例に、1997年のシューマッハとヴィルヌーヴがある。ミハエル・シューマッハとジャック・ヴィルヌーヴは、1997年のシーズン最終戦、スペインのヘレスで戦った(ヨーロッパGP)。レースのスタート前は、ドイツ人がカナダ人を1ポイントリードしていた。しかし、ジャック・ヴィルヌーヴはライバルよりも優勝回数が多かった(7勝対5勝)。

つまり、ヴィルヌーヴは、最終戦でシューマッハより1ポイント多く獲得すれば、1997年ワールドチャンピオンになれるはずだった。シューマッハについては、ヴィルヌーヴよりも上位でフィニッシュする限り、リタイヤやポイント圏外でも、ヴィルヌーヴが同じ運命をたどれば、タイトルを手にすることができた。

当時、レースのスタート前に、シューマッハがビルヌーブに衝突してタイトルを獲得するのではないかと言われていた。そのため、バーニー・エクレストン(当時のFOCAのボス)は、衝突の結果としてタイトルを獲得することになれば、犯人は厳罰に処されることになるとチームに警告した。

日曜日のレースでは、シューマッハがヴィルヌーヴに2秒差をつけていたが、新しいタイヤを履いていたヴィルヌーヴは、必死にアタックしてライバルに追いつこうとしていた。そして、ヴィルヌーヴがストレートエンドのヘアピンでシューマッハに襲いかかった。

驚いたミハエル・シューマッハは、ライバルが追い越すのを妨害しようとしたが、彼のフェラーリはそのままグラベル・トラップに入り、動けなくなった。ヴィルヌーヴはそのままレースを続け、3位になって1997年ワールドタイトルを獲得した。

レース終了後、ミハエル・シューマッハは危険なドライビングでドライバーズ順位2位を剥奪されたが、それでもそのシーズンの勝利などは保持された。

デイモン・ヒル

現在、マックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンの間で繰り広げられているF1バトルについて、デイモン・ヒルは、マックスが1990年のクラッシュを明らかに認めているにもかかわらず、レッドブルのドライバーが今週末のアブダビのフィナーレで物議を醸すような行動をするとは示唆しなかった。しかしヒルは、フェルスタッペンのドライビング・スタイルがミハエル・シューマッハに似ていると考えている。

ヒルは "Sky Sports" で 「妥協しないで走るドライバーがいる。マックスはそういうドライバーのひとりだと思う。彼はとても腕が立つし、優秀だし、見ていてワクワクする。それに対応しなければならないルイスは今、とても慎重になっていると思う。彼は、怖気づいているわけではないが、マックスをとても警戒しているし、おそらくそれは当然のことだろう」と語った。

今週末、2021年シーズンのグランドフィナーレを飾るアブダビのトラックで、ふたりは再びバトルを繰り広げる。この最終戦を前に、フェルスタッペンとハミルトンはポイントで並んでいるが(369.5ポイント)、優勝回数ではレッドブルのドライバーが英国人を上回っている(フェルスタッペン9勝、ハミルトン8勝)。つまり、次の日曜日に開催されるアブダビGPで両者がリタイアした場合、マックス・フェルスタッペンがキャリア初の栄冠を手にすることになる。

1997年のように、マックス・フェルスタッペンはルイス・ハミルトンのメルセデスに体当たりしてリタイヤさせればよいと言う人もいるだろう。デイモン・ヒルは、今週末のヤス・マリーナで衝突した場合のペナルティのリスクを、FIAが事前にチームに知らせることを期待している。

「1997年のチャンピオンシップでは、シューマッハのポイントが剥奪された前例がある。だから(衝突のような)状況になった場合、FIAはどう対応するのかをチームやドライバーに事前に知らせるべきだと思う。ポイントを剥奪するのか? どんなペナルティになるのか?」

-Source: thejudge13