F1技術解説:マイアミでのレッドブルの新フロアは、2025年にマクラーレンとの戦いに戻る道を開いたのだろうか?

レッドブルがマイアミでマックス・フェルスタッペンのマシンに導入した新フロアは、マシンに空力学的負荷を加えるという一般的な進歩を表したものだが、今シーズンこれまでチームが抱えてきたバランスの問題を改善することに特に重点を置いたものではなかった。

この問題に対処するため、レッドブルRB21をより扱いやすく、より幅広いコーナーで良好なバランスを維持できるマシンにするためのプログラムが進行している。これに関連する開発の一部は、イモラでのマシンに反映される予定である。

RB21のコンセプトは、昨年末に得た教訓を基に構築されており、チームはコーナー進入からコーナー中盤にかけてのバランス変化を少なくしようと努めた。フェルスタッペンがこれまで得意としてきたコーナー進入時の攻撃的な回転は、アンダーフロアからのダウンフォースを増大させるように開発されたこの世代のグラウンドエフェクトマシンでは容易意に実現できない。

ブレーキング時に空力学的圧力の中心が前方に移動することで、レスポンスに優れたターンインを生み出すことができるが、ブレーキが解除されてマシンが水平になると圧力中心が後方に移動するため、コーナー中盤のアンダーステアが犠牲になる傾向がある。

RB21は、特に低速コーナーにおいて、このバランスの変化を緩やかにしようと試した。しかし、RB21のバランスの安定性は前モデルから向上したものの、その代償として、初期の良好な旋回性能が損なわれてしまったようだ。フェルスタッペンは、ブレーキングパフォーマンスの低さに加え、低速域でのアンダーステアについても繰り返し不満を訴えている。

マイアミのフロアは、トンネル入口のフェンスの位置と形状を見直し、フロア縁のミニウイングをよりキャンバー状にすることで、大幅なバランス変化を招かずにダウンフォースをわずかに増加させるという理由で導入された。レッドブルのトラックサイドエンジニアリング責任者、ポール・モナハンは「かなり安定している」と語った。

「我々の判断では、流れの安定性は変わらないので、空力学的に不安定になるといった懸念はない。このまま運用を続ければ、数キロの負荷が加わり、その恩恵を享受できるだろう」

言い換えれば、バランスの問題が悪化することはないが、全体的な負荷が追加されることになる。

マックス・フェルスタッペンは今シーズン3度目のポールポジションを獲得したが、それが何かの躍進を意味するわけではないことを強調した。



彼は「僕らの限界は同じだ」と述べた。「新フロアはマイナスではないが、高速セクションでは速いものの、低速コーナーではアンダーステアになり、まだ遅れをとっているのがわかる。まだ目標には達していない。本当に戦えるようになるには、もう少し改善が必要だ」

レッドブルRB21:マイアミでフェルスタッペンのマシンに搭載された新しいフロア(上)と、角田のマシンの古いレッドブルフロアの比較
レッドブルRB21:マイアミでフェルスタッペンのマシンに搭載された新しいフロア(上)と、角田のマシンの古いレッドブルフロアの比較。

ブレーキング問題は、これまでのレースと同様に、マイアミのレースでも表面化した。フェルスタッペンは、アタックを仕掛けるオスカー・ピアストリからリードを守ろうと、ターン1で浅い角度からブレーキを踏み込むと、内側の前輪がロックしてコースアウトし、順位を失った。フェルスタッペンが試みた操作はブレーキに過酷な要求を課したものの、期待していたほどの制動力は得られず、彼はすぐに無線で「またこのブレーキだ」と不満を漏らした。


14周目
ピアストリ、フェルスタッペンを抜いてトップに!
3位のノリスもフェルスタッペンの後ろについた。
フェルスタッペン「ブレーキが役に立っていない」不満を言っている。
15周目
ノリス、フェルスタッペンを抜いて2位に

これと進入時のアンダーステアは、コーナー中盤での激しいバランス移動がなくなったことの代償なのかもしれない。レッドブルは、この世代の他のマシンと同様に、フロントサスペンションのジオメトリにアンチダイブを多用しているため、ロックアップ寸前にブレーキペダルを正確に感じるのが難しくなる。フェルスタッペンは、特にタイヤが熱いときに、マシンの感触に「一種のしびれ」を感じたと不満を漏らした。

そのため、昨年のRB20とは異なるとはいえ、このマシンは運転が難しい。マイアミでは、角田裕毅も予選でフロントのロックに苦戦していた。

チーム代表のクリスチャン・ホーナーは、チームは今では問題をより深く理解しているものの、シミュレーションではすぐには明らかにならないため、トラックデータの蓄積に頼ってきたと述べた。彼は「これは根本的に空力学の問題だ」と述べ、「今は解決策を実行する段階だ」と語った。


【動画】ピアストリがフェルスタッペンを抜いてトップに立つ:2025年F1マイアミGP
次回は、特にその解決策に焦点を当てた最初の開発が見られるかもしれない。しかし、モナハンは過度な期待には注意するよう警告している。

「これは、すぐに解決できるようなターンキーソリューションではない」と彼は説明した。「マシンを段階的に改良していくことになる。何が起こったのかは理解しているが、実際に解決するのはそれほど簡単ではない。マシンから完全に消えることはないかもしれない。(しかし)影響を軽減し、ラップタイムを向上させることは可能か? 答えはイエスだ」

いつものように、競争相手と比べてどれだけうまくそれを実行できるかが鍵になるだろう。

マーク・ヒューズ | ジョルジオ・ピオラ(イラスト)
-Source: The Official Formula 1 Website

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