
ジョージ・ラッセルのバーレーンGPにおける2位は、メルセデスの数々の制御システムの不具合に対処しながらも、レース終盤にランド・ノリスの攻撃をかわすという冷静さを見事に実証した。
トランスポンダーの故障、ダッシュボード機能の喪失、DRS(ドラッグ低減システム)の自動作動不良、ブレーキバイワイヤー機能の消失といった問題がなかったとしても、ソフトタイヤのラッセルはミディアムタイヤのノリスを抑えるという困難な課題に直面していただろう。
レース中盤、ラッセルが2回目のピットストップを行う前にセーフティカーが出動し、チームはセーフティカー導入による10秒のタイム節約を活かすため、ラッセルをピットインさせた。
しかし、それは予定より数周早かった。この2ストップレースでソフトタイヤでスタートしたメルセデスは、ミディアムタイヤの中間スティントで十分な距離を走ったあと、もう1セットのソフトに余裕で交換し、短い最終スティントを走るという作戦を立てた。
シーズン前にここで行われたC1ハードタイヤの徹底的なテストで、メルセデスは、このタイヤが作戦に適したタイヤではなく、はるかに遅いペースを補うほどの劣化アドバンテージをもたらさないと確信していた。

ラッセルは終盤、何とかノリスを抑え込んだ。
ラッセルのガレージには新品のミディアムタイヤが残っていなかった。そのため、セーフティカーが出動した時点でチームに残された選択肢は、予選で既に数周走行済みのソフトタイヤで20周以上慎重に走行するか、新品のハードタイヤに交換するかのどちらかだった。
ハードの方がはるかに快適にその距離を走れるだろうが、後続のシャルル・ルクレールやノリスがソフトまたはミディアムタイヤを選択した場合、リスタート時にラッセルは格好の餌食になるだろう。そこでソフトタイヤが採用されたのだが、ラッセル自身はこの選択を「大胆」と表現した。
レースが再開されたとき、フェラーリはルクレールにハードタイヤを装着し、ノリスはミディアムタイヤの新セットに交換していた。
ハードタイヤのフェラーリは、少なくとも数周は追い上げてくるノリスに対して有効な障壁となった。しかし、マクラーレンのノリスは最終的にルクレールを抜く方法を見つけた。それは57周中52周目のことだった。それからわずか数周でノリスはメルセデスのすぐ後ろに追いつき、ノリスはラッセルにあらゆる脅威を与えていた。

ノリスは不調のメルセデスを抜くことができず、3位に甘んじた。
ラッセルは「一番大きかったのはブレーキバイワイヤーだった」と振り返った。「あるコーナーではペダルが重く、次のコーナーではフロアまで踏み込んでしまう。コーナーにアプローチするとき、どんな反応をするのか全くわからなかった」
ブレーキバイワイヤーとDRSシステムは受動モードに戻り、手動で作動させる必要があった。ブレーキバイワイヤーの場合、ラッセルがブレーキを使用するたびに手動でシステムをリセットしない限り、リアブレーキは小型ディスクブレーキのみとなり、MGU-Kを介したエネルギー回生による逆トルクは一切得られなかった。
これにより制動能力が低下しただけでなく、フロントとリアのブレーキ配分も大きく変化した。
メルセデスのシステムチームは数々の回避策を模索し、ラッセルはノリスの攻撃をかわしながら指示を受けていた。ステアリングホイールにはバックアップボタンがひとつしかなく、しかも複数の機能をこなさなければならない。

ラッセルは2025年開幕から4戦で3度目の表彰台に立った。
その機能のひとつは無線で、ラッセルは無線のバックアップだと思って押した瞬間、DRSに設定されていた。ラッセルはすぐにDRSゾーン外で誤ってDRSを使用したことに気づき、「1秒も経たないうちに」DRSを解除した。確実にアドバンテージを得ないようにするため、一瞬だけ減速した。
その間、トランスポンダーの問題でラッセルのマシンが計時スクリーン(ライブタイミング)から消えていたため、チームはノリスが彼らのマシンに対してどこにいるのかを知る方法がなかった。
ラッセルは、ダッシュボードの残り少ない機能も失ってしまうかもしれないと警告されていた。それは、チェンジアップライトなどの機能が使えなくなることを意味していた。
そこで彼はエンジン音を聞きながら、ギアシフトの準備をしていた。結局、ライトは機能したまま、ラッセルは見事に統制のとれたパフォーマンスでマクラーレンを寄せ付けなかった。
マーク・ヒューズ(ライター)
-Source: The Official Formula 1 Website