
5戦を終えて、ウィリアムズは現在「ベスト・オブ・ザ・レスト」の称号を保持しており、チームランキングではマクラーレン、メルセデス、レッドブル、フェラーリの4大チームに次ぐ5位である。
アレックス・アルボンとカルロス・サインツが合わせて25ポイントを獲得したことは、昨年と比べて大きな進歩と言えるだろう。しかし、強豪チームとのパフォーマンス差を縮めようとする中で、現状のマシンには明らかな限界があり、サインツがフェラーリから移籍したことで、その限界はさらに明確になった。
ウィリアムズのチーム代表、ジェームス・ボウルズは「カルロスがフェラーリと大きく違うと感じている点のひとつは、フェラーリは特定のコーナーにもっと多くの『複合要素』を持ち込むことができたことだ」と日本で説明した。「それは我々が長年取り組んできた分野ではない」
当然ながら、「複合要素」とはどういう意味かという疑問が生じる。これは、ドライバーがブレーキング段階とコーナリング段階の開始を組み合わせ、コーナリング力が増大するにつれてブレーキを徐々に緩めることができるコーナーを指している。
これは、(a)コーナーに進入するときに回転しにくく、横方向のコーナリング能力を最大限に発揮できるヨー角を得るのに時間がかかりすぎる。または(b)コーナー進入時にリアが神経質になりすぎる。という症状を持つマシンのドライバーにとって特に役立つツールである。前者については、ドライバーがブレーキを離す方法によって改善できる。後者については、ブレーキの踏み込み方と操作方法によって改善できる。
ドライバーがこれをうまく行えるようにするには、速度、ピッチング、ロール角の変化に応じてマシンの空力学的バランスがどのように変化するか、そしてマシンの姿勢変化を段階的に変化させ、ドライバーが予測しやすいようにする機械システムといった複雑な要素を組み合わせる必要がある。ステアリングとブレーキのフィードバックの質も、この重要な局面においてドライバーがマシンを正確に感じ取る上で極めて重要である。
セットアップに関しては、マシンが様々な速度域でどれだけうまく機能するかというトレードオフがある。この世代のグラウンドエフェクトマシンは進化を遂げており、低~中速コーナーでは非常に扱いにくくなっている。そして、そのようなコーナーで有効なセットアップは、マシンの中~高速コーナーでの挙動を悪化させる場合が非常に多い。

現世代のF1マシンは、低速コーナーと高速コーナーの間でパフォーマンスのトレードオフを必要とする傾向がある。
これはマシンの空力学的特性のあらゆる側面に当てはまるが、ブレーキとコーナリングの組み合わせに対する反応も含まれる。マシンによっては、この特性に対する許容度が他のマシンよりもはるかに高いものもある。しかし、マクラーレンのマシンは、この特性をあまり必要としないように見える。
サインツがフェラーリとウイリアムFW47を比較したことからも明らかなように、こうした「複合要素」コーナーは、トップマシンとウィリアムズのマシンを分ける重要なポイントのひとつだ。この限界の重要性は、アレックス・アルボンがジェッダで説明したように、トラックレイアウトによって異なる。
アルボンは「このマシンで速さを出すには、特定のセットアップが必要だ」と述べた。「必ずしも快適なセットアップとは言えない。僕らが走るトラックには、中団の他のマシンと比べても、比較的弱いコーナーがいくつかある。ダウンフォースは良好だが、いくつかのコーナーでバランス調整に苦労している」
しかし、これらのコーナーを修正するには、1周の残りの部分を犠牲にする必要があるため、ほとんどの週末で使える範囲がかなり狭くなる。これは目新しいことではなく、長年続いてきたことで、週末ごと、トラックごとに妥協しているのだ。

アレックス・アルボン「僕らが訪れるトラックには、たいてい中団の他のチームと比べても比較的弱いコーナーがいくつかある。ダウンフォースは良好だが、いくつかのコーナーでバランスに苦労している」
「メルボルンのようなトラックでは、必要な妥協が少ない時は速い。一方、中国のように妥協が多いトラックでは少し苦戦するかもしれない。とはいえ、今のところ昨年から大きく進歩している。話題になっているような問題の範囲は以前よりずっと小さくなっている、それでもまだある。その点ではカルロスと僕の意見が一致している。僕らは常にセットアップを練り、弱点となるコーナーを改善しようと努力している」
「よい例が日本だ。僕らは1周のうちふたつのコーナーでとても弱かったが、1周の残りの部分では上位チームとそれほど差がなかった。しかし、どちらか一方がなければ、もう一方も手に入れることができないので、それが僕らの主な課題だった」
鈴鹿予選のGPSテレメトリを見て、アルボンのアタックをフェルスタッペンやピアストリのアタックと比較すると、アルボンが言及しているふたつの厄介なコーナーとは、デグナー2とヘアピンであることは明らかである。
ポールポジションを獲得したレッドブルのフェルスタッペンに対するウィリアムズの0.683秒の遅れのうち、0.376秒(55%)がこれらふたつのコーナーで失われていた。

鈴鹿サーキットに挑むアルボン。ウィリアムズはデグナー2とヘアピンでトップ集団に対して大きくタイムをロスした。
鈴鹿での最終Q3アタックにおけるウィリアムズのパフォーマンスを他のドライバーと比較してみよう・・・
デグナー2/ターン9
下のグラフに示すように、アルボンは、前のデグナー1 (グラフのターン8) での速度差により、このターンに時速253kmで到着するが、フェルスタッペンは時速270km、ピアストリは時速267kmである。
アルボンのコーナー中間の最低速度は時速139kmであるのに対し、フェルスタッペンは時速143km、ピアストリは時速150kmである。しかし、アルボンはコーナーのかなり早い段階での最低速度になる。彼はブレーキングを早目に行っているが、コーナーからの脱出はよりスムーズだ。フェルスタッペンはアルボンよりもはるかにブレーキングとコーナリングをうまく組み合わせているが、ピアストリはそのテクニックを全く使っていない。
アルボンは他のドライバーより時速20km以上遅いため、ブレーキングは遅目にできるものの、アクセルを離すタイミングははるかに急だ。ブレーキを踏んでいるのは50メートルだが、最初の7メートルだけはアクセルも併用し、コーナーへのマシンの回転を最適化しようとしている。
レッドブルも当然、比較的低速では回転しにくいが、フェルスタッペンはスロットルとブレーキを多用することで、この状況を克服しているようだ。フェルスタッペンは到着速度が速いにもかかわらず、ブレーキング距離は短い(45メートル)ものの、最初の18メートルはスロットルとブレーキを併用している。
ピアストリはフェルスタッペンと同じく遅くにブレーキをかけるが、スロットルとのオーバーラップはゼロで、ブレーキを4メートル手前で離すため、合計わずか41メートルで時速98kmの速度低下となる。
フェルスタッペンはブレーキを踏んでいる45メートルの間に時速121kmも減速している。ピアストリは(回転がおわったため)ブレーキを離せると感じた時点で時速166kmまで減速している。一方、フェルスタッペンはブレーキを離すのが遅く、必要な回転に達する前に時速149kmまで減速している。時速143kmのアルボンは、ピアストリよりもさらに早くブレーキを離すことができる。この一連の流れを通して、ピアストリはアルボンに0.25秒、フェルスタッペンに0.129秒の差をつけている。


鈴鹿でのQ3最終アタックのデータは、フェルスタッペン(青)、ピアストリ(赤)、アルボン(緑)のラップタイムをトレースしたもの。ここでは特に、デグナー2(ターン8~9)とヘアピン(ターン10~11)付近のフェーズに注目している。
ヘアピン/ターン11
上表からわかるように、フェルスタッペンはこのコーナーで最も勢いを維持しており、コーナー中間地点での最低速度は時速77km。一方、ピアストリは時速73km、アルボンは時速71km。アルボンは時速267km、フェルスタッペンは時速264km、ピアストリは時速261kmでコーナーに進入した。
フェルスタッペンが最初にブレーキを踏み、ピアストリとアルボンもほぼ同じタイミングで、レッドブルより約5メートル遅れてブレーキを踏み込んむ。フェルスタッペンはブレーキング開始時にまだ50%のスロットル維持で、10メートルにわたってブレーキも踏む。
ピアストリはブレーキング開始時にスロットルを33%に設定している(ブレーキングとスロットルを組み合わせるのはわずか5メートル)。一方、アルボンはブレーキング開始時にスロットルを11%に設定している(ブレーキとスロットルを組み合わせるのは9メートル)。
ピアストリはブレーキを66メートル踏んでおり(時速171km減速)、フェルスタッペンは64メートル(時速174km減速)、アルボンは58メートル(時速154km減速)である。これは、レッドブルの強みであるフェルスタッペンのブレーキングが最も強かったことを示している。ピアストリが僅差で続き、アルボンよりもかなり激しいブレーキングである。
アルボンのブレーキング距離が短いのは、アクセルを半分離してからブレーキを踏み込むまでのギャップが大きいため、減速の最初の部分をエンジンブレーキだけで行えることが一因となっている。彼はピアストリよりも7メートル手前でアクセルを離し、フェルスタッペンよりも3メートル手前でアクセルを離している。

ウィリアムズのトップマシンに対する遅れは、このふたつのコーナーで特に不利になるが、これらのコーナーでは、マシンが素早く回転しながらもリアが不安定にならない能力が強く求められる。
マシンのフロントエンドが非常に強力でレスポンスに優れている場合、ブレーキとスロットルの併用はそれほど必要ない。しかし、少なくとも併用テクニックにうまく反応するマシンであれば、ドライバーはフロントエンドの弱点を補うことができる。そして、フェルスタッペンはこの点で非常に優れている。しかし、フロントエンドが弱く、テクニックにうまく反応しない場合は、そのコーナーで遅くなってしまう。
サインツはフェラーリで、おそらくスロットルとブレーキの融合の達人と言えるシャルル・ルクレールのテレメトリの軌跡を研究することで、多くのことを学んだ。彼はその技術の多くを自身のドライビングに取り入れ、フェラーリもその方向性を踏襲して開発を進めた。しかし今、サインツはそのような開発手法を採用していないマシンに乗っており、適応に時間を要している。

マックス・フェルスタッペン、2025年F1日本GPのポールポジションアタック:車載カメラ映像 F1公式動画 1分56秒
サインツは「中国でも、そして鈴鹿でも、マシンの操縦方法を理解し、そのパフォーマンスを最大限に引き出すために、本当に頭を悩ませてきた」と説明した。「それぞれのマシンのパフォーマンスを最大限に引き出すには、ドライビングスタイルを少し変える必要がある」
「フェラーリには当然、特定のマシンバランスがあり、僕らが従うべき方向性があった。特定のブレーキング、特定のターンイン、特定の場所でのブレーキ解除を要求するマシンを3、4年かけて開発すると、全てをその方法で行うという筋肉の記憶の罠に陥ってしまう」
「違うマシンに乗り込むとき、特に予選でプレッシャーがかかっているときは、マシンの最後の0.2秒を見つけようとするので、3年間かけて構築された筋肉の記憶に頼ることになる」
「そのテクニックを忘れる必要はない。というのも、そのテクニックのおかげで、他のタイプのコーナーでもすごく速く走れるようになったからだ。でも、特定タイプのコーナーでは、あのテクニックを使わないように覚えておく必要がある」

フェラーリでスロットルとブレーキングを組み合わせる達人、シャルル・ルクレールとともに卓越した技術を学んだサインツだが、ウィリアムズではその学びが邪魔になっているのだろうか?
サインツの鈴鹿でのGPSの軌跡を見ると、彼はシケイン進入でアルボンに対してタイムをロスしている。そこでは、彼はずっと長くブレーキを踏み、スロットルも併用しているため、タイムをロスしている。ウィリアムズは、このような低速コーナーでのオーバーラップにうまく対応できないからだ。
しかし、このテクニックはより高速なデグナー2では彼にとって非常に効果的で、アルボンよりも多く使用し、彼よりも速い。デグナー2ではうまく機能していたブレーキを、シケインにに向けて長く踏み込むと、コーナー後半でアンダーステアが大きくなり膨らんでしまう。
しかし、これらはすべて有益な学びである。サインツが新しいマシンに適応するにつれ、ウィリアムズにとって価値ある開発の方向性が開かれた。
マーク・ヒューズ
-Source: The Official Formula 1 Website
2024年07月29日
2025年04月05日
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