F1技術解説:レッドブルがハンガリーに持ち込んだボディワークの大規模なアップグレードを分析

レッドブルの今シーズン2度目の大規模なボディワークのアップグレードはハンガロリンクで登場した。そのアップグレードは、ラジエーター吸気口の新しい形状を起点としたもので、上部ボディワークの空力学的特性が再配置された。

このアップデートは、シミュレーションでは約0.2秒の短縮につながると報告されていたが、レッドブルはバクー以来初めてポールポジションを逃した。ただしフェルスタッペンはわずか0.003秒差でポールポジションに手が届かなかった。

新しい吸気口(インレット)は、以前の吸気口が、当初よりも低く、幅広だったのと同じように、より低く、より幅広になっている。それに伴い、周囲のサイドポッドパネルも幅広になっている。新しい吸気口の縦横比は、ラジエーター吸気口に向かう空気圧を高め、冷却効率の向上と生成されるダウンフォースの増加を可能にした。

冷却気流を速くする(ラジエーター上を通過する空気の総量を増やす)ことで、通過する空気によってラジエーターの熱が吸収され、冷却能力が向上する。もし、ラジエーターのサイズも、より広いボディワークのトップ内で大きくなっていれば、冷却能力はさらに向上するだろう。

チームは長年、ラジエーターのサイズとその周りのボディワーク幅を最小限に抑えてきたが、この世代のグラウンドエフェクトカーでは、その空力学的哲学が進化している。アンダーカットの上にあるボディワーク上部の幅を以前より広くすることに空力学的な利点があることが明らかになりつつある。

レッドブルRB19:オリジナル(メルボルンで使用)とバクーでの最初のアップデート、そしてハンガロリンクでのラジエーターを比較すると、吸気口の形状が着実に低く幅広化していることがわかる。これはすべて、冷却と空力学の両方の最適効率を見つけるためである
レッドブルRB19:オリジナル(メルボルンで使用)とバクーでの最初のアップデート、そしてハンガロリンクでのラジエーターを比較すると、吸気口の形状が着実に低く幅広化していることがわかる。これはすべて、冷却と空力学の両方の最適効率を見つけるためである。

表面が生み出す追加の静圧は、マシンが方向を変え、対向気流を横切ったり、ヨー(マシンが向いている角度と進行方向の差)の状態にあるときに、アンダーカットを通り、後輪の間を流れる気流をより強固なものにする。

この最新のアップデートによって、レッドブルは冷却性能と空力学的性能の両方を向上させることができたようだ。

理論上はアップデートによって0.2秒短縮したにもかかわらず、レッドブルがルイス・ハミルトンのメルセデスにポールポジションを奪われた理由のひとつは、それぞれのチームが選択した相対的なボディワークの冷却レベルと関係があるかもしれない。

ブダペストの暑さに対応するため、レッドブルRB19の上部冷却ギル(鰓・エラ)は5枚つとも開いていた
ブダペストの暑さに対応するため、レッドブルRB19の上部冷却ギル(鰓/エラ)は5枚つとも開いていた。

サイドポッド上部の冷却ギルが開くと、高温の抽出された空気がダウンフォースを生み出す気流を妨げるため、空力学的にかなりダメージを受ける。しかし、非常に暑い日に比較的低速のサーキットにおける冷却要求は計り知れない。

レッドブルは5つの冷却ギルをすべて開けていたようだが、メルセデスは2つしか開けていなかった。これは予選ではメルセデスのペースに貢献するが、レースではパワーユニットをより控えめに使うことを意味する。

確かに、フェルスタッペンは何の支障も受けなかったようで、30秒以上の差をつけて、レッドブルの歴史的な12連勝を達成した。

-Source: The Official Formula 1 Website