アルファタウリAT04は、レッドブル姉妹チームの近年のマシンの中で、最も優れたものではなかった。予選の平均ペースはアルファロメオを上回る程度で、主な欠点は低速コーナーにある。そこでは、リアの車高が高くなるにつれ、ダウンフォースが相対的に弱いのだ。
イギリスGPで導入された大きなアップデートは、数ヶ月前から計画されており、特に低速コーナーでのリアエンドのグリップを向上させることを目標としている。このアップグレードには第2段階があり、今週末のブダペストGPで登場し、角田裕毅と新チームメイトのダニエル・リチャルドがそれを使ってレースをする予定である。
シルバーストンのアップグレードは、新しいフロア、上部ボディワーク、ディフューザーを中心に行われた。また、ミディアムダウンフォースのリアウィングの新バージョンもあったが、これは別の開発だった。
トンネル吸気口エリア(トンネルインレットエリア)
気流の方向転換によるアンダーフロア(床下)のパフォーマンス向上は、トンネルの吸気口(入口)から始まる。フロアの前縁を高くすることで、アンダーフロアを通過する流量が増加する。アンダーフロアに流入する空気の量を、アンダーフロアと側面のアウトウォッシュとの間でどのように分割するかは、フロアが最大限に機能するための重要なポイントである。
アルファタウリAT04のフロア前縁が高くなった。
アウトウォッシュされた空気は、アンダーフロアトンネルを通過する空気の速度を上げるために使われる。外気とアンダーフロアとの気圧差が、フロアのダウンフォースを決定する。アンダーフロアの気流は、圧力の低い部分を埋めようと流れ込んでくるが、気流を速く誘導できればできるほど、ダウンフォースは大きくなる。外気流によってフロアを密閉できればできるほど、アンダーフロアの空気は速く流れる。
しかし、使える容積は限られている。アンダーフロアからの気流と側面周囲のアウトウオッシュ気流との最適な分割を決めることは非常に重要であり、これは気流をどれだけ速く誘導できるかによって部分的に決まる。そこでは、渦発生器(渦流生成器 ヴォルテックスジェネレータ:空気を円形に回転させ、周囲の空気を加速させる小さな突起物)が非常に役に立つ。
アルファタウリのフロアは高くなり、アンダーフロアの気流容積が増加したが、それに加えて、トンネル入口の屋根とベーン(羽根)の形状はすべて、より大きな渦の力を誘発するように変更され、新たに増加した容積にエネルギーを与えている。
フロアとフェンスの変更による新しい気流は、気流を再び最適化するために新しいフロアエッジ形状を必要とした。フロアエッジで許されているシングルウイングプロファイルは、カットアウトによって後方のアンダーフロアに向かって内側に延長された。これにより、空気圧を操作してフロアエッジの密閉性を高め、トンネルがより大きなダウンフォースを生み出すことを可能にしている。
アルファタウリAT04:フロアエッジ内で許されているシングルウイングは延長され、後方で内側に向きを変え、カットアウトを通してアンダーフロアに向けられ、アンダーフロアトンネルの密閉性を高めるために空気圧を操作する装置を形成している。
リアボディワーク
リアのボディワークの上部は幅が広げられ、強化されたキャノン(大砲)形状を形成している。アルファタウリは、これによりヨーやステアによる気流へのダメージが軽減されたと主張している。
ボディワークの幅広部分により静圧が増加させ、マシンが対向空気に向かって旋回するときにその部分の気流に生じる乱流に対する抵抗力が高まる。これにより、その部分の気流はより強固で安定したものになり、その結果、その下にあるフロアエッジがより効果的に機能するようになる。
アルファタウリAT04ではリアウイングが再設計され(左図がオーストリア仕様、右図がシルバーストーン仕様)、リアのボディワークも幅が拡大された。
ディフューザー
トンネル出口にあるディフューザーの壁が外側に湾曲しているため、気流の横方向への広がりが大きくなり、その結果、リアタイヤから気流の後流が引き出されて、ディフューザーに形成される閉塞が減少する。
リアウィング
ミディアムダウンフォースのリアウイングが改良され、中央部の荷重が増加し、外側の端の荷重が減少した。より楕円に近い形状のため、同等のダウンフォースが得られるが、抗力は少ないだろう。
このアップグレードの大きさを考えると、シルバーストンで2台のマシンともQ1を突破できず、角田裕毅とニック・デ・フリースがそれぞれ16位と17位でレースを終えたことはチームにとって期待外れだった。
とはいえ、シルバーストンのレイアウトは、次戦のハンガロリンクほど低速コーナーでのパフォーマンスに重点を置いたレイアウトではない。
アルファタウリは、シルバーストンではマクラーレンのような躍進はなかったものの、チームはアップグレードのパフォーマンスに満足しており、ハンガロリンクではさらなる開発がマシンに搭載される予定である。
シルバーストンでの圧力タップ(圧力測定)では、アップデートが望ましいダウンフォースの増加をもたらしていることが示唆されたものの、マシンのバランスは最適化されていなかった。チーフレースエンジニアのジョナサン・エドルスはシルバーストンの金曜日の夜、次のようにコメントした。
「分析の結果、アップデートがうまく機能していることがわかった。FP2ではさらにマシンに変更を加えたが、ソフトタイヤでのショートランでのバランスという点では、どちらのマシンもスイートスポットに到達できなかったと言える。ここではラップタイムキラーになるフロントエンドが不足していた」
「路面温度の高さがフロントタイヤの過熱(オーバーヒート)を悪化させ、フロントのグリップ不足を招いた。だから、バランスを改善することでラップタイムが良くなると考えている」
「要約すると、空力学的アップデート(エアロアップデート)は、データ上では向上を示しており、夜間の作業の焦点は、セットアップとドライビングに何が必要かを確認し、この追加のパフォーマンスを活用してラップタイムに変えることだ」
テクニカル・ディレクターのジョディ・エギントンは次のように付け加えた。
「今回導入した空力学的アップデートは、おおむね期待に沿っていたようだが、シルバーストンで順位を上げるには十分ではなかった。ハンガリーで予定されている空力学的アップデートは、目標達成に向けて軌道修正するための重要なステップとなる」
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-Source: The Official Formula 1 Website
2023年7月11日