レッドブルRB19のフロアとサスペンションの研究は、そのパフォーマンス(性能)の優位性の源について多くのヒントを与えてきたが、そのパフォーマンスのひとつの側面、つまりDRSによってライバルマシンよりも大きなスピードアップを得る方法については、これまで完全には説明されていなかった。
ディフューザーの傾斜と、その傾斜の後縁が下側のビームウイングとどの程度接近しているかに、おそらく重要なヒントがある。
まず、DRS活性化によってレッドブルの方がライバルのマシンよりもスピード増加の傾向があることを示すいくつかの例を紹介する。
DRSの有無におけるトップスピード(最高速度)
注目すべきは、バルセロナ(ドライ予選とレースを比較できる最新のレース)において、メルセデスが実際にDRSによって最大のスピード増加を示したことだ。つまり、彼らはこの領域におけるレッドブルの強さに対抗する方法を見つけた可能性がある。
しかし、レッドブルはDRSなしでもストレートの終わりで最速を記録することが多いにもかかわらず、DRSで最大のアドバンテージを見出していることを受け入れると、彼らはどのようにしてこれを達成しているのだろうか? 非常に説得力のある理論のひとつは、ディフューザー/ビームウィング/リアウィングの組み合わせ全体をどのように構成したかだろう。
現在のどのマシンでも、メインウイングのDRSフラップを閉じると、ディフューザーから出た気流はディフューザーランプ(傾斜)の角度に合わせて上昇し、ビームウイングに付着し、メインウィングの下側に流れる。
これにより、メインウィングによって生成されるダウンフォースが増加するが、そのカスケードエアロ効果全体には別の利点がある。(ビームウィングとウィングによって生成される)ディフューザー後方のさまざまな低圧領域が、気流の速度を効果的に高め、方向を変えるので、 ディフューザーの屋根に付着したままにするのを助ける。ディフューザーの背後で起こっていることは、ディフューザーの内部で起こっていることに影響を与える。
黄色の円は、ディフューザーランプ(傾斜)の段階的変化を示している。実際の気流はこれよりもはるかに複雑であるが、矢印は、DRSが使用されたときにディフューザーが失速する可能性の基礎を示す。これは、ディフューザー背後に気流をディフューザーの屋根に付着させておくのに十分な低圧が存在しない可能性があるためである。
マシンのDRSフラップが作動し、ウィングのダウンフォースを失速させると、トップウィングがビームウィングを引き寄せなくなるため、ビームウィングとの気流のつながりが断ち切られる。そのため、トップウイング自体によるドラッグと、ビームウイングがあまり働かなくなることによるドラッグの二重の減少が生じる。
レッドブルは、ふたつのウィングの間の接続を最大化するために非常に攻撃的な形状のビームウィングを備えているだけでなく、ディフューザーの先端がビームウィングの最下部にほぼ接触しており、ディフューザーランプ(傾斜)を効果的に延長してひとつの大きな傾斜を作り、トップウィングに向かう気流を助けている。
それ自体が、この気流を非常に強力で頑強なものにするのに役立つはずだ。また、DRSによってダウンフォースが減少するため(すべてのダウンフォースはいくらかのドラッグを誘発する)、ドラッグの減少も大きくなるだろう。
しかし、ディフューザーランプ(傾斜)の形状にはさらに微妙な調整が加えられているように見える。ジョルジオ・ピオラの図面を見ると、他のマシンのディフューザーランプ(傾斜)は上向きの角度がひとつであるのに対し、レッドブルのそれは二段階になっている。ある角度から始まり、角度を増して再び下がり、屋根に緩い凹カーブ(コンケーブカーブ)を形成した後、ビームウィングに合流するためにもう一度上向きに傾斜している。
レッドブルRB19のフロアフェンスの詳細図
レッドブルRB18とRB19のスプリッター比較
なぜこれが重要なのだろうか? 気流は、ビームウィングとトップウイングに強引に引き寄せられているときは、ディフューザールーフ(屋根)の輪郭に従うのに十分な強度を持つことができるが、一旦その助けがなくなると、屋根の余分な曲率に従うことができなくなる可能性がある。
その場合、気流が表面から離れ、ディフューザーが突然効果を発揮できなくなり、ダウンフォースとそれが生み出すドラッグが低下する。
要するに、この二重の湾曲(ダブルスイープ)とビームウィングの近接を組み合わせることで、DRSが作動すると同時にフロア-ディフューザー-ビームウィング-ウィングの組み合わせ全体のダウンフォースを失速させるのにより効果的となる可能性がある。これは確定した事実ではないが、レッドブルがこのような変わった形状のディフューザーを選んだのには理由があるに違いない。
-Source: The Official Formula 1 Website