フェラーリはスペインGPでボディワークの大幅なアップグレードを導入した。チームは非常に難しい週末を過ごしたが、それは必ずしもアップグレードとは関係ない。フロントローからスタートし、5位でフィニッシュしたカルロス・サインツは、この点を強調していた。
彼は「アップグレードは機能していると思うが、おそらく最悪のサーキットで導入してしまった」と述べた。
今年のフェラーリは、マシンのリアが安定せず、突然扱いにくくなることを両ドライバーが指摘していた。その対策として、最新のボディワークはリアへの空力学的負荷を高め、より安定させるよう設計された。
この目的を追求するため、フェラーリはサイドポッドと下部エンジンカバーの形状を全面的に変更した。サイドポッドは幅広で断崖(断崖絶壁)のフロント形状(他チームが採用している鋭くアンダーカット(下部切り欠き)されたフロントとは対照的)を継承しているが、上から見たときの幅広部分の長さを延長している。
また、サイドポッドの幅も狭くなった。「幅広」部分は依然として幅があるが、以前よりも狭く、長くなっている。それとそれに伴う新しいフロアが、今回の変更の本質である。
フェラーリSF-23:新しいサイドポッドの「幅広(ワイド)」部分が長く、狭くなった。
フェラーリSF-23:この変更は、気流がマシンのリアに向かう際の気流の剥離をなくすための試みである。
なぜフェラーリがこの変更で求めるものが得られると考えるのかを理解するには、まず昨年のF1-75に導入された「ファット(太い)」サイドポッドフロントがどのように機能するのかを見る必要がある。
アンダーカットのない断崖のフロントは、気流をマシン表面からアウトウオッシュし、マシンのリアに引き戻すためにある。リアのその場所は、サイドポッドがディフューザー周囲のエリアにつながるコークボトルエリアに合流し始めるところである。
この「コークボトル」エリアの圧力が低いため、サイドポッドの断崖のフロントによってアウトウォッシュされた気流が、マシンに引き戻される。前方でアウトウオッシュされた空気は、後方でインウォッシュされ、理想的にはこの2点間できれいな放物線を描く。
この気流を離してから戻すようにするマシンの表面は、レッドブルスタイルのアンダーカットのあるサイドポッドが気流を加速する方法とは全く異なっている。レッドブルでは、かなり狭いサイドポッドの前部に、底面へ向かい下縁に沿うラインに溝が設けてある。
フェラーリSF-23の大幅アップグレードがスペインGPに持ち込まれた。
レッドブルのサイドポッドの後部では、このラインとサイドポッド上部にある下向きのスロープからのふたつの気流が合流し、その気流が後輪の隙間からディフューザーを通過する際にエネルギーを追加する。
レッドブルスタイルの「アンダーカットとランプ(斜面)」の組み合わせによる気流は、物理的な表面とほぼ接触したままである。フェラーリの「アウトウォッシュとインウォッシュ」の気流は、離脱と再合流のふたつのポイントの間に、その表面が残っている。
このふたつの方法は、同じことをしようとしている。つまり、ディフューザーの壁の上を通過する気流の速度とパワーを最大化して、ディフューザーを通過する気流の吸引力を高める(それによってマシンに対するアンダーボディの吸引効果を高める)のだ。しかし、彼らは違う方法でそれを行なっている。
フェラーリSF-23はサイドポッドと下部エンジンカバーの形状を全面的に変更した。
フェラーリがサイドポッドの「幅広」部分を狭く長くしているのは、ふたつの接点間で湾曲した放物線を描くように設計された気流が「剥離」、つまり意図した経路から外れ、流れのエネルギーを散逸させていると考えていることを示唆している。
気流は、あまりに突然に方向転換を求められると剥離する。サイドポッドを狭くすると、意図した気流のカーブが浅くなる。幅広部分を長くすれば、さらに浅くなる。
気流の分離が、実際にマシンのリアエンドの扱いにくさの原因だとすれば、このサイドポッドのジオメトリの変更は、安定性を高めるのに役立つはずである。
-Source: The Official Formula 1 Website