F1技術解説:ウィリアムズは技術トレンドを取り入れた最新チーム

グリッドを席捲しつつある技術トレンドを採用した最新チームはウィリアムズ。

ここで以前に解説したアストンマーティンやレッドブルに続いて、多数のドリル孔のあるブレーキキャリパーというトレンドに従ったのはウィリアムズである。これはメルボルンでFW45に導入され、アレックス・アルボンとローガン・サージェントのマシンに搭載された。マーク・ヒューズがジョルジオ・ピオラの技術イラストとともに技術解説する。

現在のフェラーリに搭載された伝統的スタイルの孔(あな)なしキャリパーに比べると、キャリパーがパッドをブレーキディスクにクランプする部分に、より広範囲にドリル孔が施されているのがわかる。

これにより、ブレーキディスクの冷却能力が増加し、一定レベルの冷却に必要なブレーキダクトが小さくなるので、空力学的メリットがある。というのも、フロントのブレーキディスクは、空力学的にかなり破壊的だからである。

しかし、(ドリル孔のおかげで)キャリパーのその部分の材料が少ないため、熱を放散させる材料が少なくなり、キャリパー自体が高温になる傾向がある。これに対抗するため、いくつかの孔の中に、熱伝導率のよい材料からつくった露出したピンを配列して、キャリパー本体から熱を逃がしている。

左図:アストンマーティンAMR23のブレーキセットアップ、右図:レッドブルRB19のブレーキセットアップ
左図:アストンマーティンAMR23のブレーキセットアップ、右図:レッドブルRB19のブレーキセットアップ。



このキャリパーは、従来の孔なし部品と比較して、1コーナーあたり約200グラム、合計で0.8kg軽量化されている。これは、車両重量を制限値以下にするのに有効なだけでなく、バネ下重量を節約できるため、さらに価値がある。バネ下重量はサスペンションによって支えられているが、ホイールやブレーキなどのバネ下重量は、車高や機械的グリップに大きな影響を及ぼす。

ブレーキキャリパーは、マシンに残された数少ない設計自由度の高い部分である。この新型キャリパーの製造には、長い時間と高いコストがかかる。

ウィリアムズFW45の新型ドリル孔付きブレーキキャリパー。ブレーキディスクから伝わる熱をキャリパー本体から逃がすための冷却ピン(黄色で強調表示)が並んでいる
ウィリアムズFW45の新型ドリル孔付きブレーキキャリパー。ブレーキディスクから伝わる熱をキャリパー本体から逃がすための冷却ピン(黄色で強調表示)が並んでいる。

通常、このキャリパーひとつあたりの製作時間は約20時間であるが、従来のタイプは約12時間である。キャリパーのアルミ合金に孔を開けるために、特別な装置を作らなければならない。熱でキャリパーが歪んでスクラップになる可能性があるので、あまり急いで孔を開けることはできない。

ウィリアムズは、このドリル孔/ピン付きキャリパー技術を取り入れた3番目のチームにすぎないが、他チームも追随するかもしれない。

フェラーリSF-23はまだ伝統的な無孔キャリパーを使用している。この場合、重量は約200グラム重くなり、一定の冷却レベルを確保するためには、より大きなブレーキダクトが必要となる。しかし、より堅固なので、より良いブレーキペダル感覚を提供することができる
フェラーリSF-23はまだ伝統的な無孔キャリパーを使用している。この場合、重量は約200グラム重くなり、一定の冷却レベルを確保するためには、より大きなブレーキダクトが必要となる。しかし、より堅固なので、より良いブレーキペダル感覚を提供することができる。

-Source: The Official Formula 1 Website