レッドブルは、シーズン序盤のフェラーリに対するパフォーマンス不足を解消し、両チャンピオンシップで圧倒的な強さを見せている。しかし、彼らは一体どのようにしてそれを成し遂げたのだろうか? マーク・ヒューズがジョルジオ・ピオラの技術イラストとともに、2022年の開発レースを詳しく解説する。
今年のレッドブルとフェラーリのパフォーマンスパターンを見ると、レッドブルへ振れたのは、これまでの16戦中12戦目となる7月のフランスGPから始まっているようだ。
それまでは、結果が必ずしもパフォーマンスステータスに見合わないことがあったとしても、フェラーリのマシンの方が速いことが多かった。しかしその後、レッドブルが純粋なパフォーマンスと結果で圧倒し、フェラーリは苦戦を強いられている。
その背景にある技術的要因は、非常に複雑な組み合わせになる可能性が高いが、各チームが当時追求していた開発方向から、いくつかの手がかりを得ることができる。
両チームが、それぞれのマシンに新しいフロアを導入したのは、フランスGP週末だった。
フェルスタッペンとルクレールは今シーズン序盤、接戦を繰り広げた。
レッドブルについては、その週末の具体的な目標は、アンダーフロアの空力学的圧力の中心を後方に移動させ、リアウィングを小さくしても同じバランスを維持するようにすることだった。そうすることで、非常に暑くなると予想された週末、長いコーナーでタイヤを飽和させることなく、マシンはストレートで速く走ることができるのだ。
しかし、レッドブルの開発方針は、シーズン当初よりもフロントエンドを強化することであった。これは主に軽量化プログラムによって、リアよりもフロントエンドの重量を減らすことで達成された。
マックス・フェルスタッペンはモンツァで次のように説明した。「マシンがとてもオーバーウェイトだった。(重心が)マシンの間違った位置にあったので、アンダーステアが強くなり、フロントがロックしやすかった」
マシンの重量配分が変われば、空力学的圧力の中心も適切に調整し、互いにマッチさせるのが理想的である。そうしなければ、高速コーナーと低速コーナーで特性のミスマッチが生じる。
レッドブルはシーズンを通じてRB18を軽量化してきた。
マシンのフロントから重量が減ると(それによって重量配分が後方に移動する)、圧力の中心を後方に移動させることも可能だったはずだ。レッドブルは単純にリアウイングのレベルを上げるのではなく、フロアに微調整を加えてこれを実現する傾向がある。
圧力の中心を重量配分に比べてあまり後方に移動させなければ、フェルスタッペンが好むフロントエンドのバランスに近づくだろう。というのも、彼は、他のドライバーであれば許容できないレベルのリアエンドの不安定性に耐えることができるからである。
軽量化されれば、不適切な重量配分の制約がなくなるため、チームが空力学的なセットアップで、マシンの操縦特性(ハンドリング特性)を変化させる余地がはるかに広がる。
この軽量化により、フェルスタッペンのエンジニアは、より広範囲のコーナースピードで検討できる空力学的バランスの範囲を拡大できる。フェルスタッペンは「これまでさまざまな種類のサーキットでさまざまなチャレンジをしてきたが、今はどのサーキットでもマシンが本当に機能しているように見える」と語った。
シーズン序盤は接戦だったが、ルクレールの3勝に対し、フェルスタッペンは11勝を挙げている。
操縦性バランス(ハンドリングバランス)への影響はさておき、軽量化はそれだけでラップタイムを短縮できる超強力な手段である。他の変更がない場合でも、10kgの軽量化は通常0.3秒のラップタイム短縮に相当する。
フランスGPまでの11戦で、レッドブルのフェラーリに対するドライ予選の平均敗北差は0.176 秒だった。フェラーリがシーズン当初、最低重量をわずかにオーバーしていたことを考えれば、シーズン序盤のわずかなペースアドバンテージの一部または全部は、それだけで説明がつくと考えることもできる。
その後、レッドブルが軽量化すると、それだけで両者のパフォーマンス順位が変わるのは当然のことだろう。
フランスまでの11戦のパフォーマンス(信頼性や戦略で歪曲されていない結果)だけを見ると、次のようになる。
2022年F1 レッドブル対フェラーリ(第1戦から第11戦)
つまり要約すれば、最初の11戦のうち6戦ではフェラーリが速く、3戦ではレッドブルが速く、2戦は僅差だったということになる。
それ以降の5戦では、フェルスタッペンのレッドブルが、たとえ予選でマシンのパフォーマンスを発揮されないことが多くても、あらゆる場所でフェラーリよりも速かった。
スパ・フランコルシャンでは、レッドブルが今シーズンのどのマシンよりも大きなアドバンテージを持っており、5つのトラックのいずれにおいても、フェラーリはレッドブルのレース日のペースに対抗できなかった。
これらはすべて、レッドブルの重量とバランスの改善によって説明できるものだろうか? フェラーリのチーム代表マッティア・ビノットは、その間のフェラーリF1-75の特定の難題を認めている。
フェラーリがF1-75のフロアに施したアップデートの詳細
ビノットはモンツァで「確かにマシンのバランスに問題があった…(それが)タイヤ自体にオーバーヒートを起こし、さらにタイヤ劣化につながった」と述べた。
「マシンのバランスが悪かったことは分かっている。マシンのバランスの悪さの原因は、空力学的開発によるものだった... 我々にとっては疑問だった」
フランスで行われたフェラーリのフロアのアップデートは、ベンチュリトンネルへの吸気口の配置を変更し、内側の吸気口を高くして、より多くの気流をマシン後部に送ることで総ダウンフォースを増加させようとするものだった。
フェラーリは、フロアが目標とするダウンフォース増加をもたらしたと主張しているが、バランスが変化し以前よりもアンダーステア特有の特性が強くなっているのかもしれない。
ドライバーはすべての通常のツールを使用してバランスを調整することができたとしても、それはビノットが言うタイヤの問題の一因となる可能性がある。
-Source: The Official Formula 1 Website
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