レッドブルとフェラーリの開発競争は続いており、両チームともフロア吸気口の配置を大幅に改良してポール・リカールのレースに臨んだ。
両チームとも、アンダーフロア・トンネルの吸気口フェンス周囲を変更している。チームは、外側の「バージボード」(これが事実上の第4のフェンスを形成する)に加えて3つのフェンスが認められている。一般的に、その機能は、ベンチュリトンネルに向かう空気を加速し、マシンのアンダーボディのダウンフォースを生成する。気流に誘導される空気が速ければ速いほど、ダウンフォースは大きくなる。
しかし、(トンネルと地面の隙間が最も小さくなる「チョークポイント」の周囲でピークに達する)トンネルの吸引効果によって生じるダウンフォースと、前方のフロアの露出した上面と下面の空気の相互作用によって局所的に生じるダウンフォースがある。エアロダイナミシストは、マシンのフロントとリアの間の空力学的バランスを変化させるために、どちらか一方を他方に対して、妥協している。
空力バランスは、重量配分の空力学的な意味合いを持っている。全体のダウンフォースを各車軸にどう配分するかである。低速サーキットでは一般的に、高速コーナーでの安定性を求める高速サーキットよりも、鋭い方向転換レスポンスを得るために、前寄りの空力学的配分が望ましい。
レッドブルとフェラーリは、ポール・リカールで、ウィングレベルについて厄介な決断を迫られた。
ポール・リカール・サーキットの高速で長いコーナーを回るためには、圧力中心が全体的に後方に偏ることが望ましいだろう。
圧力中心を後方に移動させる最も簡単な方法は、大きなリアウィングを搭載することである。しかし、それでは直線スピードが犠牲になってしまう。特にレッドブルは直線スピードを優先し、ポール・リカールに低ダウンフォースのウィングを持ち込んだ。
そのため、それを補うためにアンダーボディの圧力中心を後方にすることが、より重要になった。直線スピードと圧力中心の更なる恩恵を求め、その相反する目標をフェンスの再配置によって解決した。
レッドブル
レッドブルはトンネル前方のフェンスの配置を工夫して、サーキットごとに空力学的配分を変えているように見える。彼らは今年すでにさまざまな配置で走らせており、これがRB18の重要な精巧さかもしれない。
レッドブルのポール・リカール用フロア吸気口。チームは2022年にさまざまな配置を使用してきた。ポール・リカール用のレッドブルは、空力学的バランスを後方寄りにするために、一番外側のベーンをさらに遠くに移動させた。
では、フェンスの配置は空力バランスにどのような影響を与えるのだろうか? その手がかりは、レッドブルがポール・リカールでFIAへの新フェンスの説明の中にある。
変更の理由:パフォーマンス-局部荷重
相違点:フロア端まで延長されるフェンス形状の変更
説明:気流の安定性を維持しつつ負荷を改善するため、局所的圧力を再配分するよう、フェンスのレイアウトが変更された。
「局部荷重」とは、トンネル後方で生じるダウンフォースに対して、フロア前方で生じるダウンフォースの大きさを指す。ウィングと同じように、フロアの露出上面と下面の圧力差を利用して、ボディワークのその部分に直接ダウンフォースを発生させることができる。このとき、最も外側にあるフェンスがそのほとんどを担い、最も内側にあるチャネルを通る空気は、直接ベンチュリトンネルに向かう。
フランスの前は、レッドブルは外側の2つのフェンスを極端に近づけ、後方に向かって収束させており、その相互作用がトンネルから外側に流される空気をおそらく加速させたのだろう。このとき、フロアの上面と下面には圧力差が生じる。これはマシンの前寄りであるため、空力学的バランスを前方に持っていこうとする傾向がある。そのため、トンネル内に導かれない気流を利用し、前寄りバランスをさらに強化することができる。
フランスGPでは、その外側のふたつのフェンスが離れていた。これは、レッドブルが空力バランスを後方へ移動させ、トンネルに供給される気流の比率を増やし、フロア前方部分への荷重を減らすことを狙ったのだと考えられる。これは、直線スピードを高めるために必要な小さいリアウイングの使用と一致する。
また、圧力の中心を後方に移動することで、フロントタイヤの熱劣化を最小限に抑えることができる。タイヤの熱劣化は、特に路面温度が高温となったポール・リカールでは全員にとって非常に問題だった。
レッドブルはポール・リカールのために、一番外側のフェンス2つを分離した。黄色の破線は、以前のフェンスが「バージボード」のすぐ近くまで来ていたことを示している(円内図参照)。2つのフェンスの内側をバージボードから車体側にさらに移動させることで、小さいリアウイングにもかかわらず、空力バランスを後方へ移動させることができた。
フェラーリ
フェラーリのフロアの変更は、レッドブルのようなサーキット特有のものではなく、一般的な開発の一環だった。
フェラーリは、車体側のトンネル吸気口部分の高さを上げ、外側部分は従来と同じ高さを保つよう、ボディワークに段差をつけた。また、外側の「バージボード」をさらに前方に延長した。
車体側吸気口の高さを上げると、トンネルにより多くの流量を送り込むことになる。レッドブルの変更と同様、これは空力バランスを後方に移動させると思われるが、総ダウンフォースも増加させる可能性がある。それがフェラーリの狙いのようで、ポール・リカールにおけるFIAへのマシン変更の説明で、それが確認できる。
この新しいフロア部品は、標準的な開発サイクルの一環である。マシンの全体的な空力学的パフォーマンス改善を目指したものであり、ポール・リカールのサーキットのレイアウトに特化したものではない。
車体側トンネル吸気口(カーボンブラック、Shellのロゴに隣接)の高さを上げ、底部吸気口に至るボディワークに段差をつけた。
-Source: The Official Formula 1 Website
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