F1技術解説:ベルギーGPで施行されるフロアに関する技術指令を理解する

ベルギーGPから、技術指令TD039の新しい拡大版が適用される。これは、カナダで初めて各チームに発表されたFIA技術指令で、マシンに作用する垂直方向の力の測定と監視に関するものである。これは、空力学的な上下動(バウンド)がドライバーに与える物理的な影響について、ドライバーから苦情があったことを受けている。

技術指令は、規則の適用方法を示すもので、技術の発展やチームの競争力向上により、規則作成時には想定していなかった方向に開発が進むので、統括団体が開発をコントロールするために技術指令を使用する。

FIAは、すでにマシンに搭載されているセンサーを通じて、垂直加速度の力を測定し、それを超過すると走行できないような閾値を設定しているが、さらにアンダーフロアプランクとスキッドプレートの取りつけ方法を規定することで公平な競争の場にして、このプロセスを開始しようとしている。

現在、プランクの最大限の柔軟性を規定する規則を満たす方法については少なくともふたつの解釈がある。スパ以降は、そのうちひとつだけが認められるようになる。

オーストリアの予選におけるジョージ・ラッセルのクラッシュで、W13のプランクを見ることができた
オーストリアの予選におけるジョージ・ラッセルのクラッシュで、W13のプランクを見ることができた。


プランクは、地面すれすれに設置されるフロアを制限する方法として1994年に導入された。フロアを地面に近づけることで、気流が突然失速し、危険になるからだった。プランクは、フロアの中央部をどこまで延長できるかを規定し、その両側に空間を残すことで、危険性を排除した。

プランクの規定が、その後の空力学的開発において、非常に低い車高からの脱却に一役かった。その代わり、傾斜角(レーキ)をもたせたフロアを使うことで、アンダーフロアのダウンフォースを生成したのだ。2022年の空力学的規則以前は、マシンの車高を高くすると、走行可能な傾斜角を制限するのは、事実上プランクだけだった。

プランクは1994年F1に導入された
プランクは1994年に導入された。

一定の傾斜角を越えると、プランクの先端が地面に接触してしまう。プランクの残りの部分は、基本的に、その上にある機械的部品を保護するだけになる。

しかし、ベンチュリトンネルをもつ2022年のマシンでは、フロア全長をできるだけ地面に近くすることで有利になるので、プランクの全長が制限要素になる。

プランクにクッション効果を持たせることで、空力学的ポーポイズ現象(ポーポイジング)の発生を遅らせることができれば、マシンの車高を低くすることができ、より大きなダウンフォースを発生させることができる。クッション性が高くなれば、ベンチュリトンネルの失速点があるあたりまで、プランクを後方に延長することができるので、より大きなダウンフォースを生成することができる。

上の2021年仕様のRB16Bで見られるように、レッドブルはこれまで「高傾斜角(ハイレーキ)」コンセプトを好んでいたが、2022年マシンでは、フロア全長をできるだけ地面に近い状態で走らせるのが有利である
上の2021年仕様のRB16Bで見られるように、レッドブルはこれまで「高傾斜角(ハイレーキ)」コンセプトを好んでいたが、2022年マシンでは、フロア全長をできるだけ地面に近い状態で走らせるのが有利である。

FIAは、プランクの柔軟性規則に関する2種類の解釈について、同じように垂直加速度の制限を規定するのは不公平だと感じた。マシンが底打ちし、プランクが地面と接触すると摩耗するが、摩耗の許容範囲には限度がある。

取り付け穴部分でプランクの厚みが測定されるが、その穴の周囲のスキッドブロックの設計(デザイン)が、マシンが底打ちしたときに摩耗するかしないかに影響を与える可能性がある。そのためFIAはフロアの取りつけ方法を標準化しようとしているのだ。

F1では相変わらず、規則(レギュレーション)と解釈のサイクルが技術を前進させている。

-Source: The Official Formula 1 Website