F1技術解説:開発レースが始まる、レッドブルとメルセデスのイモラ・アップグレード

イモラで開発戦争が激化するなか、マーク・ヒューズとジョルジオ・ピオラが、エミリア・ロマーニャGP週末にレッドブルとメルセデスがそれぞれのマシンに持ち込んだアップグレードを取り上げる。

イモラは、多くのチームにとって最初の重要なアップグレードの場面となった。ただし、アップグレードをテストするフリー走行は、スプリント・レース前に1回しかなかった。レッドブル対フェラーリが週末の大きなテーマであり、話題の大半を占めた。というのも、フェラーリはアップグレードを見送ることに決め、レッドブルはアップグレードを推進したからだ。

クリスチャン・ホーナーは、このアップデートがチームのワン・ツー結果に大きく貢献したと考えていた。彼は「この週末にリスクを冒し、小さなパーツをいくつか導入した。フリー走行セッションが実質1回しかないときにはやりにくいことだが…」と述べていた。

「しかし、マックスもチェコも今週末は素晴らしい走りをした。1-2フィニッシュは、今日のピットストップと作戦の素晴らしさだけでなく、ミルトン・キーンズのファクトリーでの懸命な努力と作業、そしてオーストラリアでの失望の後の立ち直り回復があって、このような結果になった」

マックス・フェルスタッペンは、この結果はアップデートのおかげなのか、それともマシンを理解し操作する上での全体的なチーム・パフォーマンスのおかげなのか、よくわからない様子だった。

「場合によっては、それがアップデートよりも価値があることもある。次の数戦でわかるだろう」

キールスプリッターの上に搭載されたレッドブルの新しいウィングレット(上図)と、フェラーリの同様の配置:2022年F1エミリア・ロマーニャGP
キールスプリッターの上に搭載されたレッドブルの新しいウィングレット(赤矢印)と、フェラーリの同様の配置。

では、レッドブルが持ち込んだアップデートとは何だったのだろう?

ひとつは空力学的なもの、もうひとつは軽量化プログラム(2戦後のバルセロナまでに10kgの減量を目指したもの)の一環だった。これによって、レッドブルはフェラーリと同程度の重量になるはずである。最初の3戦で10kg超過と見積もられていたものが、イモラでは3kgほど削減された。その最大の効果は、美しく設計されたブレーキキャリパーの更新だった。

空力学的に最も大きな変化は、レッドブルのフロアのキールスプリッター、いわゆる「ティートレイ」部分の前にウィングレットが追加されたことだ。この部分は、アンダーボディ・トンネルの入口へ向かう気流を調整する重要な役割を担っているが、このウィングレットの追加により、ダウンフォースの負荷が直接このフロア部分にかかるようになった。

これにより、マシンの空力学的圧力の中心が、わずかに前方に移動する効果がある。

メルセデスは、ラジエーター吸気口の前にディフレクターを追加したり、ミラー取り付け部分の周辺のシュラウドを作り直したり、マシンの(上下動)の問題とは関係ないところで、一連の小規模な空力学的アップグレードを行なった:2022年F1エミリア・ロマーニャGP
メルセデスは、ラジエーター吸気口の前にディフレクターを追加したり、ミラー取り付け部分の周辺のシュラウドを作り直したり、マシンのバウンド(上下動)の問題とは関係ないところで、一連の小規模な空力学的アップグレードを行なった。

メルセデスでは、軽量化や空力学的な微調整も行われたが、マシンのポーポイズ現象問題を根本的に解決するようなものはなかった。

さまざまな新部品が軽量化に貢献したが、最も大きな減量をもたらしたのは、新しいフロアだった。これは、形状はやや変化しただけだったが、異なるカーボンレイアップ(積層)が採用された。

空力学的には、サイドポッド吸気口の前にターニング・ベーンを追加し、冷却効率の向上を図った(上図)。

(ミラーとそれに付随するベーンが取りつけられている)上部衝撃ビーム周辺の空力学的シュラウドは「分離した気流の小さなエリアをなくす」ために再形成された。リア・タイヤに近いディフューザーの端はカールを減らし、その部分の気流の剥離を低減するように設計された。それに伴い、ディフレクターのエンドプレートも微調整された。

 ジョージ・ラッセルはFP1で高ダウンフォースのリア・ウィングを試したが…:2022年F1エミリア・ロマーニャGP
ジョージ・ラッセルはFP1で高ダウンフォースのリア・ウィングを試したが…
ハミルトンと同じく、この図に示すような低ダウンフォース版を選んだ。しかし、ラッセルはハミルトンとは異なり、わずかなドラッグの増加でより大きなダウンフォースが得られるよう、後縁にガーニー・フラップをつけた:2022年F1エミリア・ロマーニャGP
ハミルトンと同じく、この図に示すような低ダウンフォース版を選んだ。しかし、ラッセルはハミルトンとは異なり、わずかなドラッグの増加でより大きなダウンフォースが得られるよう、後縁にガーニー・フラップをつけた。

メルセデスのトラックサイド・エンジニアリング責任者のアンドリュー・ショヴリンは「通常の空力学的開発だ」と述べた。

「上下動の問題は、別個に取り組んでいる。ここに持ち込んだ開発は、上下動には影響しないことはわかっていたので、その部品に焦点を合わせた」

「余談だが、上下動の問題を理解するために頑張っている。なぜなら、タイヤのウォームアップと同様、これはこのマシンの弱点のひとつだとわかっているからだ。競争力をつけるためには、この弱みを修正する必要がある」

チームは、両方のリア・ウィングを試し、低ダウンフォース版に落ち着いた(上図参照)。

フェラーリ、レッドブル、メルセデスという最も資金力のある3チーム、したがってコスト制限内に留まり、支出の閾値を超えることなく技術的難問に適応するのに最も苦労している3チームを観察することは、すでに今シーズンの競争力学の一部になっている。

-Source: The Official Formula 1 Website

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