
サウジアラビアでは、レッドブルとフェラーリが交代で首位に立ったが、その非凡なペースに到達する経路は両チームで異なっていた。マーク・ヒューズがそれぞれのセットアップ方法を検証し、ジョルジオ・ピオラが技術イラストを提供する。
先週末のジェッダでは、ほぼ全チームがウィング・レベルについて多くの実験を行った。サウジアラビアのサーキットは、1周のうち全開で走る割合が非常に高く、空力学的ドラッグに対するラップタイムの敏感さではモンツァに次ぐものである。
しかし、ダウンフォースとドラッグの完璧なトレードオフが正確にどこにあるかは、マシンのデザインによって異なる。さらに、今回は新しい空力学レギュレーションになって2戦目にあたるため、各チームはシミュレーションとは異なり、現実の世界でさまざまなセッティングに対してマシンがどう反応するのかを見極めている段階だった。
さらに、ポーポイズ現象(ポーポイジング)という複雑な問題もある。これは、フロアが地面に近づきすぎると、アンダーフロアの気流が失速し、一部のマシンがバウンドする現象である。つまり、シミュレーションでは理想的だったレベルのウイングが、現実にはそうでなくなってしまうのだ。たとえばメルセデスは、ポーポイズ現象を抑えるために、シミュレーションで想定されたダウンフォースの多くをあきらめているチームのひとつである。

お披露目:サウジアラビアにおけるメルセデスW13のアップデート
ソース元の記事内動画でメルセデスのアンドリュー・ショヴリンが解説している。
したがって、ポーポイズ現象に悩むチームは、リアウイングを最も低くして走行する傾向がある。直線速度が重要なレースでは、中程度のダウンフォース・レベルでも同等のラップタイムが得られることが多いからだ。ブレーキング時や、全開ではない7つのターンでは、より大きなグリップが得られるため、直線速度のデメリットはそれほど大きくない。
重要なのは、ストレートの終わりにおけるスピードではなく、ストレートの始まりから終わりまでの時間である。そして、ストレートに向かうコーナーのスピードが速いので、ストレートに入るスピードが速ければ、ストレートの終わりにおけるスピードが遅いにもかかわらず、ストレートでのタイムロスがほとんどなくなるだろう。さらに、ダウンフォースが大きいとタイヤを守りやすいので、レース・スティントが速くなる。
これが、フェラーリの方向性である。バーレーンのトラックは、中から高ダウンフォースのサーキットと言われているが、下に示すように、バーレーンとジェッダのウィングの差はほとんどなかった。

フェラーリF1-75のサウジアラビア用のウィングのセットアップ(上図)と、それによく似たバーレーンのウィング(下図)
フェラーリは、スプーン型の主翼(ふたつのパーツのうち下側のパーツ)を採用している。中央部がかなり深くくぼみ、外側の端は非常にスリムになっている。ドラッグの大部分を生成するのは、後方のフラップ(アセンブリの上部)ではなく、主翼である。
フェラーリのジェッダ用ウィングは、バーレーンで使用されたものとほぼ同じ形状でありながら、中央部のディッシュ(皿)は、それほどくぼんでいないことがわかる。低ダウンフォースのウィングであるが、それほど低ダウンフォースではない。

くぼみの少ない主翼(メインプレーン)を用いたフェラーリF1-75のサウジアラビア用リアウィングの詳細イラスト
レッドブルはジェッダでの金曜フリー走行で、バーレーン用ウイングを試したが、最終的には低ダウンフォースのセッティングに落ち着いた。バーレーンGPの主翼はスプーン型だが、予選やサウジアラビアGPで使用した低ダウンフォース・ウイングは、外側端がわずかに細くなっている、縁がほぼ直線の主翼である。
バーレーン用ウィングの大きな中央部分は、多くのドラッグとダウンフォースを生成する。外側の端は切り落とされているが、それは、いずれにしても、その部分が(エンドプレートが干渉するため)中央部分よりもダウンフォースを生成しないからだ。したがって、そこはダウンフォースの寄与が少ないので、ドラッグを減らすためにそこを切り取る方が有利である。
しかし、ジェッダで使用された縁が直線的な主翼は、幅が小さいため、削れる主翼の面積はほとんどない。これほど主翼の面積が小さいとドラッグが小さくなり、ダウンフォースも相対的に小さい。
そのためジェッダでは、フェラーリはコーナーとブレーキング時に速く、レッドブルはストレートの終わりで速かった。

レッドブルRB18のサウジアラビア用ウイング(上図)は、バーレーン用ウイング(下図)とは著しく異なっていた。
しかし、バーレーンでも、より高いダウンフォースで走る2台のマシンの間で同じようなパターンが見られた。バーレーンでは、レッドブルがフェラーリよりも速いコーナーもあったものの、全般的には、ストレートの終わりではレッドブルが速かったが、フェラーリの優れた加速性能がラップタイムへの影響を打ち消していた。
つまり、バーレーンとサウジアラビアという、ダウンフォースの要求がまったく異なるふたつのサーキットで、フェラーリはレッドブルよりもリアウイングを多用することを好んだようだ。これにはさまざまな理由が考えられる。レッドブルのアンダーフロアがフェラーリよりも大きなダウンフォースを発生させているのであれば、同じダウンフォースを得るためにそれほど多くの(枚数)リアウイングは必要ないだろう。
しかし、そう単純な話ではないかもしれない。リアウイングとビームウイングの組み合わせは、アンダーフロアの性能に影響を与える。リアウィングの下側で空気が働けば働くほど、下のビームウィングをより強く引っ張り、その結果、アンダーフロアを通る気流をより強く引っ張ることになる。
つまり、リアウィングを大きくすればするほど、アンダーフロアがより強く働く傾向にある。原理的には、リアウィングを追加し続ければマシンが速くなるので、素晴らしいことのように聞こえる。しかし当然ながら、ダウンフォースの見返りよりもドラッグによる不利益が勝るという、収穫逓減(しゅうかくていげん)のポイントがくる。しかし、一般論として、グラウンドエフェクト・コンセプトのマシンは、前世代のマシンよりもリアウイングを増やすことを促す。

リアウィングが大きくなればなるほど、アンダーフロアはより機能するが、ドラッグによる不利益がそのメリットを上回り始める。
ここにポーポイズ現象が加わると、フロアが発生させることができるダウンフォースに人為的な限界が生じる傾向がある。チームは通常、マシンを設計するときにポーポイズ現象に備えていなかったため、おそらく設計上、利用できるよりも大きなダウンフォースが発生するフロアになっているのだろう。
ポーポイズ現象を誘発しないひとつの方法は、単純にリアの車高を上げることである。しかし、これは非常に非効率な方法である。ポーポイズ現象の閾値(しきいち)からマシンを遠ざけるよりよい方法は、リアウィングを小さくすることである。そうすると、少なくとも低ドラッグというメリットが得られる。車高を上げると、ドラッグ低減というメリットはほとんどないのに、ダウンフォースをあきらめることになる。

レッドブルRB18:ジェッダでレッドブルが使用した小さいリアウィング
つまり、レッドブルのリアウイングのダウンフォースとドラッグが釣り合うポイントは、フェラーリよりも効率的であり、同じダウンフォースであればリアウイングの枚数を少なくすればよく、ポーポイズ現象は起きないのだろう。あるいは、リアウイングが大きすぎると、フェラーリよりも早くポーポイズ領域に入ってしまうため、リアウイングを少なくしなければならないのかもしれない。
サウジアラビアではレッドブルがバーレーンほど攻撃的ではないビームウィングを使っていたことは注目に値する。これらもドラッグを生成するし、ジェッダで使用された小型フラップ(上図)は、小さいリアウィング・パッケージの一部である。しかし、生成するドラッグが少ないだけでなく、このビームウイングはアンダーフロアの気流に及ぼす影響も少ない。

レッドブルRB18:ジェッダ(左)では、バーレーン(右矢印)よりも小さいビームウィング・フラップが使用された。
理由はともかく、フェラーリはレッドブルよりもリアウイングのレベルが高いことを喜んでいるようだ。また、それに寄与する要素のひとつは、フェラーリのパワーユニットの強さかもしれない。GPSの解析によれば、パワーユニットは加速時に非常に強いという。そのため、リアウイングを大きくすることができるのかもしれない。リアウィングを大きくすることができれば、ストレートの終わりで遅いにもかかわらず、同じ時間でストレートを走ることができるからだ。
今後、さまざまなサーキットからより多くのデータを入手すれば、より明確な全体像が間違いなく見えてくるだろう。しかし今のところ、F1で最も速い2台のマシンは、全く異なる方法でラップタイムを刻んでいる。
-Source: The Official Formula 1 Website
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