F1レース解説:フェラーリの大規模なアップグレードが成果を上げなかった理由 - 2023年スペインGP

大幅にアップデートされたフェラーリに乗るカルロス・サインツは、ポールシッターのマックス・フェルスタッペンのレッドブルと並んでフロントローからスタートするという有望な位置からスペインGPを始めた。しかし、スタートで競り合ったにもかかわらず、サインツは46秒遅れの4位でレースをフィニッシュした。このバルセロナでのレースをマーク・ヒューズが解説する。

フェラーリは、優勝したフェルスタッペンに1周あたり平均0.7秒の差をつけられ、トラック上ではメルセデスの2台とセルジオ・ペレスが乗るレッドブルにオーバーテイクされた。

フェラーリは、レイアウトを全面的に新しくしたサイドポッドと、それに伴う新しいフロアを搭載していた。そして、FP1でオリジナル仕様と連続比較した(サインツが新マシンを、シャルル・ルクレールが旧マシンを走らせた)あと、フェラーリは週末の残りについて、両マシンにアップデートを搭載した。

これにより、リアの大幅なダウンフォース増加がもたらされ、リアの不整合や感度を改善することが期待されていた。

フェラーリSF-23のアップグレードは、スペインで期待されたほどの影響をもたらさなかった
フェラーリSF-23のアップグレードは、スペインで期待されたほどの影響をもたらさなかった。

しかし、バルセロナ-カタルーニャ・サーキットの長い高速コーナーでは、すべてのマシンのパフォーマンスは、タイヤ、特にフロントタイヤといかにうまく調和するかが、いつも以上に決め手になった。

これはシーズンを通してフェラーリの弱点だったが、このサーキットのレイアウト、特に、低速だった最終セクションが超高速の長い最終ターンになってしまったので、他のトラックに比べ、レース当日により大きな打撃になった。

左フロントタイヤが劣化するなか、フェラーリのレースペースは、2台のメルセデスW14のペースに遠く及ばないものだった。メルセデスの2台は、フェラーリをトラック上でオーバーテイクして、引き離した。フェラーリは最初のスティントで、サインツの最初のピットストップを15周目に行うことで、ハミルトンに対する防御を試みた。

これによって、時間稼ぎはできたが、サインツは残るタイヤセットを長くもたせなければならなくなり、レース後半が苦しみが増しただけだった。ハミルトンとジョージ・ラッセルは、最初のピットストップを行う前に、サインツよりそれぞれ9周と10周多く走った。

フェラーリSF-23は、他のマシンほどタイヤに優しくなかった
フェラーリSF-23は、他のマシンほどタイヤに優しくなかった。

通常、後続車よりも9周前にピットインしたマシンは、その9周を新しいゴムで走るため、後続との差を大きく広げられるはずだった。しかし、フェラーリのタイヤ劣化が激しく、サインツの新しいミディアムのペースは、ハミルトンの古いソフトタイヤのペースと同等だったため、ハミルトンはピットイン後、フェラーリの直後で合流した。

かなり新しいタイヤを履いたハミルトンは、その後すぐにトラック上でサインツを簡単に抜いた。サインツの早目のピットストップは、レース後半、フェラーリとラッセルやペレスのマシンとのペース差を広げただけで、ラッセルとペレスは苦も無くサインツを抜いた。

注目すべきことに、フェラーリは、レッドブルやメルセデスに比べて、ウィングレベルをかなり下げて走行していた。そのおかげで、サインツの予選ペースが実際よりもよく見えた(ルクレールの姉妹マシンは、今のところ原因不明の機械的トラブルが発生し、Q1でノックアウトされた)が、レース当日にタイヤに負担をかける原因になったのだろう。

このトラックがいかにタイヤに厳しいかを知っているのに、なぜフェラーリはこのレベルのウイングを選んだのか興味深い。先週のモナコのように、縁石の上の乗り心地が悪く、バルセロナの予選ではマシンがバウンドした。ダウンフォースを増やしたことで、それがさらに悪化したのかもしれない。

フェラーリは、少なくともカナダでは、このアップグレードによってパフォーマンスが向上することを期待している:2023年F1
フェラーリは、少なくともカナダでは、このアップグレードによってパフォーマンスが向上することを期待している。

フェラーリは、比較的小さなウイングでも、フリー走行で経験したバウンドをコントロールするために、車高を高くすることでさらにダウンフォースをあきらめざるを得なかったのかもしれない。

あるいは、大きなリアウイングではマシンのバランスが取れず、フロントが十分なダウンフォースを生成できないため、アンダーステアが過剰になるのであれば、レースではフロントタイヤがさらに厳しく痛めつけられることになっただろう。

フェラーリの現在の開発状況では、バルセロナ-カタルーニャ・サーキットは他のトラックよりも弱点を露呈した。サインツはレース後「僕らが持ち込んだアップデートはうまく機能したと思う」と総括した。「でも、僕らにとって最悪のトラックで導入してしまった」

したがって、バルセロナにおけるパフォーマンスで、フェラーリの開発の進捗状況を判断するのは、おそらく間違っているのだろう。

-Source: The Official Formula 1 Website