
故障したエステバン・オコンのアルピーヌを回収するためのセーフティカーが導入されたが、フェラーリのピットウォールでは、判断を下すまでにわずか数秒の余裕しかなかった。シャルル・ルクレールとカルロス・サインツJr.が1位と2位を走行していたが、差を詰めつつあるメルセデスのルイス・ハミルトンから大きなプレッシャーを受けていたため、残り14周でレースに負ける可能性もあった。大きなプレッシャーと、決断のための時間がほとんどない状況だった…。このシルバーストンでのレースをマーク・ヒューズが解説する。
ルクレールは、レースが中断されたとき、ストウ・コーナーを回ったところだった。「走り続けろ」との指示を受け、彼はそれに従った。サインツは「ボックス、ボックス」の指示を受け、ピットインして新しいソフトタイヤ・セットに交換した。ハミルトンを含め、ほとんどのドライバーがサインツに続いた。
これは間違った判断だったのだろうか? チームを率いるタイトル優勝候補のルクレールを、リスタート時に新しいタイヤを履くライバルの標的にしてしまったのだ。
おそらく。しかし、そこには理屈があった。セーフティカーが出動した時点で、ルクレールとサインツの差はわずか3.5秒だったので、ピットインさせた場合、2台目のマシンを待たせることになり、2台ともピットインさせることはできなかった。チームが、サインツではなく、ルクレールをピットインさせるという選択をすれば、メルセデスはルイス・ハミルトンを走らせ続けたかもしれない。
そうなればハミルトンはルクレールより上位になり、もっと新しいタイヤでサインツの後ろでリスタートすることになっただろう。ハミルトンのタイヤは、セーフティカーが出動した時点で4周目、サインツのタイヤは18周使用されていた。

サインツはセーフティカー出動中にピットインし、ルクレールを抜いてF1初優勝を果たした。
このシナリオでは、新しいソフトタイヤに交換したルクレールは、サインツとハミルトンの後ろでリスタートしていただろう。これはルクレールにとって、完全に勝てる位置だったのかもしれない。しかしフェラーリは当初、新しいタイヤのサインツが後続を抑えるので、トラック順位を守ればルクレールにも優勝の可能性があると信じていた。
ルクレールは疑っていた。セーフティカー先導中、自身の優勝の可能性について「難しいだろう」と評価した。「タイヤの違いは何?」
彼のエンジニアは、ソフトは最初0.5秒速いが、その後すぐに劣化するという情報を持って戻ってきた。しかし、それは正確な状況ではなかった。新しいソフトは、ルクレールの古いハードタイヤより1周当たり1秒速く、レースの終盤では、マシンの燃料搭載量が減り、トラックにゴムが付着しているので、タイヤのパフォーマンスはそれほど速く劣化しなかったのだ。

ルクレール、ペレス、ハミルトンがホイール・トゥ・ホイールの「驚くべき」三つ巴のバトルを展開:2022年F1イギリスGP
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サインツはリスタート時、最大で10車身分後退するようチームから指示されると、フェラーリが優勝するもっと確実な方法は、彼の新しいタイヤを活用してすぐにルクレールを抜き、ルクレールは他のドライバーと戦って、サインツを解放することだと指摘した。チームはこれを黙認し、サインツが優勝した。ルクレールはハミルトンとセルジオ・ペレスを相手に鬼のようにバトルをしたが、最終的に4位に終わった。
チーム代表のマッティア・ビノットは、チームの選択を弁護した。
「我々が下した判断は正しかった。毎回、適切だった。セーフティカー出動中にピットインするべきだったというのが、唯一の疑問点かもしれない。(シャルルを)ピットインさせれば、サインツが走り続けただろうし、ソフトタイヤに交換して4位になっていただろう」
「その一方で、彼は順位を取り戻すことができただろうか? わからない。後知恵で、もっと違うことができたはずだと言うのは簡単なことだ。今回も、我々が余裕でレースを先導しているとき、間違ったタイミングでセーフティカーが出動した」

後続のサインツ、ハミルトン、ペレスがソフトタイヤに交換したので、ハードタイヤのルクレールは、リスタートで苦戦した。
「リスタートはとても難しくなるとわかっていた。ソフトタイヤに交換した後続のマシンは、とても攻撃的だったので、彼にとってはとても難しかったはずだ。我々は(カルロスを)信じて、チームのために、そしてもちろん彼自身のために全力を尽くしてもらうしかなかった」
「(カルロスは)議論することなく、順位を入れ替える数周前で証明したと思う。最初のピットストップでさえ、シャルルとは違い、何の議論もなかった。なぜなら彼はチームを信頼しているからだ。それが彼のやりかただ。だからとても嬉しい。彼は最善を尽くしたし、おそらくシャルルにレースを譲るつもりはなかったのだろう。彼はフェラーリの優勝のため、できる限りのことをしたのだと思う」
-Source: The Official Formula 1 Website
2022年F1イギリスGPコラムとチーム分析