F1レース解説:メルセデスがどうやって「操縦不能」なマシンをカナダの表彰台に立たせたのか?

モントリオールの金曜日、ひどく飛び跳ね、上下動(バウンド)していたメルセデスに何が起きたのだろう? どのようにして、土曜日と日曜日に安定した文明的な走りができるようになったのだろう? そのおかげで、ルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセルは3位と4位という上位でフィニッシュした。このノートルダム島でのレースをマーク・ヒューズが解説する。

セットアップ

ハミルトンは金曜日、ロングランさえ完了しなかった。彼は、別の実験的なセットアップを試したが、マシンはひどかったのだ。ラッセルには従来のセットアップを継続させ、チームは彼の経験を利用して状況を判断していた。

両方のセットアップから得られたデータをまとめ、チームはリアの車高を高くし、上下動を緩和するためにサスペンションを柔らかくした。ラッセルは金曜日のメルセデスW13に不満を抱いてはいなかったが、それでも修正したセットアップは改善したと感じていた。ただし、画期的な何かは見出せなかった。

彼は「ポーポイズ現象(ポーポイジング)はそれほどひどくなかった」と述べた。

「それでもバクーのときのように、地面に激しく叩きつけられている。ただ、低速というサーキットの特徴のせいで、それほど極端ではない。でも全体的に固有の問題は、解決にはほど遠い」

「車高を上げも下げても、パフォーマンスは改善もしなければ悪化もしない。そして硬さや底つきはあまり変わらない。車高を上げても違う影響がある。車高を下げても違う影響がある。理解するには本当に厄介な状況だ」

サイドバイサイド:カナダのレーススタート時のハミルトンとマグヌッセンのバトル、これでマグヌッセンはフロントウィングにダメージを負った:2022年F1カナダGP
サイドバイサイド:カナダのレーススタート時のハミルトンとマグヌッセンのバトル、これでマグヌッセンはフロントウィングにダメージを負った。

ハミルトンは「セットアップが決まれば、本当にポテンシャルはある」と述べた。

「今年はそれが一番難しいことだと思う。セットアップの最適化を本当に試している。このマシンの作動範囲は、これまで経験したどのマシンよりもかなり狭い」

「(金曜日に)ふたつの違う方向性を試してみた。僕の試した方向性はひどかった。だからデータをすべて照合し、セットアップを大幅に変更した。すると今日はとてもよくなった。予想通りだったので、それもよかった。レース距離をフルで走ると、マシンについて、自分とマシンとの関係について、データについて、いろいろ多くのことがわかるものだ。だから今日はたくさんの収穫があった」

予選はウェット、レースはドライになるとわかっていたので、メルセデスはふたりのリア・ウィングの選択を分けた。ラッセルは、予選のために大きなリア・ウィングを搭載した。ストレートラインの速度が遅いので、ドライのレースでは苦労しそうだとわかっていた。ハミルトンは、予選では遅いがレースでは速いと想定してウィングを選んだ。

実際、ラッセルは大胆にもQ3の終わりにドライ・ラインが現れ始めると、スリックタイヤを使うことを試みたが失敗し、ハミルトンよりも4つ下位からスタートすることになった。

開幕戦のバーレーン以来となる表彰台に立ったルイス・ハミルトン。これまでよりもメルセデスW13に満足しているように見えた:2022年F1カナダGP
開幕戦のバーレーン以来となる表彰台に立ったルイス・ハミルトン。これまでよりもメルセデスW13に満足しているように見えた。



これはラッセルにとってまずい事態だった。好材料は、日曜日、大きなウィングで予想されるデメリットがなかったことだった。バックストレートとピットストレートでの追い風が強かったので、あまり厳しくならずにすんだのだ。また、偶然ラッセルは追い抜こうとしたり、抜かれるのを防御しようとしたりする立場にはならなかったことも幸いした。彼は、不都合なくラップタイムとタイヤのメリットを受けることができた。

ラッセルは「トラックのグリップは予想よりも大きかった」と述べた。

「少しリスクを冒し、昨日の雨の後、トラックはリセットされ、劣化が激しくなるので、大きいウィングの方がよいと考えた。しかし風向きが変わったので、今日はグリップが本当に大きかった」

サーキットの違い

ふたつのトラックの要求が似ているとはいえ、マシンのパフォーマンスは前戦バクーよりもはるかに良かった。

メルセデスは、このパフォーマンスに違いをもたらす要因はふたつあると考えている。ひとつ目は、W13がラップタイムの大半を失っていたバクーのターン13/14/15のような高速で長時間に及ぶコーナーがないことだ。

ジョージ・ラッセルは8番スタートから4位でチェッカーフラッグを受けた:2022年F1カナダGP
ジョージ・ラッセルは8番スタートから4位でチェッカーフラッグを受けた。

しかし、このマシンは高速で長時間のコーナーが多数あるトラック、バルセロナでも非常によいパフォーマンスを発揮した。しかし、バルセロナはバクーとは異なり、路面が滑らかである。モントリオールは滑らかなタルマック舗装の新しいセクションがいくつかあり、マシンはその部分でうまく反応しているように見えたのは注目に値する。

どのくらい速かったのか?

スティントの終盤になると、ハミルトンとラッセルは、首位争いをしていたマックス・フェルスタッペンのレッドブルとカルロス・サインツのフェラーリのタイムに対し、コンマ数秒以内のタイムを記録することができた。

しかし、これは誤解を招く光景だった。最終的なペース差は、1周当たり約0.8秒のままだったが、この日はタイヤ劣化が激しく、フェルスタッペンとサインツが互いを激しいペースで走らせていたので、メルセデスのタイヤのパフォーマンスの方がよかったのだ。ハミルトンとラッセルは、ホイール・トゥ・ホイールのバトルには参戦しておらず、最も効率的なペースで自分たちのレースをすることができた。一方フェルスタッペンとサインツは、ひたすら相手より前に出ようとしていた。

ラッセルは「最後は、僕らのレースペースは、今シーズンで一番接近していた」と述べた。

「だからポジティブに受け止めるつもりだ。しかし、本来のパフォーマンスは、望んでいるところからは、まだほど遠い」

-Source: The Official Formula 1 Website


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