2021年シーズン前半をライター7名が語る:最大の衝撃、トップ3ドライバー、そして大胆な予測

2021年シーズンの前半はハラハラドキドキのバーレーン、イモラやアゼルバイジャンでの見せ場、シルバーストーンでのフェルスタッペンの失意、そして混沌としたハンガリーなど、忘れがたいものになった。今回は、殿堂入りしたF1ジャーナリストのデビッド・トレメイン、F1デジタルプレゼンターのウィル・バクストン、F1.comのシニアライターのローレンス・バレットなど豪華なメンバーが登場し、すべてを解き明かす。

2021年これまでで最も衝撃的だったこと、最も楽しかったグランプリ、そしてシーズン後半で楽しみにしていることなど、ライターたちの意見を聞いてみよう...

2021年これまでのトップ3ドライバーは?

マーク・ヒューズ(特別寄稿者):フェルスタッペン、ハミルトン、ノリス。最高のピークは特にバーレーンとポルトガルのハミルトンだったと思う。やっとハミルトンに対抗できるマシンを得て、いつものように素晴らしいフェルスタッペンよりも、ハミルトンはミスが多かった。ノリスは遅いマシンで、彼らに非常に近いレベルの走りをしており、チャンピオンシップでは2台目のメルセデスとレッドブルのドライバー2人よりも上位になっている。

デビッド・トレメイン(殿堂入りF1ジャーナリスト):マックス・フェルスタッペン、ルイス・ハミルトン、ランド・ノリス。OK、最初のふたりは、それぞれ5勝と4勝しているので当然だが、ランドは2021年に本領を発揮して、ダニエル・リチャルドのようなスターを打ちのめし続け、上位チームのナンバー2ドライバーであるヴァルテリ・ボタスとセルジオ・ペレスを狼狽させている。

ウィル・バクストン(F1デジタルプレゼンター):他のドライバーよりも頭ひとつ抜け出ているドライバーがいる。それはランド・ノリスだ。今シーズン、彼が犯したミスはひとつも思い出せない。オーストリアの最終コーナーで小さな横滑りをして、そのせいでポール・ポジションを逃してしまったことを除けば。チャンピオンシップの上位ふたりにもついていない日やミスがあったが、ランドは10点満点中10点という堅実さだ。

クリス・メドランド(F1ジャーナリスト):ランド・ノリス、シャルル・ルクレール、ピエール・ガスリー。上位のふたりのうちひとりを選ばないのは少し奇妙かもしれないが、わたしが選んだ3人は非常に安定しているし、今はふさわしいマシンに乗っていなくとも、トップレベルのドライバーであることを証明していると感じている。

ローレンス・バレット(F1.com シニアスタッフライター):ランド・ノリス、マックス・フェルスタッペン、ルイス・ハミルトン、この順で。ノリスは今年一人前になり、ダニエル・リチャルドが苦労するなか、楽しみながら表彰台に立っている。フェルスタッペンはタイトル争いができるマシンを最大限活用し、初タイトルを獲得するためにあらゆるチャンスをつくっている。これがハミルトンの能力を最大限に引き出している。ハミルトンはこれまで以上に力を発揮しなければならないが、自身に余力があることを見出している。

グレッグ・スチュワート(F1.com スタッフライター):マックス・フェルスタッペン、ランド・ノリス、ルイス・ハミルトン。

サマース・カナル(F1.com スタッフライター):ランド・ノリス、マックス・フェルスタッペン、カルロス・サインツ。

ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)
ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)

シーズン前半の最大の衝撃は?

サマース・カナル:レッドブルがチャンピオンシップ争いの口火を切ったやり方と、シーズン前の期待を本当のペースに変えた方法。

マーク・ヒューズ:ダニエル・リチャルドの苦戦ということになるだろう。彼はとても素晴らしいドライバーだが、かなり変わった特徴があり、ノリスが自然になじんでいるマクラーレンのマシンとの相性がよくない。

デビッド・トレメイン:難しい質問ではないよね? ハンガリーでアルピーヌのエステバン・オコンが優勝したことだ。彼は予選で、評価の高いチームメイト、フェルナンド・アロンソより上位の8位になったが、それでも最初のスタート前に誰もこのような結果は予想できなかった。

ウィル・バクストン:もちろん最大の衝撃(ショック)はエステバン・オコンの優勝だ。しかし、混乱したハンガリーGPを方程式から取り除けば、最大のショックは、マックスとルイスの対決が10戦目まで起きなかったことだったと思う。ふたりともシーズン中、ライバルに一歩も譲るつもりはないので、ふたりが絡むのは時間の問題だった。対決するまで、シーズンのほぼ半分までかかったことは意外だった。

クリス・メドランド:ハンガリーでのオコンの優勝。一番最近の出来事だとわかっているが、レースの展開だけでなく、オコンが優勝するとはだれが予想できただろうか? 彼は好調だったが、厳しい時期を過ごしてきたので、マクラーレンかフェラーリが優勝をさらう可能性が高いとみんな思っていたはずだ。

ローレンス・バレット:フェラーリがとても印象的なこと。モナコとバクーでのポール・ポジションは意外だった。モナコでは純粋なペースで優勝争いに加わったし、シルバーストンでも優勝しそうだった。そしてフランスで不可解なタイヤ問題に見舞われても、予想に反して、解決するのにそれほど時間がかからなかった。これは、フェラーリチームが最高レベルで運営されている証拠だ。

グレッグ・スチュワート:正直、バーレーンGPでルイス・ハミルトンが優勝したのを見てかなり驚いた。というのも、2週間前同じトラックで、彼のメルセデスW12は完全なダメマシンのように見えたからだ。メルセデスの素晴らしい逆転だった。

シャルル・ルクレール(フェラーリ)
シャルル・ルクレール(フェラーリ)

一番楽しんだレースは?

グレッグ・スチュワート:ハンガリーGPはすべてが少しずつ含まれていたと思う。1周目のカオス、めちゃくちゃな順位、感動的な初優勝者、ハミルトンひとりだけがグリッドに残った奇妙なリスタート、遅いウィリアムズの初ポイント獲得。

サマース・カナル:ハンガリー。エステバン・オコンの優勝に涙が込み上げてきたし、アロンソ対ハミルトンのバトルは歴史に残るものだった。ミック・シューマッハでさえ、マックス・フェルスタッペンと対決して主役を演じた。

マーク・ヒューズ:ハンガリー。一番最近のレースだったからだけではない。実際はあまり意味がなかったにもかかわらず、一番楽しかったし、エステバン・オコンのおとぎ話のような初優勝に心がなごんだ。

2021年F1ハンガリーGP スタート時の多重クラッシュ
2021年F1ハンガリーGP スタート時の多重クラッシュ

デビッド・トレメイン:ハンガリー。スタート前からすごい緊張感があり、ホイールが回転する前から身を乗り出していた。そして、雨がもたらした予測不可能性、最初のコーナーでのドラマ、見慣れない順位を走る見慣れない顔ぶれ、ダメージを受けたタイトル優勝候補のひとり、最下位から追い上げるもうひとりのタイトル優勝候補、4度のチャンピオンから大きなプレッシャーを受けながら初優勝した若者。素晴らしい!

ウィル・バクストン:シルバーストンの週末全体が本当に楽しかった。新しい方式は、本当にスリル満点で、それが初めての満員の観客前で繰り広げられたことはさらに素晴らしかった。とても楽しめる週末だった。

クリス・メドランド:ハンガリーと言わざるを得ないが、他のよいレースの中でのベストだ。エキサイティングでドラマティックなレースがたくさんあり、ブダペストを上回るレースがあったかどうか判断するには振り返る必要があった。しかしこれはよい兆候だ。でもやはり、論争、意外な優勝者、見事なレーシング、ハンガリーにはすべてがあった。

ローレンス・バレット:エミリア・ロマーニャGP。フェルスタッペンとハミルトンがウェット/ドライのコンディションで再びバトルを展開し、フェルスタッペンが優勝した。ハミルトンはコースアウトしたあと、見事な巻き返しを見せた。ボタスとラッセルが高速で衝突した。このレースにはすべてがあった。

ハミルトン、フェルスタッペンとのイモラのアクション満載のホイール・トゥ・ホイールをレース後見ている:2021年F1エミリア・ロマーニャGP
ハミルトン、フェルスタッペンとのイモラのアクション満載のホイール・トゥ・ホイールをレース後見ている:2021年F1エミリア・ロマーニャGP

個人のベスト・パフォーマンスは?

ローレンス・バレット:ハンガリーで初優勝を果たしたエステバン・オコン。ハミルトンやフェルスタッペンなどは簡単に優勝しているように見えるが、そんなことはない。これまで優勝争いをした経験がなかったにもかかわらず、オコンは非常に大きなプレッシャーの中でもミスを犯さなかった。チームメイトのフェルナンド・アロンソが得意としたように、調子を落とした後に自分を取り戻したので、さらに印象的だった。3年契約はアルピーヌの見事な戦略のように見える。

グレッグ・スチュワート:シルバーストンで予選8位になったジョージ・ラッセルを選びたい。鳥肌が立った。フェルスタッペンのフランスGP優勝、ハミルトンのスペインGP優勝もかなりよかった。ああ、そしてシャルル・ルクレールのシルバーストンでの優勝まであと一歩。

サマース・カナル:フェルスタッペンのオーストリア優勝は、今シーズン最も確実な優勝で、彼はF1キャリア初のグランドスラムを達成した。

マーク・ヒューズ:バーレーンでのハミルトンとオーストリア2戦目(オーストリアGP)のノリス、甲乙つけ難い。ハミルトンは、攻撃的に走って首位を奪い、その後はタイヤを温存した。ノリスは、マクラーレンでフェルスタッペンのレッドブルとポール・ポジションを争った。

デビッド・トレメイン:マックスとルイス、そしてシャルル・ルクレールはいくつか見せ場をつくった。しかしオーストリアでのランド・ノリスを選びたい。彼は2012年ブラジル以降初めてマクラーレンをフロント・ローに並べ、長い間ルイスの前を走ったが、セルジオ・ペレスがターン4で失敗に終わった動きを試みた後、論争となった判定によって2位を失った。

ウィル・バクストン:オーストリアでのランドの予選走行は、過去数年間で最も素晴らしいアタックのひとつだが、シルバーストンとハンガリーにおけるルイス・ハミルトンの下位からの追い上げは、見ていて本当に特別だった。しかし、わたしが注目したのは、ハミルトンのかつてのライバル、フェルナンド・アロンソのシルバーストーンとハンガリーでのパフォーマンスだった。アロンソは、15年前のチャンピオンのように機転を利かせ、本来いるべきではない場所で走っているマシンで戦った。

クリス・メドランド:モナコのカルロス・サインツと甲乙つけがたいが、イモラでのノリスを選びたい。彼は週末全体で小さなミスをひとつ犯した。つまり最後のQ3アタックで膨らみ、2位ではなく7位になったのだ。しかし、そのあとハミルトンを苦しめ、表彰台に立ったので、とてもよかった。

ランド・ノリス(マクラーレン)
ランド・ノリス(マクラーレン)

夏休みのあと、一番楽しみにしていることは?

クリス・メドランド:同じようなレースが続くこと! ザントフォールトは本当に面白くなるだろう。でも正直なところ、タイトル争いをしているふたりに大きなプレッシャーがかかっているだけではなく、マックスとルイスは今年すでに何度か経験しているように、実際に接戦を演じるレースがいくつか生まれる可能性がある。

ローレンス・バレット:イギリスGPでの衝突のあとに、フェルスタッペンとハミルトンが再びホイール・トゥ・ホイールで争うこと。8コーナーにわたるふたりのバトルは伝説になった。これをもっと見たいものだ。そして、ふたりとも否定しているが、あの衝突によって互いに対する戦い方が変わるのかどうか、興味がある。

グレッグ・スチュワート:新しいレースはいつもエキサイティングなので、サウジアラビアGPが楽しみだ。ジェッダのトラックはすごそうだし、ザントフォールトも復活する。ドライバー的には、シーズン後半はダニエル・リチャルドがマクラーレンMCL35Mと絆を深め、我々全員が知っている彼のパフォーマンスを見せてほしいものだ。

サマース・カナル:レッドブルがせめて、失うはずではなかったポイントを取り返すのを見ること。ドラマ好きのわたしとしては、メルセデスとのバトルで一発触発の状況をもっと見たい。

マーク・ヒューズ:泣いているF3ドライバーのルーベンス・バリチェロにアイスクリームを買ってあげて以来、初めてザントフォールトを訪れ、マックスの時代の雰囲気を感じること。

デビッド・トレメイン:誰もが少し距離を置く機会を得たことで、メルセデスとレッドブルの対立が縮小されることを除けば、COVIDの影響を受けたシーズンの残りに向けて、皆が準備を整えるなか、リセットが楽しみだ。今年の前半は、ドラマ的でありながらトラウマ的でもあったが、これはF1にとって素晴らしいことだ。幸いなことに、この状況が大きく変わることはないだろう。

ウィル・バクストン:チャンピオンシップの上位から下位までバトルがあり、その成り行きにワクワクしている。もちろんチャンピオンシップ争いもあるが、フェラーリ対マクラーレン、下位3チームのバトルも同じように興味をそそる。

マクラーレンとフェラーリは163点の同点で夏休みに入った:2021年F1
マクラーレンとフェラーリは163点の同点で夏休みに入った。

今年残りについて、大胆な予想をひとつしてください...

ウィル・バクストン:ヴァルテリ・ボタスが年末F1を離れてラリーに移籍する。

クリス・メドランド:メルセデスあるいはレッドブル以外のチームがレースに優勝するのは、ハンガリーのアルピーヌ優勝だけではないだろう。実際、レッドブルやメルセデスのドライバーがひとりもいない表彰台が実現する可能性もあると思うが、そのためにはとてつもないバトルになるだろう。

ローレンス・バレット:異例のグランプリが必要になるが、わたしは、ランド・ノリスがレース初優勝を果たす、今年最高のレースが生まれると予想する。

ボタスは2022年、どのチームで走っているのか、そしてノリスは今シーズン、優勝できるのか
ボタスは2022年、どこに行き着くのか、そしてノリスは今シーズン、優勝できるのか。

グレッグ・スチュワート:今年初めに、メルセデス、レッドブル、アルピーヌ、アストンマーティン、マクラーレンの5チームがレース優勝をすると予想した。これまで3チームが優勝したので、アストンマーティンとマクラーレンが1回ずつ優勝すると言った方がよいだろう。

サマース・カナル:ここでは、何か突拍子もないことを考えてみよう...。キミ・ライコネンがF1からの引退を表明し、米国に目を向ける。(わたしにとっては残念なことだが)NASCARへの参戦でなく、インディカーにカモフラージュ参戦する。しかし、ダニエル・リチャルドがストックカーに乗るには2022年まで待たなければならないだろう...。

マーク・ヒューズ:カルロス・サインツがレースに優勝する。彼はフェラーリにとって素晴らしい資産だ。彼を選んだのは、フェラーリがとても賢明だったから、あるいはとても幸運だったからだ。わたしは前者だと思いたい。

デビッド・トレメイン:オーケー、始めるぞ。ランドがマクラーレンの183回目のグランプリ優勝を果たす。ハンガリーでエステバン・オコンとアルピーヌが必要としたような幸運は不要だと思う。おそらくマックスとルイスのミスが必要かもしれない、たぶん。ハンガリーでは、彼の15戦連続ポイント(チームの最長記録)が途切れたが、若き英国人ドライバーは好調を維持するだろう。

-Source: The Official Formula 1 Website