


2023年シーズン最初のコラムで、スカイ・スポーツF1のマーティン・ブランドルがバーレーンGPを振り返り、レッドブルが破壊的なパフォーマンス、アストンマーティンの「やる気にあふれた」週末、マシンコンセプトについて「敗北を受け入れた」メルセデスの不振について語る。
マーティン・ブランドルのF1コラム:バーレーンGP
2023年シーズンの最初のレース後コラムで、スカイ・スポーツF1のマーティン・ブランドルは、レッドブルの圧倒的なスタート、アストンマーティンの快進撃を振り返り、フェラーリとメルセデスが直面する問題について考える。
F1が始まった。タイトル防衛のために完璧なスタートを切ったレッドブルとマックス・フェルスタッペンにおめでとうと言いたい。
レッドブルが、フロントローを独占し、そのまま1-2フィニッシュを果たしたのは2013年のアブダビ以来だった。つまり基本的には、2014年に始まったハイブリッド・パワーユニット時代では初めてということになる。彼らが昨年も相対的に優勢だったことを考えると、本当に意外である。
レース後、数人の関係者に聞いたところ、レッドブルは見た目ほど順風満帆ではなかったようだ。両マシンともパルクフェルメで新しいオイルインレットパイプに交換し、レースでもトランスミッションの危機的な問題に対応していた。
しかし、どちらにしてもフェルスタッペンは先頭でクルージングしており、必要であればあと10秒はさらに差をつけることができたと考えるのは難しいことではない。おそらくそれ以上かもしれない。
彼らは明らかに、ハイパワーモードのエネルギーを別の日に使うために、モーターの回転数も下げていただろうし、作戦的にどうであれ、彼は自由自在にレースを制することができたはずだ。そして彼らは、他のチームにはできないソフト/ソフト/ハードというタイヤの組み合わせを使うことができた。
破壊的なパフォーマンスだった。メルセデス2台とアストンマーティン2台は、レースを通じて激しく戦い、フェラーリのカルロス・サインツに追いつこうとしていた。それで、ルイス・ハミルトンはレース終了時に、マックスから50秒も遅れていたし、ジョージ・ラッセルはさらに遅れていた。予選では1周あたり0.6秒差だったが、レースは1周あたり1秒以上の差があったので、衝撃的である。
ジョージはレース後、レッドブルは23戦すべてで勝つだろうと述べた。これは感情的かつ失望の反応だったかもしれないが、これまで見てきた証拠に基づけば、レッドブル全勝の可能性は否定できないだろう。
モンツァであろうがモナコであろうが、素晴らしいマシンは素晴らしいマシンだ。特に、冷静で楽々と速く、そして経験を積んだフェルスタッペンがハンドルを握れば、彼らに勝つのはかなり難しいだろう。
レッドブルの限界は、風洞やCFDの時間に対する「コストキャップ違反ペナルティ」を考えると、最初から素晴らしいマシンがあればそれほど問題ではない。レッドブルが不利になる唯一のシナリオは、問題に対応して遅れを取り戻すことだが、明らかにそうではない。しかし、信頼性、ドライバーのミス、セーフティカー、あるいは雨によって、どこかで不安定になることは避けられない。

期待外れのスタートでもフェラーリにまだ希望はある
フェラーリにとっては期待外れの週末だった。3位を走行していたシャルル・ルクレールが、フェラーリのパワーユニットの電気系統に問題が発生し、リタイヤしたのだ。
ルクレールは、レース前にマシンのエネルギー貯蔵(バッテリーパック)を変更していた。バッテリーパックはシーズン中に2回交換したあとは、ペナルティが発生することを考えると、これは意外だった。
レッドブルに比べ、レースペースが全般的に不足していることについて、フェラーリはレース向けのマシンのセットアップが原因だと述べているが、バーレーンでの過酷な3日間のテスト、そして3日間のGP週末を経て、レースでセットアップが最適に近づけられなかったというのは、やや奇妙に感じる。
カルロス・サインツは、イベントを通じてやや苦戦していたので、来週のサウジアラビアでそれを修正するのを楽しみにしている。フェラーリは、現段階ではまだレッドブルに最も近い挑戦者であるように見える。

絶好調のアロンソがアストンマーティンの週末を活気づける
アストンマーティンとそのドライバーであるフェルナンド・アロンソとランス・ストロールは称賛に値する。彼らは、サイド・バイ・サイドのアクションでレースを盛り上げた。彼らがいなければ、かなり退屈なレースになったことだろう。
フェルナンドは、最高に威勢がよく、アグレッシブで、抑えきれないほどの力を発揮し、強力な決意で最後の表彰台を自分のものにした。そして彼のタイヤは、彼の要求にどうにか耐えることができた。
フェルナンドが、(ターン10でルイスを見事に抜いた動きを含め)メルセデスの両マシンとカルロスのフェラーリを抜いた技術は素晴らしかった。彼は相手の後方に張り付き、どの方向に進もうが、堂々と自信を持って反対側を切り抜けていった。見ていて楽しかった。
ランスがグリッドに向かう時に経験したことは言うまでもなく、ワークス・メルセデスの1台より前でレースをフィニッシュしたことは、本当に際立っており、信じられないほどだった。彼のこれまでの成績について否定的に聞こえてほしくないが、手首とつま先を負傷して、シーズン前テストを欠席せざるを得なかったにもかかわらず、マシンに乗るという固い決意を見せたことで、私の予想をはるかに上回った。これこそ、わたしが見たいと思う闘志だ。
彼がジョージの前に出たとき、わたしはどこかのタイミングでランスは物理的にフェードアウトするものだと思っていたが、そうならないで6位を維持した。
オープニングラップのターン4でアストンマーティンの2台が接触したとき、もし違った展開になっていたらとは考えたくもない。フェルナンドは右リアがパンクし、ランスはフロントウィングを破損したかもしれない。どうしてサイドウォールがパンクしなかったのか、わたしにはわからない。フェルナンドはマシンから降りて「ランス、君は僕のヒーローだ」と言った。有難いことに、他の言葉を使わなくてもよかった。彼がレース中、自分に追突した相手がペナルティを受けたかどうか、無線で知りたがっているのを聞くのは面白かった…
アストンマーティンの今後の見通しについては、やはりよいマシンはどこでもうまく走るし、ドライバーに自信を与える。フェラーリは1周についてはアストンマーティンやメルセデスよりもやや速いかもしれないが、長いスティントになると、その差はほとんどない。
昨年のチャンピオンシップ順位が下位だったため、最新のルールでは、アストンマーティンは主な3つのライバルチームよりも、はるかに多い風洞開発時間を与えられている。すでによいパッケージだが、改善するべきところを知っているのなら、シーズン中盤までに、レッドブルの主要な挑戦者になっているかもしれない。
アストンマーティンは同じエンジン、ギアボックス、リアサスペンションを搭載し、同じ風洞を使っているので、メルセデスにとっては二重の痛手である。現時点で、レッドブルは人事異動により勢いを増し、アストンマーティンは、彼らの設計理念に極めて忠実だった。これが、負けず嫌いの人たちの非常に小さいグループの政治である。

メルセデスに漂う緊張感
わたしには、メルセデスは2022年に間違った方向に進んでしまい、方向転換することを拒んでいるように思える。ルイスとトトでさえ、週末のどこかで失望を公に表明していた。いつものふたりなら、ブラックリーとブリックスワースのチームを褒めたたえるだけなのだが。チームは今ピリピリしているに違いない。クオリティはあるのだから、あとは頭を冷やすために方向と酸素が必要なだけだ。
「ゼロサイドポッドコンセプト」という言葉は、彼らが二度と聞きたくない流行語だろう。しかし、方向性を変えるには、空力学に関する新しい理念を理解する前に、まず一歩後退する必要があるというのが、チームの信条だった。ジョージ・ラッセルは、長期的な利益のためならその痛みも覚悟していると、すでに語っている。
彼らは、昨シーズン終盤、メルセデスを勝てるマシンに仕上げたが、もう1年同じようにしたいという様子はない。
ハイブリッド時代の初期、彼らは圧倒的に強いパワーユニットを持っていたが、今はもうそれがない。パワーユニットを改善する余地は失われた。またメルセデスは、アンディ・カウエル、ジェームス・ボウルズなどの重要な人材を失った。ジェイムズ・アリソンは現在、違うことに専念している。残された人材は素晴らしいものの、まだまとまっていない。
そして、F1マシンの理念や構造を変える前に、何がしたいのか、どこに向かおうとしているのかを理解する必要がある。特に、コストキャップ時代の23戦もあるシーズンでは、これは特に難しい。

強がるノリス、サージェントはデビュー戦で活躍
マクラーレンは、スピードでも信頼性でも、ひどく期待外れの週末を過ごしたようだ。ランド・ノリスは完走した17台のマシン中最下位、オスカー・ピアストリはF1デビュー戦でリタイヤした。
ランドは平静を装っていたが、最終的に6回のピットストップを強いられた空気圧漏れの問題は、1周目から始まっていたと、レース後に話してくれた。
他に何か壊れていないかを確認し、レース距離を経験するためにマシンを走らせたかったのだろう。そうでなければエンジン走行距離の無駄遣いのように見えた。
しかし、ひどい日曜日という点では、おそらくエステバン・オコンもいい勝負だった。彼は、レース中にペナルティをタイ記録となる3回も受けたからだ。まず、スタート信号が消える前、マシンをグリッドボックスに正確に止めなかったことから始まった。
ペナルティを消化しようとして、ピットレーン速度超過でペナルティを受けるのは、悪夢だ。彼とアルピーヌにとっては忘れてしまいたいレースだった。
明るい話としては、ローガン・サージェントは印象的なスタートを切った。2023年の3人のF1ルーキーの中で、最も注目されなかったにもかかわらず、ウィリアムズのチームメイト、アレックス・アルボンからわずか10秒遅れでフィニッシュし、デビュー戦で12位となった。
よいレースをして10位でフィニッシュしたアルボンにこれほど近いのは、素晴らしい走りだった。ウィリアムズの両ドライバーは、トラブルに巻き込まれることなく、激しく攻め、新しいチーム代表ジェームス・ボウルズに報いた。
次はサウジアラビアだ。サーキットのレイアウトがかなり異なるため、他チームがレッドブルに挑戦できるだろう。レッドブルは予測可能なシーズンを切望しているが、我々は彼らにずっと楽しんでほしくはない。
-Source: Sky Sports
2023年F1バーレーンGPコラムとチーム分析