
スカイ・スポーツF1のマーティン・ブランドルが、初のマイアミGPについて専門的意見を語る。マイアミGPでは、マックス・フェルスタッペンの勢いが続き、フェラーリはレッドブルのトップスピードについていけなかった。またブランドルは、メルセデスは「最も懸念される」週末に苦しんだと述べ、インシデントとマイアミ全体を振り返る。



94分間のレースを終えた後、非常に健康で完璧な準備をしたF1ドライバーが、これほどまでにボロボロになるのを見るのは久しぶりだった。
わたしは、レース後の不愉快な感覚をよく知っている。からだの芯がとても熱くなり、その熱が沸き上がり続け、体液が大量に不足し、あらゆる臓器、筋肉、腱が必須な成分を激しく要求するのだ。
痛みが増し、アドレナリンが薄れていく中で、自分のからだから逃げることができない。レース後、バギーに乗ったマックス・フェルスタッペンにカメラがズームインすると、彼が横になって転げまわり、うめき声のひとつでも出したいと思っているのがわかった。
シンガポールのような湿度の中で2時間レースをすれば、ドライバーはかなりくたくたになる。しかしトラックのグリップ・レベルと低いタイヤ劣化のため、ペースが過酷になるので、厳しかった。また市街地サーキットで壁が近いため、風通しが悪く、エアロダイナミシストは、ドライバーに無駄な空気やドラッグ(抵抗)を与えないようにしたいので、コックピット内部は50度以上になる。一方、ドライバーは何層もの衣服、グローブ、ヘルメット、ブーツ、バラクラバに包まれている。
FIAは最近、ドライバーは宝石や腕時計を着用しないように、そして耐火性のアンダーパンツあるいは耐火性レギンスだけを着用するよう求めている。FIAはおそらく、これを安全性を高めるための「手っ取り早い解決法」と見なしているのだろう。正直なところ、アンダーパンツが燃えたら、問題はさらに大きくなるし、F1マシンに乗り込むときは、どれだけ大きなリスクを負う覚悟があるのか、それまでにかなりのメンタル・マネジメントをしているはずだ。
レース終盤に見られた多くの不器用な接触は、ドライバーのオーバーヒートが原因だと思う。オーバーヒートすると頭がクラクラして、判断力がやや鈍るのだ。

マイアミのF1デビューは大成功
マイアミのイベントチームとF1は、制約と駐車場という退屈なキャンバスを考えると、トラックに関して本当に素晴らしい仕事をしたと思う。チャンピオンシップが決まる重要なレース以外で、これほど盛り上がって興奮したグランプリは経験したことがなかった。
トラックの路面には大きな負荷がかかり、ターン17はパッチワークのキルトのように見えたが、何度も清掃されたおかげもあり、有難いことに20台の最新F1マシンの牽引力に耐えることができた。
ルイス・ハミルトンやその他のドライバーは、ターン14/15のタイトなシケインはやりすぎだと思っていたが、テレビ的には気に入ったし、マシンとドライバーの差別化要因だった。
エステバン・オコンとカルロス・サインツが、自身とチームの代償を支払ったターン11の外壁は、かなり大きな保護が必要であることは間違いない。
ドライバーが徒歩、自転車、スクーターでトラックを1周すれば、問題のある場所は赤信号が点滅しているかのようにすぐに見えるはずなので、なぜこのような問題が起きるのか、わたしには全く理解できない。

フェルスタッペンとレッドブルの猛攻が続く、ノリスのクラッシュ
今回もシャルル・ルクレールとフェラーリが最速の組み合わせとなり、ポール・ポジションを獲得したが、DRSリアウイングの有無にかかわらず、レッドブルの圧倒的な直線スピードにフェラーリは対応できなかった。高速でのドラッグを小さくすることでこれを修正しない限り、今年はレッドブルのワールドチャンピオンシップになるだろう。
今回もフェルスタッペンとルクレールは、非常に印象的で成熟した走りをしたが、フェラーリのドライバーはもはや、バーレーンでルクレールがフェルスタッペンを楽々と抜いたようにはオーバーテイクできない。そのため、マックスとチームメイトのセルジオ・ペレスは、タイヤに気を配りながら、後半の比較的リスクの少ないストレートで仕掛けることができると知りながら、長期戦を戦うという安全地帯にいた。
フェラーリのふたりが今シーズン5戦中3回目の表彰台に立ち、カルロス・サインツは彼の自信にとって重要な週末を過ごした。過去2戦は1周も走れず、フリー走行でも大きなクラッシュを喫していた。しかし、彼は落ち着いており、エンジンに問題を抱えていたとはいえ、ミディアム・コンパウンドの新しいタイヤを履いてたペレスをうまく抑え込んだ。
40周目、マシンにダメージを受けたピエール・ガスリーをランド・ノリスが追い抜こうとして、トラックの比較的狭い場所でぶつかり、VSC(バーチャル・セーフティカー)、フル・セーフティカーが出動したときに、フェラーリは少なくとも1台のマシンをピットインさせるべきだったと思ったに違いない。バーチャル・セーフティカーが宣言されたとき、フェルスタッペンはちょうどラインを通過したところだった。

ノリスのクラッシュは、マイアミでのマクラーレンの週末を総括した。チームは前回のイモラとは違い、全く強くなかった。ノリスがリタイヤし、ダニエル・リチャルドはペナルティを受けて13位に終わった。彼らにとっては忘れてしまいたいレースだった。

メルセデスのこれまでで「最も懸念される週末」?
メルセデスはまたもや3位のチームだったが、ジョージ・ラッセルが金曜日に最速だったが、その後はペースが上がらず、チームもその理由がわからないという、いろいろな意味で最も懸念される週末だったと思う。以前、彼らは「ディーバ 」マシンについて語ったことがあるが、このマシンはセットアップの範囲が非常に不安定という「謎」である。どこかによいマシンがあるはずなのに、それがうまく隠されている。
「マシンは、セットアップがものすごく難しい。トト(トト・ヴォルフ)は、僕らのマシンの1台はディーバ(歌姫)だったが、これはディーバのモンスターだと言っていた」
ラッセルがセーフティカーでラッキーだったと言うのは簡単だが、彼はスタートからハード・コンパウンドタイヤを管理し、少し後退しても冷静さを保ち、他のマシンが遅れ始めたときにロングランのペースを上げ、そしてコックピットから走り続けてセーフティカーを期待することを指示しなければならなかった。運を味方につけることもあるのだ。
ルイスは、今回もセーフティカーでは不運で、ガレージの彼の側は、過去数年間のような見事な戦略ではなく、迷いがあった。今は厳しい状況で、キャリアの大半を残している熱心なくジョージは、無線でのやり取りから判断すると、ルイスよりもうまく状況に対処しているようだ。もし、マシンがフェラーリやレッドブルに匹敵していれば、メルセデスがグリッド上で最高のドライバーコンビを擁していると主張できただろう。

フェルナンド・アロンソは荒れた不器用なレースをした。彼は他のマシンと2回接触し、その接触と近道をした件でペナルティを受け、ポイント圏外になった。アロンソは今シーズン、着実なスピードがありながら、開幕戦からわずか2ポイントしか獲得できず、多くのフラストレーションを抱えている。
その結果、ウィリアムズではアレックス・アルボンが9位に入り2ポイントを獲得、アストンマーティンでは、ピットレーンスタートのランス・ストロールがポイントを獲得した。ふたりとも週末を通してよい走りをしていた。

ハースのミック・シューマッハもよい走りをしていたが、師匠であるセバスチャン・ベッテルの側面にぶつかってしまった。レース後は気まずい会話が交わされたことだろう。
アルピーヌのエステバン・オコンは、新しいマシンで後方から追い上げ、見事8位入賞を果たした。2022年のマシンは追走しやすく、複数のDRSゾーンがあり、よい作戦やピットストップと忍耐力があれば、グリッドのどこからでも、あるいはピットレーンからでさえポイントを獲得できることを、彼はアストンマーティンとともに思い出させてくれる。
レース前のグリッドは非常に慌ただしかった。パオロ・バンケロ(バスケットボール選手)をパトリック・マホームズ(アメリカンフットボール選手)と間違えたことを心から謝りたい。
Martin Brundle is killing me man. That isn't Patrick Mahomes man! 🤣#SkyF1 #MiamiGP pic.twitter.com/oMyUaySjqe
— Jaja (@Jaja_Bred) May 8, 2022
-Source: Sky Sports
ブランドルはグリッドの混雑を「まるで東京駅かピカデリーサーカスみたいだ」とコメント
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