F1レース解説:サウジアラビアでフェルスタッペンはいかにしてタイヤの謎を解き明かして優勝したか

サウジアラビアGPでは、マックス・フェルスタッペンがシャルル・ルクレールとのスリリングな戦いを制して優勝した。セーフティカーのタイミングのせいで、ポールシッターで序盤のトップだったセルジオ・ペレスが無情にも勝利のチャンスを逃した。終盤のVSCのタイミングにより、ルクレールは、フェルスタッペンをDRS圏外に置くことができなくなった。フェルスタッペンはこれらのチャンスをそれぞれ生かし、フェラーリとレッドブルの抜きつ抜かれつの攻防のあと、最終的に勝利を手にした。このサウジのレースをマーク・ヒューズが解説する。

しかし、それぞれの重要な局面のひとつひとつは、タイヤの挙動によって左右されていた。

ミディアム・タイヤでのペース管理

ほぼ全員がミディアムタイヤのC3でレースをスタートした。ハードのC2に比べると、スティントでのパフォーマンスは劣るが(約6周でハードの方が速いタイヤになる)、初期パフォーマンスは高かった。ソフトのC4は、このレースには軟らかすぎるため、誰も使わなかった。ミディアムとハードの組み合わせなら、より速い1ストップ作戦が可能だった。

ペレスのレッドブルがポール・ポジションから先頭に立ち、ルクレール、フェルスタッペン、カルロス・サインツJr.のフェラーリがその後に続いた。ピットストップの際にタイヤのコンディションを保つことが重要なため、誰もこのタイヤで無理な走りをしようとはしなかった。いずれにせよ 上位陣は激しく攻めなかった。例外はアルピーヌのエステバン・オコンとフェルナンド・アロンソが、すぐに激しくバトルを始めた。しかしペレスは、ルクレールのアンダーカット範囲から確実に抜け出せるほど、十分に攻めることができなかった。

ペレスはレースの序盤をコントロールすることができた:2022年F1サウジアラビアGP
ペレスはレースの序盤をコントロールすることができた。

後続マシンとの差が広がり、ピットストップのウィンドウが開いた。フェラーリは、5位のラッセルにピットストップ分の差をつけていたので、15周目までにルクレールに2.2秒の差をつけていたぺレスにアンダーカットのプレッシャーをかけようとした。ペレスのタイヤが苦しくなり始めたので、ルクレールが差を縮めていた。

ルクレールは、その周回でペレスか自分のどちらかがピットインすると告げられていた。ピット入口でペレスが何をしようと、それの逆のことをしなければならないとわかっていた。レッドブルはペレスをピットインさせ、ルクレールはそのまま走り続けた。

このバトルがどう展開したか、我々は知ることができない。なぜなら、ペレスがピットインした直後にニコラス・ラティフィが事故を起こし、セーフティカーが出動したため、全員が次の周回でかなり少ない犠牲でピットインすることができたからだ。そのため、ルクレール、フェルスタッペン、サインツがトップ3になり、不運なペレスは4位に後退した。

ハード・タイヤで全力走行

上位陣が全員ハードタイヤに交換したことで、これまでとは全く異なるレースが展開された。このタイヤは、オーバーヒートすることなくドライバーが全力で攻めることができた。ペレスが最初のスティントで取り組んだように、ルクレールもリスタートの最初の2周でフェルスタッペンのDRSを回避する必要があった。リスタート後の最初の2周でフェルスタッペンのDRSを回避する必要があったが、DRS機能が有効だったので、ルクレールはフェルスタッペンより1.057秒前にフィニッシュ・ラインを通過した。

ルクレールはハードタイヤがまだ新しいうちにフェルスタッペンの手の内を見極めた:2022年F1サウジアラビアGP
ルクレールはハードタイヤがまだ新しいうちにフェルスタッペンの手の内を見極めた。

ルクレールとフェルスタッペンは全開でレースをし、ルクレールは3つのDRS検出ラインで1秒以内にフェルスタッペンが入らないよう、必死に頑張った。ふたりは最速ラップタイムを更新し合うが、ルクレールの勝利が確定したように見えた。フェラーリがレースをコントロールしているように見えたが、ふたりのドライバーは自分たちだけの対決を楽しんでいるようで、素晴らしいパフォーマンスだった。

第1スティントでは上位陣がミディアムタイヤで慎重なレースを展開したのに対し、第2スティントではハードタイヤで限界まで攻めるという昔ながらのレース展開になった。

レッドブル、タイヤのウォームアップが速い

アロンソとダニエル・リチャルドのマシンが減速し、VSC(バーチャル・セーフティカー)が発動したことで、またしてもレースの様相は一変した。そして、その中心にはタイヤ特性があった。

(ペースから約30秒遅い)VSCの速度で3周すると、タイヤが冷えた。ハード・コンパウンドのタイヤは、一度冷えるとなかなか温度が上がらない。細いトレッドからは分子の励起(れいき)が起こるほど十分な動きがなく、トレッドのグリップがあまりないため、大きな負荷がかからず、タイヤの芯が冷えてしまう。

フェルスタッペンは、ルクレールよりも古いタイヤで差を縮め、DRSを活用することができた:2022年F1サウジアラビアGP
フェルスタッペンは、ルクレールよりも古いタイヤで差を縮め、DRSを活用することができた。

しかし、レッドブルはフェラーリよりもうまくタイヤのスイッチを入れることができた。これは、レッドブルとフェラーリのドライバー4人全員が気づいていた。レッドブルは数コーナーでタイヤの温度を上げたが、フェラーリは1周の大半を費やした。この意味することは、ルクレールはフェルスタッペンをDRSゾーンから遠ざけておくことができなくなったということだ。

フェルスタッペンが最終的にDRSを使って最適な追い越しの方法を見い出したが、ルクレールのリアは何周も酷使され、パフォーマンスを失い始めていた。

結局、これで勝敗が決まった。

-Source: The Official Formula 1 Website



2022年F1サウジアラビアGP コラムとチーム分析