ルイス・ハミルトン、マックス・フェルスタッペン:2021年F1アブダビGP

Sky F1のマーティン・ブランドルは今シーズン最後のレース後コラムで、ドラマチックなタイトル決定戦の論点を分析し、マックス・フェルスタッペンがルイス・ハミルトンを賛否両論のある方法で破ったことを受け、窮地に陥ったF1には変化が必要だと語る。

初のF1ワールドチャンピオンシップで優勝したマックス・フェルスタッペン、おめでとう。スピード、策略、決断力、そして彼を支える素晴らしいチームのおかげで、わずか24歳にして22戦の激闘を制して手に入れた優勝だった。

そして、強力なメルセデスチームには、8年連続でコンストラクターズ・チャンピオンシップを獲得したことには「すごい、お見事」と言うしかない。

このコラムはお祝いの言葉から始めたかった。というのも、F1の70年以上の歴史の中で最も素晴らしく、エキサイティングなシーズンであったにもかかわらず、ひどく分裂したパドックやファンからの激しい非難と怒りに満ちた言葉が聞こえているからだ。それはとても残念なことだ。

フェルスタッペンはチャンピオンシップにふさわしいか? もちろん、彼はふさわしい。ハミルトンの303周に対し、彼は652周をリードした。22戦中15戦でチャンピオンシップをリードし、最後の7戦もリードしていた。レースではハミルトンの8勝に対し、彼は10勝を挙げ(そう、それはすぐに説明するとして)、表彰台は18回対17回だった。もちろん、最後の数マイルまではそれほど幸運に恵まれていたわけではない。

同じように、ハミルトンも8回目のタイトルにふさわしかっただろう。正直に言うと、ふたりで分け合ってほしかった。37歳を目前にした288回目のグランプリで、またしても猛烈なスタートを切り、彼のスピード、一貫性、決意、スタイル、品格、そして特にレース終盤スタミナは素晴らしかった。

アブダビでの最後の数周は、世界中のものすごい数の目が釘付けになったが、我々にとって最高の瞬間ではなかったし、この冬はいくつかのことを変えなければならない。F1は、日曜日、間違いなくファンを混乱させてしまった。

F1チームによってさらに難しくなるマイケル・マシのつらい仕事

マイケル・マシは、レースディレクターである。2019年F1シーズンの文字通り前夜、メルボルンのホテルの部屋で亡くなった親愛なる友人チャーリー・ホワイティングの後を継いだのだ。マイケル・マシはオーストラリアのV8シリーズで監督を務めた経験がある。眠気を催すような仕事ではなかったと思うが、数十億ドル規模の世界的なスポーツであるF1のスポットライトとプレッシャーとは比べものにならないだろう。

もし、マイケル・マシがこの仕事を続けたいと思い、F1やFIAが彼を引き留めたいと思うなら、状況は変わらざるを得ない。チャーリー・ホワイティングは、98ページに及ぶ現行の競技規約と、80ページに及ぶ二ヶ国語の競技コードの大部分を作成した。このほかにも、長年にわたってさまざまなワーキンググループで作成された合意事項や野心的な内容がある。

誰かに言い訳をする必要はないが、いくつかの事実を説明したい。F1とFIAは、世界的なパンデミックの中、急遽組まれたいくつかのイベントや会場を含め、17ヶ月で39のレースを開催した。メキシコシティからドーハまでの13時間45分のフライトを終えると、マイケル・マシはすぐに別の飛行機に乗り込み、ジェッダへと向かい、かろうじて間に合いそうな新施設を視察した。チャーリー・ホワイティングと同じように、彼も新会場を承認する責任がある。ただし、今は、遠く離れた場所でのレースがかなり増えている。

チャーリー・ホワイティングは、当然ながら尊敬されると同時に恐れられていた。チームが少しでも駆け引きをする気配があれば、すぐにバーニー・エクレストンとマックス・モズレーが割って入ってきて、問題が起きる。さらに、ホワイティングのそばには、誰よりも多くのF1レースに参加してきた究極のウイングマン、ハービー・ブラッシュがいた。ふたりは毎晩のように一緒に食事をし、信頼と絆を深めていった。1シーズンが15~18戦だった頃、ハービー・ブラッシュは、ホワイティングがスターター台から帰ってくるまでの1、2周の間、事実上レースディレクターを務めていた。

ジャン・トッドは12年間FIA会長を務め、特に交通安全に多大な貢献をした後、間もなく引退する。FIA会長は包括的な役職である。しかし、新しい会長とそのサポートチームを待っている間、FIAは舵取り役がいないため、マックス・モズレーと「スポーツの評判を落とす」条項に大きな恐怖を抱いて生きてきたチームから恐れられていないのは確かだろう。

今年まではピットウォールからレースコントロールへのやり取りは一切放送されなかった。チーム代表やチームマネジャーが状況を先読みしてロビー活動までしているのはまったくもって許せない。彼らは自分の仕事をしているだけだが、以前ならチャーリー・ホワイティングから軽くあしらわれていただろう。

アブダビでは、アントニオ・ジョビナッツィがアルファロメオをクラッシュさせたとき、トト・ヴォルフがセーフティカーを出動させないよう理不尽にマイケル・マシに要請したことも、その7日前にクリスチャン・ホーナーが、サウジアラビアのリスタートのグリッドが「スークの駆け引き」のように感じられ、F1がいかにチャーリー・ホワイティングを恋しがっているかを(大人げなく)世界に伝えたことも、以前ならありえない話だろう。

彼らは非常に負けず嫌いで、あらゆるツールを使ってプレッシャーをかけてくる人々なので、権力基盤やコミュニケーションの方向性がまったく変わってしまった。これらのツールは、もっと規制される必要がある。

そして、F1史上最高の瞬間となるはずのこのレースでは、ニコラス・ラティフィが前のコーナーでの小競り合いでコースアウトしたあと、高速化したターン14でウィリアムズはウォールにぶつかり、怒りと混乱が巻き起こった。

ハミルトンはタイトルに片手を伸ばしていた

それまでに、ルイス・ハミルトンはミディアム・コンパウンドのタイヤを非常に効果的に使い、スタート(レッドブルの課題)からリードを奪ったあとは、比較的快調に走行していた。今回も、彼とフェルスタッペンは、素早く後続との差をつけ始めた。14周目にフェルスタッペンはピットインし、ソフトコンパウンドからハードに交換した。しかし、メルセデスは1周後にハミルトンをピットインさせ、レッドブルに対抗した。

これによって、両ドライバーはそれぞれ45周、44周をハードタイヤで走ることになったが、メルセデスの無線で、ハミルトンがタイヤが最後までもつかどうかわからないと述べたり、セーフティカーが出動した場合どちらのタイヤがよいか、などと彼が尋ねているのが聞こえた…

35周目、トト・ヴォルフの抗議にもかかわらず「バーチャル・セーフティカー」が導入されたとき、メルセデスはハミルトンをピットインさせず、トラック順位を維持することに必死だった。これはあまりにも慎重で、おそらくフェルスタッペンを抜かなければならないリスクを冒したくないという意識的なものだったのだろう。失うものが何もないフェルスタッペンの攻撃的なドライビング・スタイルが、メルセデスの心理と意思決定プロセスの中にあったのだろう。もし、フェルスタッペンが走り続けていたら、ハミルトンの優れたスピードと新しいタイヤがあれば、そして安全に追い抜くことができたとすれば、ハミルトンは必ずどこかでリードを奪い返したに違いない。

それでもハミルトンは、「バーチャル・セーフティカー」導入後に新しいハードタイヤに交換したフェルスタッペンの攻勢を十分にカバーしていたし、楽に勝てそうに見えた。

最初のタイヤで走行していたレッドブルのチェコ・ペレスに妨害され、ハミルトンは8秒を失ったにもかかわらず、快調に走っていた。セルジオ・ぺレスのそれは良いチームプレイであり、わたしは解説の早い段階でその可能性を指摘したし、わたしがレッドブルのピットウォールにいれば、間違いなく同じように指示を出したはずだが、F1に対して特に誇りを感じることではない。

58周のレースの53周目、ラティフィのクラッシュで本物のセーフティカーが出動するまで、レースを支配していたハミルトンは、タイトルに向けて片手を伸ばしていた。ウィリアムズのマシンを持ち上げる必要があるため、車両とマーシャルがコース上に配置された。

ドラマチックなフィナーレとF1の別の対処法

後知恵だが、赤旗を出すべきだった。そうすれば、全員がリセットできたし、トラックが清掃され、スタンディングスタート(静止スタート)から同じタイヤで、最後のチャンピオンシップ対決が行われただろう。しかしそうすれば、今後の赤旗が増える前例になっただろう。アゼルバイジャンでもそうだったが、ピットレーンにマシンが並んだままレース、さらにはチャンピオンシップが終了するようなことは望んでいない。

競技規約には、周回遅れのマシンを先に行かせることを含め、セーフティカーの手順が1,500語弱で定義されている。特に上位のマシンがピットインし始めると、誰が1周遅れなのかを判断するのは容易ではない。ここで、その定義を紹介する。

「これは、セーフティカーが出動後、最初のセーフティカーラインを2回目に通過した周回終了時に、ラインを通過した周回遅れのマシンにのみ適用される」

これで、はっきりしたが…

一方、レースディレクターは、安全を最優先にトラック上の事故を管理し、次の展開をコントロールしたい、あるいは自分たちが周回遅れを解消できるかどうかを知りたいというピットウォールからのロビー活動に対応し、レースに参戦中のマシンを集め、できるだけ早くリスタートしなければならない。

この規約は、大昔、周回遅れのマシンが首位争いの邪魔にならないようにするために導入された。

どんなグランプリでもセイフティカー先導のフィニッシュなど見たくないものだが、最終周回にセーフティカーがピットレーンに入り、そのままチェッカーフラッグを受けるという手順がある。これなら、ライトを点滅させた乗用車がレースに勝っているように見えることなく、正しいイメージを生み出す。

マイケル・マシは当然、トラック上にクラッシュしたマシンと回収車両、そして人がいなくなるまで、周回遅れのマシンを解放したくなかった。最後の2点は、モータースポーツの世界では永遠にデリケートなテーマであることは間違いない。もちろん、セーフティカーは事故、トラック上の破片、大雨のいずれかを意味しており、周回遅れのマシンの周回遅れを解消させても安全だと判断されるかどうかは任意だが、規約には「どの周回遅れのマシン」とあり、「すべての周回遅れのマシン」ではない。

弁護士の出番となり、5台のマシンにのみフラッグが出されて周回遅れを解消し、フェルスタッペンは、最終周回でハミルトンの後ろ、あるいは真横に並んだ。メルセデスは、最終周回はセーフティカー先導中にするべきだったと、永遠に思い続けるだろう。

チャンスをつかむフェルスタッペン、メルセデスの怒り、そしてF1が板挟みになった理由

フェルスタッペンは、新しいターン5のヘアピンでブレーキを遅らせ、見事に首位に立った。そして、ストレートでは蛇行しながら摩耗したハード・コンパウンドタイヤにもかかわらず追撃してくるハミルトンを防いだ。

フェルスタッペンは、本来なら蛇行をスチュワードから警告を受けるところだが、最終周回ということもあり、インサイドラインを維持してターン9へと続く長いストレートを走った。トラックレイアウトを考えると、そこからフィニッシュラインまでオーバーテイクは不可能だった。

つまり、この1,500の言葉をハイブリッドに解釈し、失うものが何もないレッドブルは再びピットインし、新しいソフトコンパウンドのタイヤを履いたフェルスタッペンが、ハミルトンに代わってワールドチャンピオンになるというシナリオが生まれたのだ。

わたしは、そのような判断や行動に悪意や意図があったという非難をここでするつもりはない。なぜなら、その点に関して、何の証拠も期待も持っていないし、いずれにせよ、みなさんもそう思っているのだから。セーフティカー先導中でレースを終えた場合のレッドブルが同じように、メルセデスとハミルトンのチームが憤りを感じるのは理解できる。板挟み状態について話をしよう。

わたしは何年も前から、周回遅れのドライバーは、セーフティカー手順を延長しないよう、リードラップの走者より後ろに下がるべきだと言ってきた。また、レースディレクターには、特に来年のマイアミの新会場を含む23レースの長丁場では、信頼と経験のあるサポート役が必要だ。そして、シーズン中、レースコントロールに異議を申し立てる回数を制限し、指摘するべき公正で適切な点があった場合に、より戦略的に使用できるようにすべきだ。今回のようにレフェリーがいじめられるようなことがあってはならない。

今シーズンもお付き合いいただき、またF1を応援していただき感謝したい。全体的に楽しんでいただけたと思う。ご家族やご友人と素敵な冬休みをお過ごしください。そして、劇的に変化した2022年マシンが来シーズンどんな活躍を見せてくれるのか、大いに期待しよう。

-Source: Sky Sports



2021年F1アブダビGP コラムとチーム分析