ルイス・ハミルトンとブラジル国旗:2021年F1サンパウロGP表彰式

スカイF1のマーティン・ブランドルは、ルイス・ハミルトンが巻き返して重要な勝利を勝ち取った、非常にドラマチックなサンパウロGP週末を振り返る。ブランドルは、ペナルティ、タイトル争い、マックス・フェルスタッペンの新しい車載カメラ映像について、自身の意見を述べている。

2021年ブラジルGPは、知らず知らずのうちに、過激なF1の「蛇と梯子」ゲームに巻き込まれたルイス・ハミルトンがすべてだった。

イベント前の情報では、メルセデスはハミルトンに新しい内燃エンジンを導入し、残る4戦で2基のエンジンを使えるようになると言われていた。そしてその通りになり、ブラジルでグリッド5番降格ペナルティを受けることになった。

シーズンの締めくくりは、事実上新しい3つのサーキットになる。サウジアラビアとアブダビは、高いトップスピードが予想されており、メルセデスは今シーズン、走行距離によるパワー劣化に苦しんでいることを考えると、筋は通る。インテルラゴスのターン1までの長い坂と、ターン4まで下り坂、何十年にもわたってF1で最もオーバーテイクしやすい組み合わせのひとつとされてきた。

標高の高いサーキット(インテルラゴスの標高はほぼ800m)でのホンダのパワーアドバンテージは、今シーズン、メルセデスのターボチャージャー変更により、ある程度失われた。しかし、新しいエンジンと、メルセデスが見つけたドラッグ低減と最高速度の増加の秘密があったので、ハミルトンはほぼ無敵の存在になった。何があったとしても。

ルイス・ハミルトン(メルセデス)2021年F1サンパウロGP

ハミルトンの先制攻撃 - しかし予選のドラマが続く

2021年、3回目で最後となる「スプリント」レースがあるため、金曜午前の最初のフリー走行では、ドライバーは全員予選の準備をしなければならなかった。シルバーストンやモンツァと同様、ドライで比較的途切れることもなかった。フリー走行で大雨が降り、直接予選を迎えるような日が来れば、チームにとってはチャレンジになるだろう。

今回、最初はレッドブルが非常に落ち着いて速そうに見えた。ハミルトンは丁寧に、しかし、しっかりとチームにマシンのフロントの上下動を落ち着かせるように求め、全体的に改善していった。終盤になると彼はすぐにペースセッターになり、その後、状況はあまり変わらなかった。

ハミルトンは、スプリントで楽々と1位になったが、リアウィングの計測値が規定外だったために、予選失格となった。このウイングは、証拠保全のために控訴期間が終了するまで押収されたままとなったので、なぜ、どのようにしてテンプレートの測定値を超えたのかを正確に知るのは難しかった。

F1では、技術規約にグレーゾーンやごまかしがあってはならない。そうでなければ基準や問題を脅かすことになる。アストンマーティンは、ハンガリーGPで、燃料サンプルがわずかに足りず、結果から除外されるという辛い経験をした。この違反行為がトラック上のパフォーマンスに影響を与えなかったという言い訳は、規約の下では全く通用しない。

レッドブルは、メルセデスがリア・ウィングで何かをしていると信じているが、メルセデスは憤然として全否定している。FIAは押収したハミルトンのメルセデス・ウィングを高度に検査したに違いない。まだ勝敗は決まっておらず、チャンピオンシップは最後までもつれている。そして2チームと競い合うふたりのドライバーの間では、コース内外でけんか腰や怒りも見られる。FIAは、その中で時おりパンチを受け止める審判なのだ。



ハミルトンのリア・ウィング、FIAの3倍の荷重でもメルセデスのテストに合格した

ハミルトン、リチャルドをオーバーテイク:2021年F1サンパウロGPスプリント

スプリントでの追い上げは、その後の展開の兆し

ルイス・ハミルトンは、最後尾の20番からスプリントをスタートすることになった。フォーメーション・ラップを低速でこなし、適度に温まったタイヤでグリッドに並んだ。そして最初のコーナーまでに4台を抜いた。わずか24周で、トップ10圏内に入ることができるだろうか?

彼は見事な走りで5位になった。3位のカルロス・サインツのフェラーリ、4位のセルジオ・ペレスのレッドブルも視界に入っていた。スピードとレース技術の堂々たる走りだった。

しかし、先頭ではヴァルテリ・ボタスが再びスプリントで優勝し、メイン・レースをポール・ポジションからスタートすることになった。ソフトタイヤを装着した彼は、最初のコーナーでフェルスタッペンを抜き、そのタイヤでスプリントの残りをかろうじて走りきった。

メルセデスは、シーズン半ばに彼を解雇し、冬になると再雇用するべきだろう。彼は2022年ジョージ・ラッセルにシートを明け渡すことになって以来、おおむね非常に印象的な走りをしている。

マックス・フェルスタッペンは、スプリントで2位になり、チャンピオンシップの差を2ポイント広げた。しかし、ハミルトンが、エンジン交換ペナルティによって、5番降格し、メイン・レースは10番グリッドからスタートするとはいえ、レース日についてはすべてがやや不吉に見えた。




2021年F1サンパウロGPスタート

緊張が高まる中、混沌としたレーススタート

当時のパドックでは「71周のレースのために3倍の燃料を搭載し、路面温度もかなり高くなり、高速トラフィックの中でスタートするのだから、日曜日はハミルトンにとって楽勝とはならないだろう」という話で持ちきりだった。そして、それはすべて無意味であることがわかった。

グリッドの上で、メルセデスのチーム代表トト・ヴォルフは、パルクフェルメのルールに基づいて(メルセデス2台を含む)グリッド全体で多くの変更が行われた中で、レッドブルがフェルスタッペンのリアウイング・エレメントを変更していたことに、見るからに怒っていた。ではなぜ、メルセデスは予選中に、ハミルトンのリアウイングに問題が生じて失格の原因となったことに対処することが許されなかったのか、と彼は考えた。もっともな疑問である。その答えは、交換された部品は、FIAの検査と管理の下で変更が認められ、合法性のチェックに合格したからだった。

さらに彼は「1週間前のメキシコ予選で、レッドブルのリアウィングに接着剤やテープを使って致命的な問題に対応していたはずなのに、レースでは外してしまったのはどういうことだろう?」と疑問に思った。反論するのは難しい。

こういったことはハミルトンのモチベーションをさらに高めた。彼はすぐに順位を6位まで上げ、チームメイトのボタスを抜くことを許され、3位となり、前を走っているのはレッドブルの2台だけとなった。レッドブルの2台は、レース・スタート後のターン4までにボタスを抜いていた。ゲーム開始。

車列の後ろでは、ランド・ノリスが、出足の遅かった元チームメイトであるサインツを抜こうとして、フェラーリのフロント・ホイールと絡み、すぐにパンクして最下位まで落ちたが、しかし彼は追い上げて、10位となり1ポイントを獲得した。

角田裕毅は、ランス・ストロールに対してかなり乱暴なアタックをしかけ、セナのS字で多くの破片をまき散らし、セーフティカーが出動した。これはハミルトンに有利に働き、彼はペレスのギアボックスのすぐ後ろについた。

レッドブルは明らかにこの事態を想定していたようで、ハミルトンのすでに速いマシンに対してスリップストリームを与えないように、ほぼフィニッシュラインまでリスタートを待っていた。

その後、ミック・シューマッハのハースがキミ・ライコネンのアルファロメオと接触してまたカーボンの破片が飛び散り、ヴァーチャル・セーフティーカー(VSC)モードになったときに、ボタスはピットインするという、とてもラッキーなタイミングだった。飛ぶように速いハミルトンに置いていかれたが、ボタスの前で3位をキープしていたペレスを、VSCのおかげで、ボタスは楽々とオーバーカットで追い抜いた。

フェルスタッペンとハミルトン、48周目ターン4の攻防:2021年F1サンパウロGP

ハミルトン対フェルスタッペンが注目の的に - さらなる論争とともに

序盤は、フェルスタッペンは、曲がりくねった中間セクターを通過するたびにハミルトンから3分の1秒を奪い、ピットストレートでのメルセデスのミサイルから距離をおくことができるようだった。しかし、ハミルトンは容赦がなく、48周目にはフェルスタッペンは蛇行して防御せざるを得なくなり、ハミルトンを外側ではあるがレーシングラインに置いてターン4に入った。フェルスタッペンは、ふたりともブレーキを遅らせ、自身はトラックのダーティな部分からブレーキをかけたので、ふたりとも膨らんだと言うだろう。またフェルスタッペンは、ハミルトンがランオフエリアに入ったことに気づくと、自分も同じようにマシンをまっすぐにして加速したと言うだろう。

車載カメラの映像を見ると、フェルスタッペンのブレーキングは非常に遅くゆっくりしており、ターンインのポイントによって制限されていた。しかしハミルトンに向かってステアリングを開かなかったことが確認できる。完全に限界に達しており、スチュワードの判断はどちらに転んでもおかしくなかった。少なくとも、ドライビング基準に関する警告である黒白旗を出すべきだった。

メルセデスはスチュワードに再検討を要求するかもしれないが、そのような要求で裁定が変わることはほとんどない。いずれにしても、レッドブルは終盤でクルーズしていたので、5秒加算ペナルティを受けてボタスよりも下位になるのは不当であり、フェルスタッペンはもっと速く走れただろうと言うだろう。そしてメルセデスも、ヴァルテリも同じだったと言うだろう。

ハミルトンは、このインシデントと、その後スチュワードの審議なしという無線通信に対して、非常に落ち着いていた。この時、彼はフェルスタッペンを追い越そうと決意を新たにしたのではないだろうか。

その追い越しは、71周のレースの59周目だった。ピットストレートを走行中、フェルスタッペンは速いハミルトンを防ぐため、ターン1に低い角度で入ったため、ターン1/2/3のコンビネーションでリズムが崩れた。ハミルトンは高い角度で入って完璧なラインを取り、ターン4でDRSを使ってフェルスタッペンを抜いた。信頼性に問題がなければ、この優勝は彼のものだった。この日のレッドブルは、ハミルトンのメルセデスの前ではほとんど答えを出せず、彼の後ろになったときも答えを出せなかった。


フェルスタッペンの48周目ターン4の車載カメラ映像が公開される:F1サンパウロGP

メルセデス、ブラジルでのフェルスタッペンの行為の見直しを要請

ハミルトン、マーシャルからブラジル国旗を渡される:2021年F1サンパウロGP

ハミルトンの優勝で、スーパータイトル対決が実現

ハミルトンはスローダウンラップの際、シートベルトを外してブラジル国旗を受け取り、彼のヒーローである英雄アイルトン・セナに敬意を表したが、その際に罰金を科せられた。これはルール違反であり、FIAは昇格してくるジュニアドライバーに対する前例を作ってほしくないとしているが、もっともなことだ。

バレンティーノ・ロッシがモーターサイクルレースに別れを告げた週末に、F1が水を差すのは居心地が悪いが、F1マシンでピットに向かうときに時速80マイル(129km)以上で走るのは簡単なので、シートベルトを締めることが義務づけられている。



ブラジルの観客は、自国のドライバーがグリッド上にいない(とにかくマシンを走らせていない)こともあり、ハミルトンのセナへの賞賛とインスピレーションを知っているだけに、ハミルトンのことを本当によく理解していた。最初は、彼がユニオンジャックを巻いていないことに違和感を覚えたが、彼は象徴的な瞬間を再現していたし、アイルトンも非常に感銘を受けたであろう走りをした。

次戦はカタールのトラックだ。ここは、どのF1ドライバーよりもバレンティーノ・ロッシがよく知っているだろうし、我々のF1マシンよりも彼のバイクのほうが合っているかもしれない。チェコ・ペレスが最終周回でハミルトンから最速ラップタイムを奪って1ポイントを稼いだことで、フェルスタッペンのチャンピオンシップのリードは14ポイントとなり、チャンピオンシップは少なくともサウジアラビアまで続くことになる。

この物語はまだまだ続く。好調のメルセデスは、最後の大勝負に向けて新しい内燃エンジンを検討する価値があるだろう。ハミルトンが他の19台のマシンをすべて追い越し、そのうちの16台を2回以上追い越したことを考えれば、グリッドが5番降格しても、それだけの価値があるかもしれない。

-Source: Sky Sports



F1技術解説:ハミルトンのサンパウロでの大活躍は、すべてメルセデスの新エンジンのおかげなのか?
2021年F1サンパウロGP コラムとチーム分析