レッドブルはいかにして攻撃的な作戦を成功させ、オースティンで優勝したのか、そしてメルセデスのFP1のペースはどこへ行ってしまったのか?:F1レース詳細解説

2週間前のイスタンブールではメルセデスがレッドブルを圧倒したように、サーキット・オブ・ジ・アメリカズではレッドブルがメルセデスを上回った。マックス・フェルスタッペンは、タイトル争いのライバルであるルイス・ハミルトンにポール・ポジションのアドバンテージを奪われた後も、レッドブルのピットウォールからの作戦上の支援を受けて、レッドブルの優れたペースとタイヤの使い方を活用した。マーク・ヒューズが解説する。

1回目のピットストップを大胆にも早目に行ったことで、フェルスタッペンはハミルトンのメルセデスよりも有利なトラック順位を獲得し、終盤の数周でハミルトンがレッドブルの後ろについたにもかかわらず、その順位を明け渡すことはなかった。

この日のトラックの独特の要求が、2台のマシンの競争力を逆転させたことは明らかだ。ではレース日、オースティンのトラックがこれほどレッドブルに合ってた理由は何だったのだろう?

2台のうちどちらがより広いセットアップ範囲を持っているかは、トラックごとに異なる。さまざまなパラメーターの相対的な重要性は一定ではない。オースティンでは、特にリアタイヤへの配慮が重要だった。



メルセデスのトラックサイドエンジニアリング・チーフ、アンドリュー・ショヴリンは、「ここではレッドブルのリアエンドの方が強かったと思う」と述べた。

「オーバーヒートしてあのように跳ね回っているときは、リアのグリップが頼りだ。彼らのマシンはその点で非常にうまく機能していたように見える」

今回のレースでは、メルセデスはレッドブルよりもリアタイヤの熱劣化に苦しんだ。これはQ3におけるソフトタイヤでの予選アタックと、ミディアムタイヤでのレースを見れば明らかだ。予選では、ハミルトンは最初と最後のセクターのベストタイムを両立することができなかった。最初のセクターでタイヤを使い切ってしまうと、最終セクターでオーバーヒートするのだ。

レッドブルのセクター間のタイヤ使用は、メルセデスよりもバランスが取れているようで、これがフェルスタッペンのポール・ポジションに重要な役割を果たした。



アンドリュー・ショヴリンは、タイヤの特性がレース日の作戦に大きな影響を与えたと説明する。

「現実的に、レース優勝の選択肢はおそらく、好スタートを切ったルイスが早目、たとえば8周目にピットストップして首位を維持することだったのだろう。しかし、ミディアムでの短いスティントで苦労していたことを考えると、首位を維持するためにそんなことをする勇気はなかった。レース全体が危うくなるような気がしていたのだ」

レッドブルは攻撃的な作戦を採用し、フェルスタッペンをライバルよりもかなり早くピットインさせた:2021年F1アメリカGP
レッドブルは攻撃的な作戦を採用し、フェルスタッペンをライバルよりもかなり早くピットインさせた。

レッドブルの高いリアグリップは、イスタンブールでは非常に高いグリップの路面でシャシーのバランスを崩してしまったが、今回は大きな恩恵を与えた。同じ特徴だが、対照的なふたつの効果がある。

金曜日のフリー走行では、2台のマシンは互角に見えたが、フェルスタッペンはレッドブルのバランスにあまり満足していなかった。レッドブルが土曜日に向けてバランスを改善しようとしたため、メルセデスは金曜日のセッティングから変更せざるを得なくなった。サーキットの激しい凹凸により、マシンのボディパーツのいくつかが損傷したため、より適合性を高める必要があった。その結果、金曜日から土曜日にかけて、レッドブルは改善され、メルセデスはパフォーマンスが低下したように見えた。

アンドリュー・ショヴリンは「(金曜日の)我々の調子はよさそうだった」と語る。

「正直なところ、FP1では非常に好調だと思った。しかし、その時点でパワーユニットをかなり回していたので、我々は実際よりもよく見えた。そしてマックスがアタックをまとめることができなかった。だが、彼は渋滞など多くの問題に見舞われていた」

「しかし、FP2では、自分たちのペースをより明確に把握することができたし、セットアップの判断を誤ったわけではなかった。でも、暑くなったり、風が強くなったりして、さらに苦しくなった。(土曜日については)セットアップと凹凸によるマシンのダメージという点で、より大きな問題に身構えていたのかもしれない」





フェルスタッペンはタイヤを完璧に管理し、オースティンでの初優勝を果たした:2021年F1アメリカGP
フェルスタッペンはタイヤを完璧に管理し、オースティンでの初優勝を果たした。

この週末は、イスタンブールで撮影されたメルセデスの広範囲のフロア失速の映像が話題になった。アメリカのトラックのレイアウトは、イスタンブールよりもこのアドバンテージの見返りが少なかった。失速が起きる速度は、フルダウンフォースが必要とされる最速コーナーよりもかなり高い速度でなければならない。



高速のS字セクションと、ターン16/17/18のループがあるため、イスタンブールよりも2つの要求の間の「余裕」が少ないのだ。メルセデスは、ストレートの終わりでレッドブルよりも速かったが、イスタンブールのときのような差はなかった。

どちらかのマシンが決定的に速いというわけではなさそうだ。だからこそ、残り5戦の展望がよりいっそうエキサイティングになる。

-Source: The Official Formula 1 Website

2021年F1アメリカGP コラムとチーム分析