ボタスの優勝、今シーズンがこれほど素晴らしい理由、トルコGPでの戦略的判断について:ロス・ブラウンのコラム

興味をそそるレースが繰り広げられたトルコGPでは、ヴァルテリ・ボタスが1年以上ぶりにレースで優勝し、マックス・フェルスタッペンがルイス・ハミルトンからチャンピオンシップのリードを奪い返した。F1のモータースポーツ担当マネージング・ディレクターのロス・ブラウンが、イスタンブール・パークでの重要な話題を取り上げる。

トルコは今回もドラマを提供

2021年のF1シーズンは、楽しみが続く贈り物のようなものだ。我々は、誰が勝つかわからない状態でレースに臨んでいる。トルコもそうだったが、魅力的で興味をそそるレースだった。

派手なアクションは多くはなかったが、終盤、1セットのタイヤで走り続けるのか、それともピットインするのかというジレンマに陥り、展開と進化が感じられた。このジレンマはいくつかのチームを苦しめた。

すべてを勝つことはできない

今回もまた、チームは非常に難しい戦略的決断を迫られた。このような状況では、自分の判断、経験、感覚を信じるしかない。ルイスの場合もそうだったが、ピットインすることに対して、最初はマシンの中からかなり抵抗があった。状況が明確ではなく、ドライバーからの反発があると、チームは正しいと感じた判断を簡単に撤回してしまうことがある。

日曜日、湿ったコンディションの中で、インターミディエイトタイヤはスリックに似てきた:2021年F1トルコGP
日曜日、湿ったコンディションの中で、インターミディエイトタイヤはスリックに似てきた。

ドライバーはバブルの中にいる。彼らは情報を提供する必要があるが、ピットウォールに送られているすべてのデータを見ることはできない。ルイスの場合、もしもピットインせずにタイヤがダメになったり、小雨が降ったりすれば、順位を落とし、最悪の事態になっていただろう。

わたしのドライバー・オブ・ザ・デイはヴァルテリ・ボタス

カルロス・サインツJr.が後方から見事な巻き返しをしてポイントを獲得するなど、いくつかよい走りがあったが、わたしのドライバー・オブ・ザ・デイはヴァルテリ・ボタスだ。非常に難しいコンディションのなかで、彼はひとつもミスを犯さなかった。メルセデスは非常に優れたマシンを用意していたが、ボタスはそれを最大限に活用し、後続マシンからの脅威を決して許さなかった。

彼はチームを去るメンバーである、このような状況下では気落ちしがちだが、彼は持ちこたえて、見事な仕事をしたと思う。マックスがウエット・コンディションを得意とすることは周知の事実だが、彼はヴァルテリに追いつくことができなかった。来年、アルファロメオが彼にマシンを与えれば、彼はそれに応えて最大限の力を発揮するとことを証明した。

ボタスはひとつもミスを犯さず、昨シーズンのソチ以来の優勝を果たした:2021年F1トルコGP
ボタスはひとつもミスを犯さず、昨シーズンのソチ以来の優勝を果たした。

セルジオ・ペレス、レッドブルに貢献

チェコは、難しいレースが続いていたが、着実なパフォーマンスをした。今回もミスをしがちなレースだったが、今年レッドブルに移籍してから期待されていた通りのスピードとパフォーマンスを見せてくれた。

彼はルイスに対して自分の順位をフェアに守ったが(下の動画を参照)、これはレースで最もエキサイティングな場面のひとつだった。彼は毎週末、このようにする必要がある。おそらく、そうすることで彼を後押しし、今後はもっと安定してあのレベルのパフォーマンスが見られるようになるだろう。

どちらに転ぶかわからないチャンピオンシップ

シーズン中はあらゆるポイントが重要であることは周知の事実だが、この時期になるとひとつひとつのポイントに集中するようになる。本来ならば1年中そうすべきなのだが、最後の数戦になると、失敗すると取り戻す時間がないことがわかっているので、すべてが非常に激しくなる。

両チャンピオンシップは、シーズン終盤に向けて、久しぶりにエキサイティングな1年の締めくくりを提供してくれるだろう。F1は恵まれている。


ハミルトンとペレスのホイール・トゥ・ホイール
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なぜ、このような素晴らしいシーズンになっているのだろうか? わたしがチームを運営していたとき、特効薬はなかった。すべてのことを少しずつ改善していくしかなかった。それは、F1でも同じだと思う。予算制限や規約変更が、チャンピオンシップの接戦や激しさによい影響を与えていることは間違いない。

チームが大量のリソースをチャンピオンシップに投入したからといって、優勝できるわけではない。現在、リソースは制限されており、各チームは、多くの時間とリソースを必要とする来年のマシンにも注力している。

そして、これが接戦のチャンピオンシップに貢献している。我々は今でも実力主義を望んでいる。やはり最高のチームに勝ってもらいたい。しかし、他の誰よりも大きな予算を持っているからといって、圧倒的な差をつけて勝つことは望んでいない。このような形の展開は喜ばしい。

今年のチャンピオンシップは、どのチームも逃げ切ることができず、歴史に残る戦いになっている:2021年F1
今年のチャンピオンシップは、どのチームも逃げ切ることができず、歴史に残る戦いになっている。

先週末、今このような黄金期を迎えているのに、2022年の規約変更が必要なのかという意見を耳にした。これは、今年のチャンピオンシップがスリリングである一方で、マシンがお互いに接近して走ってオーバーテイクの機会を作るのに苦労しているという事実を理解していないのだろう。

2022年の規約が一晩で状況を変えることはないが、トラック上のレースを向上させるためのプラットフォームとしては、より優れていると思う。新規約が落ち着けば、将来的にはホイール・トゥ・ホイールのアクションがさらに増えて、素晴らしいレースやチャンピオンシップが見られると確信している。

ウォーターブラストの効果

トルコGPのプロモーターが2年連続でレースを開催し、素晴らしい仕事をしてくれたことに感謝する。

昨年は急遽、サーキットの再舗装が行われ、それが素晴らしいレースのきっかけとなったものの、賛否両論があった。今年は、主催者がウォーターブラストでトラックの細孔をきれいにしてくれたので、チームとドライバーにとって非常に良い路面になった。

大勢の熱狂的なファンの前で、非常に楽しいレースが展開され、最高潮に達した素晴らしいイベントだった。ブラボー。

-Source: The Official Formula 1 Website

2021年F1トルコGP コラムとチーム分析