2021年F1オランダGP:ロス・ブラウンのコラム

F1がオランダに戻り、ザントフォールトという素晴らしいサーキットでオランダGPが開催されたが、他に類を見ないイベントになった。F1のモータースポーツ担当マネージング・ディレクターのロス・ブラウンが、ユニークで面白かった週末の話題を取り上げる…

ザントフォールトでのセンセーショナルなイベント

素晴らしいグランプリ週末となったことを受け、プロモーターには賛辞を贈るべきだろう。会場は満員で、とても素晴らしい雰囲気を生み出していた。オランダGPは民間から資金を調達したイベントだが、最近のF1レースの大半が政府のサポートを受けていることを考えると、野心的なプロジェクトである。新たに民間から資金を調達したイベントがこのようなスペクタクルをもたらしたことは非常に印象的である。

プロモーターは素晴らしい仕事をした。彼らと一緒に仕事をするのは楽しかったし、見事なトラックを作ってくれた。ドライバーも本当に楽しんでいたし、それを聞くのも嬉しかった。来年戻ってくるのがとても楽しみだ。

ザントフォールトの3日間のイベントでは、観客の声援が印象的だった:2021年F1オランダGP
ザントフォールトの3日間のイベントでは、観客の声援が印象的だった。


バンクしたコーナーが素晴らしいスペクタクルを提供

4、5年前、非常に初期の頃にこの会場を見たとき、トラックの性質はチャレンジングだった。バンクの導入を検討してはどうか最初に提案したのは、元F1レース・ディレクターのチャーリー・ホワイティングだった。

F1参戦チームとともに、我々はその選択肢を調査し、急勾配のセクションを導入すれば、強力な特徴になり、DRSを使用するストレートを使えばターン1に向けてオーバーテイクの機会が増えると判断した。それでも厳しいが、間違いなくよくなるはずだった。

我々は設計に取り組み、複数のコーナーでバンクを増やした。これにより、ドライバーが好む特徴が追加され、ファンや観客にとっても素晴らしいものになったので、我々としては非常に満足している。サーキットを設計した "Dromo" は立派な仕事をしてくれた。プロモーターが自信と信念をもって仕事をしたことは素晴らしかった。

サーキットの出来には非常に満足しているので、ここ数年間で進化したサーキット設計の理念と文化を、自信をもって継続することができる。

バンクは高低差と相まって、ザントフォールトのエキサイティングなスペクタクルをもたらした:2021年F1オランダGP
バンクは高低差と相まって、ザントフォールトのエキサイティングなスペクタクルをもたらした。


日曜日に何度か目にしたように、オーバーテイクするにはタイトなトラックである。来年は最終コーナーのバンク前にあるDRS活性化ゾーンを延長できること、そしてマシンが新しくなることで、追い抜きの機会がやや増えると期待している。そうは言っても、多くのレーシングが展開されたので、素晴らしいレースだったと思う。首位争いを演じたルイス・ハミルトンとマックス・フェルスタッペンの攻防は激しかった。

メルセデスは3回目のピットストップを試すことができた

マックスはレースをコントロールしているように見えたが、ルイスが彼に追いつくのではないかと思える時があった。残り20周のあたりで、メルセデスが3度目のピットストップを行い、ソフトタイヤに交換するかもしれないと思った。そうなっていれば、レースが本当に盛り上がっただろう。そうなれば誰が首位に立ったのかわからないが、ソフトで20周走れば、古いハードを履いているマックスよりかなり速かったはずである。

トラック上での追い抜きが難しかったことを考えると、メルセデスがそれを試さなかったことに驚いている。彼らには失うものはなかった。その時点で、マックスとルイスの差は2秒未満だったので、レッドブルにとっては対応するのが難しかったはずだ。ルイスはソフトタイヤでのアウトラップで、マックスに追いついたかもしれない。

メルセデスの2台が表彰台に立ち、チームはコンストラクターズ・チャンピオンシップでレッドブルとの差を広げ、トップを維持した:2021年F1オランダGP
メルセデスの2台が表彰台に立ち、チームはコンストラクターズ・チャンピオンシップでレッドブルとの差を広げ、トップを維持した。


強烈なプレッシャーの下で結果を出すフェルスタッペン

ワールドタイトル争いというプレッシャーにさらされていても、マックスはかなりリラックスしている。我々は、まだ若くて学習中の彼を最初から見てきた。ミスは犯すが、学んでいた。今の彼は完成されたドライバーだ。

彼は非の打ち所がないレース週末を過ごしたし、人によっては非常に気が散る環境のなかで、何ひとつ間違ったことをしなかった。ザントフォールトであのようなサポートを受け、緊張感と自分への注目があれば、気が散ってしまうものだが、彼はそれに見事に対応した。素晴らしいパフォーマンスだったし、チャンピオンシップ首位に返り咲いたのも当然だった。

マックス・フェルスタッペン、母国GPでのウィニングラン、大声援に手を振る:2021年F1オランダGP
フェルスタッペン、母国GPでのウィニングラン、大声援に手を振る。


私のドライバー・オブ・ザ・デイはフェルナンド・アロンソ

今回は、ドライバー・オブ・ザ・デイについて、ファンの意見には反対しなくてはならない。私が選んだのはセルジオ・ぺレスではなくフェルナンドだった。セルジオはレースの早い段階で、ブレーキミスから非常に大きなフラットスポットをつくり、ピットに戻り最下位になった。彼はまた大きなミスを犯したのだ。グランプリは、週末を通じて、ミスをできるだけ少なくすること、あるいはミスを犯さないことが重要だ。Q1はチームがミスを犯したと指摘する人がいるかもしれないが、あのようなマシンでQ2に進出できないようでは、通用しない。彼は現時点で、すべてをまとめることができない。フェルナンドはそれができている。

アロンソ、最終周回でサインツをオーバーテイク:2021年オランダGP
アロンソ、最終周回でサインツをオーバーテイク。


日曜日のフェルナンドはしたたかだった。エステバン・オコンが無線で、自分はフェルナンドよりも速いと言ったとき、フェルナンドはレースのその段階ではタイヤを管理していた。私の意見では、彼は完璧なレースをした。最後カルロスを抜いたのは見事だった。

私はガスリー・ファンクラブの一員

ピエール・ガスリーはF1内でファンを増やしつつあるが、私もそのひとりだ。彼にとって、ワークスチームのレッドブルから降格させられたあと、苦境から立ち直り、レース初優勝を果たし、ワークスチームほどよくないマシンで一貫して強いパフォーマンスを見せているのは素晴らしいことだ。熱心に取り組み続けていることが、彼の本当の功績だ。

将来、彼には何かが起きるだろう。レッドブル・ワークスチームに復帰する機会が訪れなければ、そのファミリーに留まることはできないだろう。ファミリーに留まるのは、彼にはもったいないと思う。いつかチャンスが巡ってくると思う。彼は素晴らしい仕事をしている。

ピエール・ガスリーは力強い走りを続け、パドックを感心させ続ける:2021年F1オランダGP
ガスリーは力強い走りを続け、パドックを感心させ続ける。


同じチームでマックスに対抗できるドライバーはいないようだ。これは複合的な効果だ。ミハエル・シューマッハと彼のチームメイトについてもそうだった。同じチーム内のふたりのドライバーの差は小さいかもしれないが、本当に並外れたドライバーとの差を縮めることができないフラストレーションのため、なぜかその差が大きくなってしまうのだ。

あまりに頑張りすぎてしまったり、過剰反応をしてしまったりすると、自分を追い込むことになる。ピエールとアレックス・アルボンがそうだったし、今はセルジオがそうなっている。マックスはまさに並外れた存在であり、同じチームのドライバーとして、それを受け入れるのは難しい。

キミ・ライコネンと別れを惜しむ

アイスマンがとうとう夕陽の中に去っていく。これまでも一度か二度、そうなるかもしれないと思ったが、19シーズンを過ごした後、輝かしいF1キャリアに終止符を打つことに決めた。

キミ・ライコネンはCOVID-19検査で陽性のためレースに参戦できなかった。ロバート・クビサが代役を務めた:2021年F1オランダGP
ライコネンはCOVID-19検査で陽性のためレースに参戦できなかった。ロバート・クビサが代役を務めた。


キミはワールドチャンピオンであり、それは当然のタイトルである。彼は素晴らしいドライバーであり、唯一無二の存在として語り継がれるだろう。彼のようなドライバーは見たことがなかったし、これからも見ることはないと思う。彼は個性的だったので、ファンが非常に多かった。言葉数は少なくとも行動は一貫して強い男だった。彼がいなくなるのは寂しい。

キミがカムバックしたいと望むなら、いつでもグランプリで歓迎されるだろう。しかし、彼の姿を二度と見ることはないような気がする! 彼は、自身の生活はF1を中心に回っているわけではないと言っていた。彼がF1に参戦してくれたことは本当に嬉しかったし、今後の活躍を祈っている。

-Source: The Official Formula 1 Website