ウェットの路面で始まったハンガリーGPは、信号が消えた瞬間からドラマが始まった。F1マネージング・ディレクター、モータースポーツ担当のロス・ブラウンが重要な話題を議論する...
スリル満点のレース展開だったハンガリー
最初のコーナーで多重衝突があり、興味をそそるバトルがなくなったと苛立ちがあった。また、ひどくすべりやすいトラックで、ドライバーは週末初めてインターミディエイト・タイヤを使うことになった。
ヴァルテリ・ボタスとランス・ストロールのために公正を期せば、目の前でインシデントがあったのでアクションを取らざるを得なかったが、対応が間に合わなかっただけだと思う。大きな判断ミスがあったとは思わない。
おかげで、我々が楽しみにしていたもの、つまりメルセデス対レッドブルのバトルが失われた。レッドブルにとって、「1台半のマシン」がレースから消えたのは、かなり苛立たしいことだったろう。
ターン1の多重クラッシュ
YouTube <動画1分10秒>
2021年F1ハンガリーGP:ドラマチックなレーススタートでボタスが複数台のマシンを巻き込んでクラッシュ。
赤旗後、リスタートをしたのがルイス・ハミルトンだけという異例の状況になった。これまでこんなものは見たことがなかった。しかしそのおかげで魅力的なレースになり、あらゆるところで素晴らしいアクションが起きた。
ルイスは、後方からスタートしても、いつも脅威になるように見えた。このトラックではオーバーテイクが非常に難しいし、今のマシンは追いかけるのが難しい。しかし我々はこれらの問題に、来年の新規約で対応している。
私のドライバー・オブ・ザ・デイもフェルナンド・アロンソ
ハンガロリンクでは素晴らしいパフォーマンスがたくさんあった。ミック・シューマッハは、見事に気迫のこもった、しかしフェアなドライビングを披露した。特に、パフォーマンスが大幅に低下したマシンに乗るマックス・フェルスタッペンに対する防御は印象的だった。
アロンソは、ビンテージ・ドライブでチームメイトの優勝に貢献した。
そして、フェルナンドとルイスのバトルロワイヤルがあった。フェルナンドがドライバー・オブ・ザ・デイを受賞したことを喜んでいる。私も彼に一票を投じたいと思う。素晴らしいパフォーマンスだった。アルピーヌのドライバーのどちらかがこの賞を手にする予定だったが、あのバトルのおかげで、エステバンからフェルナンドに変わったのだろう。
フェルナンドがF1に参戦すると、信じられないほどタフなバトルを見せてくれるが、彼が常にフェアであることはわかっている。ルイスはある段階で、フェルナンドの防御にやや文句を言っていたが、それが問題になったとは思わない。フェルナンドはタフでフェアで、いつも十分なスペースを残している。これはまさにしなければならないことだ。見事なバトルだったし、シーズン後半がどうなるかを垣間見せてくれた。
チャンスを両手でつかんだオコン
エステバン・オコンは並外れたパフォーマンスをした。チームメイトのフェルナンドが新しいベンチマークになったので、オコンは厳しいシーズンを過ごしてきた。今回のレースはオコンにとって大きな意味を持つだろう。70周にもわたってプレッシャーをかけられたが、ミスをひとつも犯さず走りきった。セバスチャンはずっとオコンを悩ませた。
エステバン・オコン、初優勝の瞬間
YouTube <動画42秒>
オコンとアロンソ、二人で喜ぶシーンも
先頭に立てたのは幸運だったが、いったん先頭に立つと、彼はチャンスを掴んだ。また、チームメイトにも勝った。これらすべての要素が彼の自信につながるだろう。彼は今、レースに勝つチャンスがあれば、自分にはその能力があると知っている。彼はこれまでにもジュニアカテゴリーで優勝したことがあるが、F1は一段階上である。彼は最高の舞台で結果を出した。
決してあきらめないハミルトン
ドライバー・オブ・ザ・デイのもうひとりの候補者はルイスだった。ルイスの場合、彼の達成したことは見過ごされやすい。彼は、オーバーテイクできないトラックで、最下位から表彰台に立った。日曜日の彼はとても印象的だった。
彼は、最初のコーナーでのトラブルを避けることができ、自分だけがグリッドに並んだというリスタートの問題にも動じなかった。彼はそのことについて無線で驚くほど静かに話していた。彼がもっと文句を言うのを聞きたかった!
ハミルトンは、最下位から表彰台まで追い上げ、何度もオーバーテイクを見せた。
ハンガリーでは、先頭に戻るために毎周戦っていたので、彼が疲弊したのはよくわかる。ここは気を緩めることができない、小休止のできないサーキットだ。彼の回復を祈っている。
レッドブルは苦しむだろう
わたしは、レッドブルが今いるような状況、つまり信頼性やアクシデントのせいでチャンピオンシップ順位に大きな差がついてしまうという状況に陥ったことがある。フェラーリでも何度かそういうことがあったのを覚えている。
完走しないと、ポイントが大きく変わるので、本当に痛手となる。確かにマックスは完走したが、ポイント圏内にギリギリだった。一方、チェコのレースは1周目で終わってしまった。
レースで誰が一番競争力があったのかわらかない。接戦になったように見えた。おそらくメルセデスの方がわずかに優勢だっただろう。チャンピオンシップではこのような浮き沈みはあるものだ。夏休みのあともこのような状況が続けば、素晴らしいシーズン後半になるだろう。
フェルスタッペンはダメージを受けたマシンで完走したが、セルジオ・ペレスは最初のコーナーでリタイヤした。レッドブルにとってよい1日ではなかった。
力強い走りをしたベッテルの苛立ち
彼の今の態度、パフォーマンス、アプローチを見ると、かつてのセバスチャンが戻ってきたと感じずにはいられない。だからこそ、サンプル採取に十分な燃料が残っていなかったために失格となったことは、彼にとってもチームにとっても残念だ。
ポイントを失うことは悔しいものだが、彼は最近のパフォーマンスから元気づけられるだろう。彼がアストンマーティンに移籍したとき、わたしは疑っていたと告白しなくてはならない。というのも、彼がフェラーリでのキャリアを終えたとき、誰もが失望したからだ。しかし、彼は元気を取り戻した。
彼は優勝まであと少しだった。彼があのようなパフォーマンスを見せてくれたのは素晴らしかった。彼はミスを犯さず、エステバンを激しく攻めた。ピットストップでの小さな問題が、エステバンを追い越せなかった、あるいは少なくともエステバンがピットを出たときにもっと接戦ができなかった要因かもしれない。フェルナンドのように、セバスチャンも生まれ変わった。彼は次戦ではよりよい最終結果を期待しているだろう。
セバスチャン・ベッテルはトラック上で優勝まであと少しだったが、最終的にレース失格となった。
ダブル・ポイントを獲得したウィリアムズ
今シーズンのウィリアムズは、何度もポイントに近づいていた。やるべきことはまだたくさんあるが、正しい方向に向かって進んでいると感じている。しばらくの間、彼らは方向性を失っていて、自分たちが今の状態から抜け出せるという楽観的な見方はしていなかったと思う。
しかし今では、ウィリアムズがよりよいパフォーマンスを見せ、尊敬を集めるようになると、誰もが楽観視している。今回は純粋なペースによるものではなかったが、最下位に近いときは、チャンスがあればそれを掴まなくてはならない。
この結果、彼らはコンストラクターズ・チャンピオンシップ8位となり、アルファロメオとハースよりも上位に立った。これは、賞金を含め多くの理由から重要である。ニコラスとジョージは非常によい走りをした。チェッカー・フラッグを受けたときに感情があふれ出したことは理解できる。
ニコラス・ラティフィが初ポイント、ジョージ・ラッセルもポイントを獲得し、ハンガリーはウィリアムズにとってのターニングポイントとなった。
F1は成し遂げたことを誇りに思うべき
COVID-19の問題は、誰も予想していなかったほど長く続いている。我々が生きている間に世界が経験したことのないことであり、どのように展開していくのかわかっていなかった。
ある意味では、今年は昨シーズンと同じくらい、あるいはそれ以上に厳しい年になった。レースにファンが戻ってくるのは素晴らしいことだ。熱狂と騒音があることで、イベントに素晴らしい変化がもたらされる。しかし、ブーイングが聞こえてきたのにはがっかりした。我々のスポーツにはふさわしくない。
今シーズンの最初の6ヶ月は非常に厳しかったが、F1に関わるすべての人が、イベントを成功させるための規律、プロトコル、考え方を持っていた。F1、FIA、チーム、プロモーターの皆さんには、世界中で安全なイベントを開催するためにご尽力いただいていることに感謝している。
-Source: The Official Formula 1 Website