マックス・フェルスタッペン、ルイス・ハミルトンと接触して障壁にクラッシュ:2021年F1イギリスGP

スカイ・スポーツF1のマーティン・ブランドルが、F1タイトル争いをしているふたりのドライバーがシルバーストーンで激突し、大きな話題となった事件の真相を掘り下げる。それまでの経緯、裏話、インシデントそのもの、非難、そしてブランドル自身の意見とこの事件の意味を語る。

5つの赤信号が消えて2021年イギリスGPがスタートした直後、マックス・フェルスタッペンは、自分が狩られる側であり、ルイス・ハミルトンは狩る側であることに気づいた。

フェルスタッペンは、ポール・ポジションから比較的お粗末なスタートを切った。そして、17周のスプリントで逆のポジションからスタートした前日の鏡像のように、グリッド2位のハミルトンが完璧なスタートをした。

メルセデスはダウンフォースと、それに伴うドラッグがレッドブルよりも少なく、予選の最高速度のトラップでは時速6マイル(9.6km)も速かった。ハミルトンは、20台中一番速く、フェルスタッペンは一番遅かった... このような基本的なセットアップの決定は、予選が始まるとパルクフェルメ規約によって完全に固定される。

フェルスタッペンは、巧みにターン1のアウトサイドを通り、首位を維持した。ハミルトンは彼にスペースを与えたが、一瞬タイヤのサイドウォールが接触したように見えた。まるですぐ先の未来を垣間見たかのようだった。

マックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトン、スタート時から激しくトップを争う:2021年F1イギリスGP

ターン3に向けて、フェルスタッペンは防衛せざるを得ず、「ザ・ループ」と呼ばれる次のタイトな左コーナーで首位を奪われた。ハミルトンはフェルスタッペンの後ろを通って、コーナーをうまく抜けた。一方、高速スタートを切ったシャルル・ルクレールは賢明にも前方を見守っていたので、ハミルトンは自由に走ることができた。シャルルの我慢強さはすぐに報われることになる。

エイントリーの急な左カーブを抜け、ウェリントン・ストレートに向かうとき、ハミルトンは必然的に、よりよいラインを取った。そしてスリップストリームは非常に強力だった。フェルスタッペンはすぐに左に寄ってスリップストリームを断ち、高速で近づいてくるブルックランズの左コーナーで、ハミルトンに遠回りをさせようとした。

ハミルトンはそれを受け入れ、ストレートを走りながら互いにホイールを接触させる高速の危険な遊びをしたあと、フェルスタッペンよりもわずかに前に出た。しかしフェルスタッペンはインサイド・ラインをとっていたので、ハミルトンよりも一瞬だけブレーキを遅らせる判断ができたので、主導権を取り戻した。

マックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトン、スタート時から激しくトップを争う:2021年F1イギリスGP

ハミルトンはフェルスタッペンにスペースを与えたが、これはいずれにしろ、次の段階の反撃のために好都合だった。フェルスタッペンは、内側の縁石にのったが、なんとかコーナーを曲がって、レーシング・ラインを取り戻し、順位を守るために戦うことになった。

ハミルトンは再び、右回りの長いルフィールドで逆のラインをとり、コーナーをU字型ではなくV字型に回ったので、早目にアクセルを踏むことができた。緩やかなウッドコート・コーナーでは、メルセデスのスピードとスリップストリームが強力で、ふたりはターン9「コプス」に向かった。

2021年F1イギリスGP

スプリント・レースから、フェルスタッペンは、ターン10から14までのベケッツ複合コーナーで、先頭に立たなければならないことを、我々全員が知っていた。この複合コーナーでは、彼の追加のダウンフォースのおかげで、自分が残していく乱れた気流の中でダウンフォースの少ないマシンでもがくハミルトンを引き離すことができるからだ。しかし、彼はそこまで行かなかった。

同様に、ハミルトンも、レースの主導権を握る唯一の方法は、ベケッツで首位に立ち、ハンガー・ストレートを力強く走り抜けることだと知っていた。

コプスに向かって、フェルスタッペンは、つまり古いピットウォールの近くでかなり激しく右に動き、最初左にフェイントをかけたハミルトンをくぎづけにした。おそらくフェルスタッペンは、トラックのダーティ・サイドから急角度で時速180マイル(290km)のコーナーに近づいているハミルトンが譲ってくれると考えたのだろう。

前日のスプリントで、ハミルトンは同じような状況にあったが、その時はアウトサイドだったので譲らざるを得ず、優勝を逃した。彼はすでに、同じミスをしないと決心していたのだった。

またハミルトンは、今年のイモラやバルセロナ、そして前日と、フェルスタッペンの攻撃性に、あまりに何度も屈してきたと判断したのだと思う。彼はチャンピオンシップでの点差が33ポイントになったので、王座を狙う恐れを知らないオランダ人ドライバーに抵抗する必要があった。

ハミルトンは一瞬ほぼ横並びになったが、スロットルを緩めた。フェルスタッペンはこのコーナーは自分に優先権があると感じながらターンインしたがハミルトンと接触し、フェルスタッペンはスピンしながら高速で障壁に向かって行き、51Gの衝撃を受けて停止した。ありがたいことにマシンがひっくり返ることもなかったし、ホイールがマーシャルや観客席に向かって飛んでいくこともなかった。


フェルスタッペンとハミルトンと接触
2021年F1GP 113

フェルスタッペン、グラベルを疾走して障壁にクラッシュ
2021年F1GP 111

2021年F1GP 110

リプレイ映像
2021年F1GP 124

2021年F1GP 125

2021年F1GP 125.5

2021年F1GP 126

2021年F1GP 127


マシン側面から障壁に当たると、ものすごく痛い。足首と膝がぶつかり合い、骨盤、肋骨、肩、首に横方向の大きな負荷がかかる。頭はヘッドレストにたたきつけられるが、ありがたいことに今ではクラッシュ・ヘルメットの技術と設計が優れている。

レッドブルは、これはハミルトンによるペナルティを覚悟で行う反則、つまり意図的な事故だと感じた。彼らは烈火のごとく怒っていた。将来的なワールドチャンピオンシップが打撃を受け、新しいコスト制限の時代に高価なマシンが破壊され、エンジンと付属品のダメージによるグリッド降格ペナルティの可能性が生じたのだ。

クリスチャン・ホーナー(レッドブルF1チーム代表)
クリスチャン・ホーナー(レッドブルF1チーム代表)

このレースで無得点になり、両チャンピオンシップのリードも大きく削られるだろう。レッドブルによると、ハミルトンはコプスへの進入が、他の時よりも顕著に速かったことを証明するデータがあるそうだ。つまり、彼は膨らむことなくコーナーを曲がることはできず、必然的にフェルスタッペンと接触してしまうのだ。

おそらく、そのデータは公開されるだろう。レッドブルが「新たな証拠」があると感じているのなら、ハミルトンに関する過失の程度や寛大さについてFIAに控訴するかもしれない。

わたしは何十年もハミルトンを見てきたが、彼は基本的にダーティなドライバーでないことは明らかである。もちろん、最近ではレッドブルのアレックス・アルボンと、左フロント対右リアの小競り合いを何度か経験した。

フェルスタッペンは超攻撃的で、我々はそんな彼が大好きだ。しかしハミルトンは、その攻撃性に対抗すると決めたのだ。今回のインシデントは時間の問題だった。

残念ながら、世界最速コーナーのひとつ、コプス・コーナーでそれが起きた。何十年間も、ここでは多くの重要なオーバーテイクが行われており、いつも大胆さと技術と多少のリスクが必要とされた。しかし、スパのオー・ルージュや鈴鹿の130Rのように最も恐ろしいコーナーと同様、オーバーテイクができないわけではない。ハミルトンは50周後、全く同じ場所でルクレールを抜いて首位に立ち、それを証明した。これはそういうレースだった。

メルセデス・ベンツは、走行違反に関する同意と、出所不明の簡単な文書に基づき、ハミルトンは十分横並びになっていたので、コーナーでの優先権があると感じた。

トト・ヴォルフ(メルセデスF1チーム代表)
トト・ヴォルフ(メルセデスF1チーム代表)

しかし、スチュワードは、この接触の「主な」責任はハミルトンにあると判断し、次のピットストップで消化する10秒ペナルティを科した。つまり、責任はおそらく70対30であり、100%ではないという意味である。

その主な理由は、彼が右側のアペックス(頂点)にもっと寄せることができたと感じたからだった。彼は接触後、トラックの中央にいるのが見えるが、彼のハンドルは高速でまっすぐになっていたはずである。

わたしは1977年以降、あらゆる種類のレーシングカーで、コプスを何千回も通ったが、ターンインするまで、コプスを見ることはできない。恐ろしい高速コーナーとはいえ、素晴らしいコーナーなのだ。

ハミルトンが意図的にやったのだとすれば、両ドライバーにとって非常に危険だっただろう。でもわたしには、ふたりの偉大なレーシング・ドライバーがワールドチャンピオンシップを賭けて激しく戦っているように見えた。

片側がつぶれたフェルスタッペンのマシン:2021年F1イギリスGP
片側がつぶれたフェルスタッペンのマシン

フェルスタッペンに落ち度はなかったが、ハミルトンがあのラインで妥協せざるを得ないことを考えれば、自分自身のレースとチャンピオンシップのために、もう少しスペースを残し、ハミルトンが譲ってくれるという確信を持たない方がよかっただろう。

でもこれは冷静な後知恵だ。チャンピオンシップを33ポイント・リードし、最速マシンを持っているフェルスタッペンは、鈍いスタートのあと、あまりに多くのリスクを冒したのかもしれない。しかし、だからこそ彼はチャンピオンシップ優勝候補なのだ。

スチュワードが利用できるレース中のペナルティは4つのレベルがある。次のピットストップでの5秒追加(ピットストップがなければレース・タイムに追加)、10秒追加、ドライブスルー(この日であれば19秒追加)、そして、10秒ストップ&ゴーを行うと、シルバーストンではチームのピットエリアに入って出るのに約32秒かかる。

フェルスタッペンの無事が確認されたあとでも、わたしの心は重かった。というのも、このふたりのドライバーが52周を戦い抜くのを見るのを楽しみにしていたからだ。セナとプロストの時代のように、ドラマチックでパワフルな、素晴らしいチャンピオンシップが繰り広げられている。

レッドブルとメルセデスのチーム・マネージャーやチーム代表は、レース・ディレクターに働きかけて、この状況に影響を与えようと奮闘しているのを聞くのは、やや気まずかった。しかし、コミュニケーション・システムが用意されているようで、今シーズン初めて放送されている。レース・ディレクターのマイケル・マシは、当然のことながらスチュワードと話すように伝えたが、このプロセスは将来的に見直されることになるだろう。

このような状況のなか、シャルル・ルクレールはレースの大半で見事に先頭を走っていたが、残り数周になって、10秒ペナルティを挽回したハミルトンに抜かれてしまった。

エンジン遮断トラブルがあったにもかかわらず、ルクレールは素晴らしい走りをした。そしてフェラーリがタイヤ問題を克服し、まずまずのレース・ペースを見せたのはよかった。

ルイス・ハミルトンとシャルル・ルクレール:2021年F1イギリスGP
ルイス・ハミルトンとシャルル・ルクレール

新しいスプリント方式(フォーマット)は大いに期待が持てると思ったし、土曜朝にトラックに出て、大勢の熱狂的なファンを見ると「今日は、予選アタックのために互いに近づかないようにしているマシンではなく、レースを見せてあげられる」と思わずにはいられかなった。

17周のスプリントでは上位でもいくつか重要な場面があり、ドライバーはグリッド順位をひとつかふたつ上げるために、リスクを冒さないのではないかという懸念は、意外にも間違っていた。

もちろん、これは市街地サーキットはうまくいかない。これがレースではないふりはやめなくてはならない。これはレースだからだ。また、混乱を避けるため、金曜日でも土曜日でも、ポール・ポジションを決めるセッションを「予選」と呼ぶべきである。

ファンの姿と歓声が戻り、シルバーストンが今回もスリリングな高速アクションをもたらしながら、とても壮大に見えたことは素晴らしかった。観客は、この先何年も議論されるであろうレースで、ハミルトンが99回目のF1優勝、そして8回目のイギリスGP優勝を果たすのを見た。

このレース週末について言いたいことはまだたくさんあるが、1000語の割り当てに対し、1680語も使ってしまった…

-Source: Sky Sports
ハミルトンとフェルスタッペンのイギリスGP衝突の関連記事