ルイス・ハミルトン、マックス・フェルスタッペン:2021年F1スペインGP

メルセデスはどのようにしてバルセロナでレッドブルの形勢を逆転させたのか、そしてこれはルイス・ハミルトン対マックス・フェルスタッペンのチャンピオンシップ争いにおいて何を意味するのか? スカイ・スポーツF1のマーティン・ブランドルがスペインGPの大きな話題を評価する…

バルセロナで開催されたF1レース、2021年のイベントはかなりアクションと陰謀に満ちていた。今シーズンは4戦連続で、ルイス・ハミルトンとマックス・フェルスタッペンが完全な戦闘モードで優勝争いを演じた。

スタートのターン1で、ハミルトンの前に出てフェルスタッペンがトップに立つ:2021年F1スペインGP
スタートのターン1で、ハミルトンの前に出てフェルスタッペンがトップに立つ:2021年F1スペインGP
スタートのターン1で、ハミルトンの前に出てフェルスタッペンがトップに立つ:2021年F1スペインGP
スタートのターン1でフェルスタッペンがトップに

今回もフェルスタッペンは、スタート直後の最初のブレーキング・ゾーンに向けて厳しいラインをとったが、ハミルトンはその経験と成熟のおかげでハンドルを戻し、チャンピオンを狙う若いオランダ人に十分なスペースを与え、66周の残りについて考えた。ハミルトンは、何かを証明するためにフェルスタッペンとクラッシュする必要はなかった。

フェルスタッペンとレッドブルが、このチェスゲームで「キング」を演じていたのなら、メルセデスとハミルトンは、ゲーム(レース)がスタートする前から、重要な駒をふたつ持ち、ライバルを「チェック(王手)」していた。

もう1台のレッドブルに乗るセルジオ・ペレスは、不器用なスピンのせいで、チームメイトよりも1秒遅く、予選は惨めにも8番だった。そのため、先頭は今回もメルセデス2台とレッドブル1台だった。

各ドライバーがレースで使用できるタイヤ:2021年F1スペインGP
各ドライバーがレースで使用できるタイヤ:2021年F1スペインGP

さらに、トップ10のドライバーは全員、レース日にタイヤセット6つを持っているが、真新しいセットもあれば、フリー走行や予選で使用したセットもある。10人のドライバーは、新しいハード・コンパウンドの1セットが使えたが、あまりに遅いと見なされていた。また全員が新しいミディアム・タイヤの1セットを持っており、こちらは長いレースに向いてた。

メルセデスだけがさらに中古のミディアム・コンパウンドのセットを持っており、これがレース終盤の「チェックメイト*」の時に利用された。<* チェスで相手が完全に詰み状態の時にする勝利宣言のような意味>

フェルスタッペンは、グリッドの不利な右側から、わずかによいスタートを切った。右側はレーシング・ラインではなかったが、サポート・レースのスタートで大量のゴムが付着していたのだ。ハミルトンは、最初のコーナーまで左側を走り続け、ミラーを見てもフェルスタッペンの前を安全に横切れるかどうか100%確信はなかっただろう。しかしいずれにしろ、彼は後続のチームメイトのヴァルテリ・ボタスがスリップストリームを使ってレッドブルのドライバーを抜くことを祈っていた。

それは成功せず、フェルスタッペンが首位を奪い、ハミルトンは先に述べたように減速した。これがボタスを妨害し、常に印象的なフェラーリのシャルル・ルクレールがターン3のアウトサイドからボタスを抜いた。

レッドブルは、メルセデスよりもタイヤのスイッチを入れるのがうまく、フェルスタッペンは1周目の終わりに、ハミルトンに対して1.5秒差をつけた。しかしメルセデスは、レッドブルよりもタイヤをよい状態に長く維持することができた。

角田裕毅、ターン10でストップ、リタイヤ:2021年F1スペインGP
角田裕毅、8周目のターン10でストップ、リタイヤ、セーフティカー出動

先頭のふたりのペースは強く、ルクレールがボタスを抑えていたため、すぐにレースは一騎打ちになった。だが、アルファタウリの角田裕毅がターン10でパワーを失い、セーフティカーが出動し、車列が短くなった。フェルスタッペンはタイヤを攻撃的に使って後続を引き離していたが、ある程度無駄になってしまった。

レース前は1ストップ作戦と言われていたが、高速コーナーが多いトラックなので、通常は少なくとも2ストップが必要となるため、これは奇妙だった。しかし、車列がコンパクトで、誰もピットストップのあとで渋滞の中に合流したくなかった。

セーフティカーのおかげでマシンがまた一塊(ひとかたまり)になり、さらに複雑になった。この日1ストップ作戦をなんとか成功させたのはアルピーヌのエステバン・オコンだけであり、彼は9位に終わった。

フェルスタッペンとハミルトン:2021年F1スペインGP
38周目のフェルスタッペンとハミルトン

ルイス・ハミルトンは、長い時間かなり接近した状態でフェルスタッペンの後ろを走っていたので、レッドブルとマックス・フェルスタッペンの走りについて多くを学んだと述べている。そして解説でわたしが指摘したように、ハミルトンはフェルスタッペンの後ろで、時おりタイトで異なるラインをとっていた。

メルセデスは23周目にボタスをピットインさせると、ルクレールに対するアンダーカットが成功した。そしてフェルスタッペンは24周目、彼自身の土壇場の判断でピットインしたが、左リア・ホイールが完全に準備できていなかったため、4秒という普段の2倍の時間がかかった。ハミルトンは28周目まで走り続けてピットインした。これでトップ3は全員新しいミディアム・コンパウンド・タイヤを装着し、フェルスタッペンが先頭を走っていた。

ハミルトンは、この段階でフェルスタッペンに簡単に追いつき、首位にチャレンジするかに見えたとき、メルセデスは自ら言うように「思いきった手」を打ち、14周走っただけで42周目にハミルトンをピットインさせ、もう1セットのミディアム・タイヤに交換した。

レッドブルが反応するには遅すぎたため、これが「チェックメイト」になった。フェルスタッペンのエンジニアは無線で「ブダペスト2019」と言った。そのレース(2019年ハンガリーGP)では、ハミルトンがかなりよい状態のタイヤに交換してフェルスタッペンを抜き去ったのだが、今回もハミルトンは同じようにして勝利を収め、スペインGPで5連勝を果たした。

レッドブルはこの展開を予期していたのだろう、フェルスタッペンをまずピットインさせ、野心的にも新しいミディアム・タイヤが最後までもつ可能性に賭け、どうにかして首位を維持することを願っていた。ちょうどバーレーンで劣化したタイヤを使って首位を維持したハミルトンのように。

ペレスが優勝争いから外れ、下位を走っていたため、メルセデスは賭けに出て、ハミルトンがフェルスタッペンに対する23秒差を縮め、チームメイトのヴァルテリ・ボタスを抜くのもそれほど苦労しないだろうと判断した。ボタスはあまり協力的ではなかったが、ハミルトンのペースが良かったこともあり、最後はフェルスタッペンに大差をつけて優勝した。

レッドブルは、首位というトラック順位をあきらめるリスクを冒せないと感じた。メルセデスはいずれにしろ2位と3位なので、失うものはなかった。フェルスタッペンは最終的に60周目にソフト・タイヤに交換し、最速ラップタイムを記録して、慰めの1ポイントを追加した。

ルイス・ハミルトン、優勝:2021年F1スペインGP

2021年、4戦終わって94ポイントと3勝を挙げたハミルトンは、これまでで最高のチャンピオンシップ・シーズンのスタートを切っており、これはライバルにとっては悪い前兆である。彼は絶好調で、レッドブルはフェルスタッペンのためにさらなるパワーとグリップの向上、そしてペレスが優勝争いに加わることを緊急に必要としている。現時点では、ペレスがハミルトンからポイントを奪うよりも、ボタスがフェルスタッペンからポイントを奪う可能性の方が高いように見える。そしてこれが重要になるかもしれない。

レッドブルは、フェルスタッペンの好みに合わせてマシンを高度に調整されているように見える。というのも、ピエール・ガスリー、アレックス・アルボン、そして今やペレスが比較的苦しんでいるからだ。ぺレスは前任者たちより賢くて経験豊富かもしれないが、潰れないで必要不可欠な役割を果たすために、今はあらゆる要素に頼る必要があるだろう。

また、ルクレールは見事に4位に、ダニエル・リチャルドはマクラーレン移籍後最高成績の6位になった。アルファタウリのガスリーは、スタート位置が前すぎて5秒ペナルティを科せられながらも10位となり1ポイントを獲得した。

今回のバルセロナでは、上位陣、そして実際にはグリッドの多くが接戦になり、これはシーズンの残りにとって良い兆候だ。次はモナコだが、もちろん全く違うチャレンジになる。

-Source: Sky Sports
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