ルイス・ハミルトンとマックス・フェルスタッペン:2021年F1ポルトガルGP

スカイスポーツF1の専門家マーティン・ブランドルが、またしても接戦となったメルセデス対レッドブルの直接対決となったポルティマンでの大きな話題を評価し、F1で進行中のトラックリミット論争を深く掘り下げ、規約が重要である理由を説明する。

F1が予想のつかない接戦となっており、最近の我々は甘やかされているようだ。見応えのあったポルティマンのレースのあとの全体的な感覚は、ちょっとした安定感だった。

しかし、月曜朝に振り返ってみると、優勝者は3位を走行しており、非常に速いマシンとドライバーという組み合わせの二人をオーバーテイクして優勝しなければならなかったし、上位から下位までホイール・トゥ・ホイールの素晴らしいアクションがあった。

それを喜んだシーズンはたくさんある。

今回も、F1タイヤに奇妙なほど反応しないタルマックと強風コンディションのため、まずまずのチャレンジと意外性をもたらした。この劇的な、南欧の田舎の、起伏があって見えない15のターンから得られる満足感に浸らなくてはならない。なぜなら、世界中が誘致しているF1レースに、パンデミックのあと復帰できるだけの予算をポルティマンが見つけられるかどうか、全く不明だからである。

マックス・フェルスタッペン、ルイス・ハミルトン、ヴァルテリ・ボタス:2021年F1ポルトガルGP表彰台

表彰台には、ルイス・ハミルトン、ヴァルテリ・ボタス、マックス・フェルスタッペンが立ったが、この表彰台の組み合わせは、新記録となる15回目だった。今回もハミルトンのスピード、レース勘、狡猾さが功を奏した。さらには正確性とコントロールも。

フェルスタッペンは優勝1回、2位2回と、これまでで最高のシーズンの始め方だが、彼は増え続けるメルセデスのペースをとても不安に感じるだろう。

レッドブルが、トラックリミットの矛盾を指摘し、今シーズンになってから優勝、ポール・ポジション、最速ラップによる追加の1ポイントを奪われたと主張しているが、わたしは同意しない。

2021年05月03日
F1ポルトガルGP決勝レース
レース後のトップ3インタビュー
フェルスタッペン、ポール・ディ・レスタにトラックリミット違反でボタスが最速になったことを聞かされ「え、ターン14はトラックリミットをとらないはすじゃないの… 」
マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)2021年F1ポルトガルGP

モータースポーツは、文書業務と主要な担当者により、印象的かつ包括的な方法で管理されている。この文書業務には、(二か国語の)80ぺージの国際競技規約と、F1専用の88ページの競技規約と、レース・ディレクターの補足イベントノートが含まれる。(技術面に関しては、これとは別に大量の文書と手続きがある。)

最初から、トラックリミットに関しては、ターン1、4、5、15について監視があることは明らかだった。その後、土曜日午前9時に、補足規約バージョン3が発表され、追加の文章で明るいピンク色の文字で、ターン14も包括的に言及された。

関連する基本的なトラックリミット規約は、必ずしも守られていないが、下記の通りである。



第27条3項 ドライバーは、常にトラックを使用するためにあらゆる合理的な努力をしなければならず、正当な理由なしにトラックを離れることはできない。

マシンのどの部分もトラックに接触しいない場合、ドライバーはトラックを離れたと判断される。そして誤解を避けるために、トラックの端を規定する白線はトラックの一部と見なされるが、縁石は見なされない。



「誤解を避けるために」というフレーズが鍵である。レース・ディレクターのマイケル・マシは、ドライバーからのロビー活動のあと、実際はかなりの余裕を与え、赤と白の縁石が重要なコーナーではトラックの一部になることを認めた。これは、おそらくレース中に忙しいスチュワードが審議する違反を少なくして、トラックの流れをややよくするためだろう。

しかし実際は、規約が適切に適用されておらず、競技の場を規定する白線を観察すれば、はるかに厳しくなる可能性もある。マシンが1kg軽ければ、あるいは幅が1mm長ければ、イベントから除外される。ではなぜ、ドライバーを楽にするためにトラックの取り締まりをずさんにするのだろうか?

以前のコラムでも述べたように、膨らんだラインをとれば、コーナーの角度が小さくなり、大きなスピードを維持して抜けることができるので、数メートル短縮することができる、これは、ミニ・タイミングループでモニタリングできるし、マシンの物理的位置も観察できる。しかしタイミングループでは、ドライバーが新しいタイヤを履いて、膨らまない限り、多くのことはわからない。

縁石は過去数十年間で基本的に低くなっており、ペンキの被膜の高さしかない場所もある。これは、1994年イモラでのルーベンス・バリチェロのように、マシンが宙を飛ぶのを防ぐためであり、二輪レースでの重傷事故を防ぐためである。

その後のレーサーの仕事は、どのアタックでも走行距離を最小限にし、どのコーナーでも角度を最大限にすることである。FIAの仕事は、それをやめさせることである。

2021年05月02日
F1ポルトガルGP予選
フェルスタッペン、トラックリミット違反でポールを逃す
フェルスタッペン、ターン4でトラックリミット違反でポールを逃す:2021年F1ポルトガルGP予選

サッカーであるチームがゴールやタッチラインを無視したら、クリケットで打者が自分に合わせてスタンプの位置を移動したら、陸上競技で誰かがウサイン・ボルトに勝とうとしてスターティング・ブロックを数メートル前に移動したら、皆さんは大声で笑うだろう。

ターン14でトラックリミットを超過してペナルティを受けたドライバーはひとりだけだった。そのせいでフェルスタッペンとレッドブルは1ポイントを失った。なぜなら、彼はそこでアドバンテージを得て、トラックの範囲内でマシンを完全にコントロールしなかったからである。

市街地サーキットのガードレールが最善のトラックリミット装置であることはわかっている。しかしその場合でも、モナコでは、ドライバーが近道できるシケイン・ゾーンがふたつある。そこには人工芝が設置されているが、剥がれることもある。ドライバーが自分でトラックをレイアウトするのを思いとどまらせるには、十分に広い溝にグラベル(砂利)を敷き詰めるべきだろう。

しかし、これはバイクやスポーツカー/GPカー/ツーリングカーに対しては必ずしも効果を発揮しないだろうし、非常に強硬な手段をとらないと、ドライバーにさらに大きな自由を与えることになる。

シャルル・ルクレール(フェラーリ)2021年F1ポルトガルGP

ル・マンのようなスポーツカー・レーシングでは、トラックリミットの観察は厳しく、ドライバーはそれに従ってマシンをコントロールする。わたしの友人のジョナサン・パーマーの会社が所有するベッドフォードにあるドライビングコースでは、膨らんでズルをすると、エンジンパワーが遮断される。これはF1の速度では危険になる可能性もあるが、例えば、違反すれば2、3周DRSの活性化(作動)を失うようにすればよい。もちろん、レース終了間近であれば、ドライバーは何の痛みも感じないだろう。

いずれにしろ、DRSリアウィングの活性化は、ドライバーが攻撃や防御で使うために、レース毎に合計時間を制限するべきだと思う。なぜなら、DRSの活性化ゾーンを120m減らしたにも関わらず、スリップストリームと向い風が組み合わさると、日曜日のピットストレートではあまりに強力すぎたからだ。

高速のターン1アウトサイドからの大胆なオーバーテイクが何度かあった。特に、ルイス・ハミルトンがふたりのライバルをそこで抜いて、97勝目を挙げた。もちろん当然の優勝だった。イモラでは、ボタスがジョージ・ラッセルとクラッシュしたおかげで2位になったのはラッキーだったとしたら、今回はふさわしい優勝だった。

ランド・ノリス(マクラーレン)5位:2021年F1ポルトガルGP

今回もマクラーレンのランド・ノリスは、ターン11でエステバン・オコンを見事に抜くなど素晴らしいレースをして5位になり、チャンピオンシップ3位を維持した。

アルピーヌは非常に力強い週末を過ごし、7位と8位はその見返りだった。オコンは予選で際立っており、フェルナンド・アロンソはレース後半で息を吹き返し、F1マシンのハンドルを握る能力を十分持っていることを証明した。

フェラーリは期待外れのレースをしたし、アストンマーティンはこの変わった会場でさらに期待外れだった。

今週末バルセロナで開催される次戦は、究極のハンドリング・サーキットである。ここでは、シーズンの残りのポテンシャルについて、もっと多くの情報が得られるだろう。

-Source: Sky Sports
F1ポルトガルGP
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